北海道から沖縄まで全国60か所にある薬物回復の施設『DARC(ダルク)』。かつて覚せい剤に手を出し、現在はダルクで暮らしている女性に話を聞いた。
高校卒業後、美術系の短大に通っていたCさん。アパレル関係の仕事に就きたかったが、家族から派手な職種に就くことを反対されたため、化粧品会社で働き始める。
「でも、そこでの人間関係や仕事の大変さからストレスが非常にたまって、精神的に苦しい状況に追い込まれてしまったんです。そこで休職して、前からやりたかった服飾関係のアルバイトをするようになりました」
気持ちも前向きになり、元気になってきたCさん。しかし、職場で知り合った人たちが薬物に手を染めていたため、24、25歳のときに覚せい剤を使い始めてしまったという。
「最初はすすめられて使っていたのですが、だんだん自分から覚せい剤を求めるようになっていきました。友達が買う場所までついて行くようになり、入手ルートを覚えて直接買うまでになりました」
売っている場所には覚せい剤を使っている人がたくさん集まっていたため、ほかにも買える場所をいろいろと知っていく。
「それからは覚せい剤にどっぷりと浸かってしまい、仕事は遅刻が増えて行けなくなり、結局は辞めてしまいました。でも覚せい剤からは抜けられず、お金はないけど欲しくなるので、買うたびに借金をするという繰り返しをしているうちに逮捕されました」
今まで3回、刑務所に入っているCさん。
「そこでは受刑者との交流があるので、いろいろな入手ルートを覚えました。だから、出所した後も教えてもらった場所に行って買い、また逮捕されるということを繰り返しました」
2回目に逮捕されて出所した後、利息で借金がすごいことになり、自己破産。
「3回目の逮捕をされて、今は仮釈放中で、昨年10月に今のダルクに入りました。入ってからは、とても穏やかに過ごしています。覚せい剤を使いたいという気持ちはまったく湧かず、順調に生活しています」
覚せい剤を使う、使わないは問題外だという。
「これから自分の人生をいかに生きるかというところを重点的に考えています。今年いっぱいは施設にいる予定なので、今後の人生をゆっくり立て直していきたいです」
2回目の逮捕後、もう3回目はないと決意。その後はずっと覚せい剤をやめられていたというが……。
「でも、ふとしたきっかけで使い、3回目に捕まったときに、これは病気なんだと自分の中で初めて気づいたんです。だから、覚せい剤依存の人は、施設との関係を切ってはいけないと思っています。このことを隠して社会生活を送るのは無理ですし、自分ひとりで抱えきれる問題ではありません」
一般社会で生きてきたけど、崩れてしまったのは、仲間がいなかったからだと振り返る。
「寂しかったんでしょうね。心を共有できる仲間がいることは本当に大切です。壁をぶち破るために、1度くらいなら使ってもいいだろう、いま抱えている問題も、違う角度から見られるかもしれないと思って覚せい剤に手を出しても、1度の使用では終わりません。
自分をコントロールできると思い込んでしまうのも、ひとりで問題を抱えているからなんです。仲間といると、自分だけで乗り越えるのは無理なんだということがわかってくると思います」