今、ツイッター上で老若男女の心に刺さると話題を呼んでいる“つぶやき”がある。
「ともかく自分の人生は自分のもの。自分のために生きるのが当然。そして自分の責任。人が何とかしてくれるものではない」
「若い時に考えない人、年取ればなお考えない」
発言の主は、まもなく82歳を迎えるミゾイキクコさん。高齢にもかかわらず、毎日ツイッターを更新し、これまでにつぶやいた数は驚きの17万ツイート。自身の経験から紡がれる深く重みのあるつぶやきは、6万人を超えるフォロワーを集め、ついには書籍化に至ったほどだ。
どうしてそんな名つぶやきが生まれるのか。その活力の源を探るべく、ミゾイさんを直撃した。
「鳩山由紀夫さんが開始したことを機に、私もツイッターを始めました。60歳を過ぎた鳩山さんにできるなら、75歳(当時)の私でもできるだろうって(笑)。初めは全く反応がありませんでした。ところが、戦時中の体験や敗戦後の生活、高齢者問題などをつぶやくようになってから、どんどんフォロワーさんが増えていきましてね」
ツイッターを通じてさまざまな人と交流をするうちに、特に若い人が“昔の日本”について、高い関心を持っていることに気がついたとミゾイさんは振り返る。
「《塩が統制品で貴重なものだった》《衣服を買うのに、切符の割り当てがあり、その点数の範囲で買った》など、私たちの世代では当たり前のことでも、若い人たちからすればそうじゃない。興味として伝わっていくさまは感慨深かったです。 そういった思い出以外も、私のつぶやきは理想じゃなくて、すべて実体験から感じたことですから。もちろん、中にはろくでもない揚げ足を取る人もいますが、そういうおバカさんは、交信するだけ時間の無駄なので“ブロック”します(笑)」
面倒くさい相手への作法も心得ているとは、さすがカリスマユーザー。ツイッターは若者のツールだと思われがちだが、ミゾイさんは「年齢を重ねた人こそつぶやいてほしい」と確言する。
「政治的な発言や思想性の強いメッセージとは違い、実体験に基づく私たちの経験には、若い人も真摯に耳を傾けてくれます。当時、どんな状況でどんなことがあったのか……昭和の激動の時代を知る世代は、ネット上の便利なツールを通じて、自分の経験を後世に残して有効活用してほしい。 特にツイッターは誰でも手軽にできるからこそ、自分の体験を発信する装置として重宝します。老後を漠然と過ごすより、よっぽど生活に張りも出てくると思いますよ」
<プロフィール>
みぞい・きくこ 1934年、埼玉県生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業後、高校教諭(生物)に。26歳のとき結婚を機に退職。2人の息子と小学生の孫2人がいる。2010年1月からツイッターを始め2016年4月現在でフォロワーは6万8000人にのぼる。ミゾイさんの珠玉のつぶやきをまとめた著書『何がいいかなんて終わってみないとわかりません。』(KADOKAWA刊)が好評発売中。