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 奨学金を返せない若者が増えている。日本学生支援機構の'14年度データによると、3か月以上の延滞者は17万3000人。総延滞額は2491億円にのぼる。

 与野党は7月の参院選を見据え、こぞって「給付型奨学金の創設」を言い始めた。返す必要のない奨学金のことだ。選挙権が18歳以上に引き下げられたことに伴い、経済的に苦しい若者の救済にようやく本腰を入れたようにもとれる。

 なぜ、奨学金を借りる学生がこんなに多いのか。奨学金問題全国会議の事務局長を務める岩重佳治弁護士は「昔とは学費が全く違う」として次のように話す。

「例えば国立大の初年度納入金は、1960年代は1万6000円でしたが、現在は80万円を超える。私立大はもっとお金がかかります。家計が苦しいのはわかっているので親には頼れず、奨学金を借りて進学する学生が爆発的に増えている。大学生の2人に1人が何らかの奨学金を利用しています」

 地方自治体や大学などが設ける奨学金の中には、返済の必要がない給付型もある。しかし、その門は狭く、8割以上の大学生が日本学生支援機構の奨学金を利用する。

 無利子型は成績と経済的理由にかかる条件が厳しく、有利子型を選ぶしかない学生は多い。

「奨学金問題はすなわち借金問題です。日本学生支援機構の奨学金の場合、通常の交渉では、例外的な場合でない限り延滞金を含めて返済額を負けることはありません。暴力的な取り立てこそないものの、延滞金が膨らめば、借金は雪だるま式に増えてしまいます」(岩重弁護士)

 日本学生支援機構の'15年3月のデータによると、4年制大学の学生への平均貸与額は無利子型で約235万円、有利子型で約340万円にのぼる。3人に1人が非正規雇用といわれる時代。数百万円の借金を背負って社会に出るのはきつい。

 なぜ利子や延滞金まで取るのか。同機構に聞いた。

「国から奨学金の原資として借り入れた財政融資資金を償還するための利息です。いわゆる“利ざや”は存在しません。また、延滞金は期限までに返還している人との公平性を確保するためです」(同機構)などと回答があった。

 前出の岩重弁護士は言う。

「返済しなければならない貸与型を『奨学金』と呼んでいるのは日本ぐらいです。高等教育への公財政支出は対GDP比でものすごく低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国で毎年最下位です。

 お金がないから大学に行けない、というのはおかしいと思いませんか。また、大学生になるときに将来の収入もわからず奨学金利用を申し込む仕組みのため、返せなくなったときの救済制度も必要です」

 政府が検討している給付型奨学金の規模や支給対象者は明確にされていない。各政党は、参院選で具体的内容について踏み込んだ説明をしてほしい。

 教育基本法では「教育の機会均等」を謳っている。経済的地位などで教育上差別されない、とある。この国の未来を担う若者たちにチャンスは平等にあるだろうか。