選挙戦に入ってから、憲法改正の話題を封印している安倍首相の本音を暴く。
「安倍首相は憲法改正の『け』の字も言わない。改憲隠しで選挙をやっております。しかし、テレビの党首討論では質問されるので答えざるをえない。私、安倍さんに問いただしました。民放2番組で“(戦争放棄の)9条に手をつけないとはっきり言えますか”と繰り返しました。
しかし、何度ただしても、手をつけないとは言わない。安倍さんの狙う憲法改正の本丸は9条ですよ。自民党への1票が9条を壊します」(志位氏)
安倍首相は与党で改選議席の過半数(61議席)確保を勝敗ラインとしている。反安保で共闘する野党4党は、自公両党と改憲に前向きな党を合わせても過半数割れとなる少数に追い込みたい。
志位氏は聴衆にこう呼びかけた。
「野党の目標が達成できたら安倍首相は退陣です。あの顔をもう見なくてもよくなるんです」
■野党が一方的に批判するだけでは物足りない
公明党の選挙公約に憲法改正の文字はない。現行憲法に新たな条文を追加する「加憲」を主張してきた。山口那津男代表は6月21日の党首討論で、 「憲法問題は政府の課題ではない。憲法改正は国会議員にのみ発議権がある立法府(国会)の課題だ」
と、正面から取り合わなかった。
野党から総攻撃されている自民党候補の演説会はどうか。
同じ千葉選挙区の応援演説に駆けつけた谷垣禎一幹事長は、オバマ米大統領が広島訪問した話を述べた。
「原爆を投下した国と、原爆の被害を受けた国が同盟関係を結んで、ここまできたかという思い」とノスタルジックに訴えたかと思うと、返す刀で野党をぶった斬った。
「米大統領選がどうなるのか、ちょっと心配です。誰が大統領になってもアメリカは内向きになるんじゃないか。どうしてアジアのことを考えなきゃいけないんだって。民進党と共産党はわれわれにぶつかってきています。
一緒になって平和安全法制を“戦争法案だ”なんて言っているんですよ。そんな勢力がド真剣にアメリカと協議するなんて考えられない。日本の運命を左右するかもしれないってときに、ぜーったい、そんなことをさせてはいけないと思っています」(谷垣氏)
私たち有権者にとって、投票の判断材料はいくらあっても困ることはない。'14年の消費増税延期の決断では「国民の信を問う」と衆院解散に踏み切るほどスジを重んじた首相が、なぜ、安保法制の強行採決ではスジを通すどころか説明すらしないまま選挙戦を戦うのか。
政治評論家の浅川博忠氏は「相手から聞かれない限り、答えたくない話だろう」として、次のように説明する。
「野党は、憲法を改正すれば戦争に巻き込まれると仕掛けている。時代にそぐわないところが出てきているのは確かなのに。安倍首相は環境権などを改憲の入り口にソフトランディングしたい。国民は選挙になると、外交・防衛問題よりも、経済や社会保障など生活に密着した政策への関心が高まる実情もある」
18歳以上が選挙権を得た初めての投票になる。政治家ならば都合の悪いことに目をつぶらず、堂々と主張をぶつけてほしい。与野党で論戦しないことには問題点を見いだしにくいからだ。
特に、憲法改正は大きな問題である。野党が一方的に批判するだけでは物足りず、考えも深まらない。