「“調査中だから説明できない”は本末転倒」
'13年9月に『いじめ防止対策推進法』が施行。いじめの疑いがある自殺や不登校などの場合、学校や教育委員会が調査することが義務化された。
しかし博司くんが亡くなった後、同校では記名式で「心と身体の健康調査」を行ったものの、いじめ関連の調査は行われなかった。
学校の調査が不十分と感じた里美さんは昨年末、同法に基づく調査を都教委に要望。そして今年1月に都教委は、「いじめ問題対策委員会」のもとに「調査部会」を設置した。都教委としては初めてのケースで、いじめの有無や自殺の原因、学校や都教委の事後対応についても調査するもの。
しかし実施された生徒へのアンケートは遺族が要望した内容ではなかった。「中間報告をしてほしい」という要望も受け入れられず、調査の進捗は不透明。“ずさん”な対応に遺族の不満はたまっていく。都教委は「調査部会があるたびに、遺族に説明をしている」というが、里美さんは「具体的な内容が知らされることはない」と話す。
少しでも内容を知りたいと里美さんは情報公開請求をした。すると今度は、調査委の資料だけでなく、生徒の「交友関係」を示した資料も、「調査の争点」との理由で、黒塗りだった。わかったのは、亡くなった9月だけでも4回、保健室に行っていたということだけ。
その後、都教委と交渉した結果、調査の一部は開示されたのだが、いじめの有無、他の生徒との関係、将来の進路に関する悩みなどについても知らされることはなかった。
里美さんは「調査内容は形式的なことしか教えてもらえず、資料も黒塗りでは何が書いてあるかわからない。親の知る権利を侵害しているのではないでしょうか」と語る。
都教委の担当者に問い合わせると「遺族に納得してもらえてないことはわかっています」としながらも、「事実を調べ尽くしたというところまで調査します」と回答。
しかし、『いじめ防止対策推進法』の立法者で民進党の小西洋之参議院議員によると、
「学校や教育委員会は調査内容を被害者家族の方々に説明する責任があると法律で義務づけられています。学校や団体が“調査中だから説明できない”というのは本末転倒ですし、まことに遺憾です。誰よりもお子さんを大切に思う親御さんに説明することが委員会の役目なので“説明できることから逐一してください”と常に伝えています」
法律で定められているはずの調査報告をしないのなら、被害者側が怒るのも当然だ。