全員でクレームに目を通して地道に改善、バナナの完熟度の好みまで把握
実に見事なハンドルさばきだが、数年前までは苦労することもあったという。
「ピッキングが遅れて、ドライバーの出発が遅れると大惨事。以前は、1日2便で回していましたが、荷積みのトラックが待ちぼうけ状態だった。16時30分に店舗を出発することもあってね。“17時までに届けなあかんのに~!”って泣きました(苦笑)。結局、配達が19時台にズレ込んで1軒ずつ謝りながら配達に回りました」(山村さん)
当日17時まで配送には相当な効率の高さが求められる。現在は、1台につき1日3便に改善され、遅延もなくなった。
同社のサービスが始まったのは1983年、約30年前のことだ。顧問の高倉照和氏はこう振り返る。
「当初は、苦情も多かったですよ。しかし現場の社員だけでなく、社長もすべてのクレームに目を通して、地道に改善を重ねた経緯があります。例えば、バナナやキウイなどの生鮮食品は利用者ごとに完熟度の好みをデータで管理する。挨拶がいるか、チャイムだけ鳴らして置いていくか、手渡しがいいか、など細かい要望をできるだけ何でも聞く方針でやってきました」
「スーパーサンシがないと生きていけません」
それでも、会費は年間で約6000円と決して安くない。利用者はどう感じているのか。
20年前からの常連で、ひとり暮らしをする浅野佳代子さん(83)は週3回、日用品や食料品を頼んでいる。
「お寿司やお刺身も届けてくれるでしょう。ありがたくてね。スーパーサンシがないと生きていけません」
ご主人と2人暮らしで、週1回約5000円分を利用する別の80代女性は、
「会費は安いと思います。近くに住む孫に車で買い物に連れていってもらうこともありますが、そっちのほうが高くつきます(笑)」
最近はお弁当配送や生活サポート事業も始め、それらの収益で送料をカバーすることにも挑戦している。
「いずれは会費制もなくし、高層階の方でも利用できるようにしたい」と高倉さん。
しかし、ドライバー増員や配達密度の向上など課題は多い。
便利なサービスの裏には配達人がいる。送料無料にいつまでしがみつくか。配達料はムダ金か。企業も利用者もいま1度考え直すべき岐路に立たされている。