「俳優として活躍していて、私は先を越されたなと思っています。弟子格ということではなく、今回は“共演者”として共演しましたけれども、ますます立派になられて」
名優・仲代達矢が、こう賛辞を贈った相手は役所広司。
6月17日、役所の主演映画『峠 最後のサムライ』がようやく公開された。
「新型コロナウイルスの影響で公開が1年9か月も遅れたのです。延期を3度繰り返しましたが、楽しみにしていた人も多いはず。なにせ黒澤明監督と仕事をしていた“黒澤組”のスタッフが製作に携わっているんですから。物語は役所さん演じる越後長岡藩の家老が、戊辰戦争で新政府軍と戦う話ですが、その家老の主君である藩主役を演じたのが仲代さん。役所さんの主演映画で23年ぶりとなる2人の“師弟共演”も見どころのひとつです」(スポーツ紙記者)
日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を3回、優秀主演男優賞を18回受賞しただけでなく、国際的な映画祭でも賞を獲得してきた役所。今や日本を代表する俳優だが、前職は公務員だった。
「役所さんは高校卒業後に上京して、千代田区役所に就職しました。4年間勤めたのですが都会生活に疲れ、実家に帰ろうと思ったそう。そのとき偶然にもらったチケットが仲代さんの舞台だったんです。それを見たことがきっかけとなって、役者を志したのです」(同・スポーツ紙記者)
『無名塾』では仲代から説教される日々
仲代が自宅で主宰する俳優養成所『無名塾』は、入塾の難しさと厳しい指導から“劇団の東大”ともいわれ、過去には入塾希望倍率が200倍だったことも。1978年、役所はこの『無名塾』の門を叩き、合格。観客から役者への道を歩み始めるのだが……。
「入塾当時は遅刻魔でしょっちゅう稽古に遅れて行っていたそうですよ。遅刻しないように前日から稽古場に忍び込んで寝ていたら、仲代さんに見つかって怒られたり……。そのたびに仲代さんからは時間の大切さについて説教されていたって。あるとき稽古をすっぽかして、謹慎処分にまでなったこともあったみたいです。今の役所さんからは想像できないですが……」(映画ライター)