街の声を聞くと、「マナーがよくない」「どうせすぐに来なくなるに決まっている」などという否定的な声も聞こえてくる、爆買い外国人旅行客。しかし、1兆5000億円のマーケットが生み出された現実は無視できない。
「外国人が周囲に増えるだけでクレームが出てきたりしますが、単なる経済効果だけでなく、地域のためにもなる。ある中部地方の大型ショッピングモールは、最初はテナントが埋まらず苦労しました。
ところが、そこはたまたま国際空港に近い場所にあったために、インバウンドのお客さんが立ち寄り、ものすごく集客できた。すると、以前ためらっていたテナントも出店するようになった。
本来なら都会にしかないようなお店ですよ。このように、地方にいながら憧れのブランドが買えるメリットも生まれるんです」(一般社団法人『ジャパンショッピングツーリズム協会』事業推進部の佐藤暢威さん)
1兆5000億円という金額は、日本最大手の流通企業『イオン・グループ』や『セブン&アイ・ホールディングス』に匹敵する巨大なマーケットである。
「4600億円だったものが、3倍以上に広がるようなダイナミックなマーケットなどそうそうありません。それも外からやってきたマーケットですからね。
だから、東京オリンピックに向けて、このマーケットをみんなでもっと大きくできるかが大切な課題なんです。国外からいいお客さんにたくさん来てもらって、3兆円まで目指していきたいですね」(佐藤さん)
しかし、そのためには問題も山積み。例えばフリーのWi-Fiがなく、スマホやタブレットが使えないことも少なくないらしい。
それから、中国では一般的な『銀聯(ぎんれん)カード』、電子マネーの『アリペイ』を使える店がまだ少ないことなどだ。さらに深刻なのは、言語の問題。トラブル発生の原因のほとんどはここにあるだろう。
中国事情や“爆買い”に詳しいジャーナリストの中島恵さんが、銀座の老舗眼鏡店のケースを話してくれた。
「その店は、中国の富裕層のお客さんがやって来て、1つ50万円もする眼鏡をよく買っていくんです。ここはタブレットを使った“多言語通訳サービス”を取り入れたんですね。画面を通して通訳とやりとりすれば細かい注文にも対応できる。これで、より多くのお客様を呼べるようになったんです」