昨年の相続税法改正により、納税義務がある人が約2万人も増えたという。「親がまだ元気だから……」「うちは財産がないから」なんて他人事のように考えていると、相続貧乏になるだけ。
そこで年100件以上の相続相談を受ける徳原聖雨弁護士(弁護士法人・響)に、実際にあったケースに役立つアドバイスを教えてもらった。
【相談1】
私は現在、父が起こした会社を引き継いで社長をしています。もともと父が小さな個人事業として始めた町工場でしたが、うまく軌道にのって本社ビルに工場を所有するまでに大きくなりました。
現在、父は現役を退いてはいますが、会長という役職についてまだ実権を握っています。私の母は何十年も前に亡くなり、つい最近、父は再婚したんです。その相手は、なんと父と30歳も離れた女性でして……。私とあまり変わらない年齢なのです。
再婚自体は喜ばしいことではあるのですが、父の死後が心配です。もともと小さな個人事業として始まったということもあり、現在の本社ビルや工場、その土地はすべて父の個人名義となっています。
このまま父が亡くなると、再婚相手にも相続が発生することになりますよね……。再婚相手が第三者に不動産を売却してしまうと、会社の経営自体ができなくなるおそれが。どうしたらよいでしょうか?
【アドバイス】
現状のままですと、お父さんが亡くなったあと、再婚相手に遺産の半分が相続されます。すると、再婚相手が遺産である本社ビルや工場の不動産の半分を第三者に売却する可能性もあるでしょう。持ち分が半分しかない不動産を誰が買うのかはまた別の話ですが、やはり不安ですよね。
お父さん名義になっている本社ビルや工場を会社名義にするのがいちばんいいかもしれません。ただし、お父さんが応じてくれるかどうか……。
後々のことも考えて、今の段階から再婚相手とも話し合いをしておきましょう。再婚相手が相続したとき“会社がビルや不動産をいくらで買い取る”というようなことを決めておくのも、ひとつの手かもしれませんね。
イラスト/坂木浩子