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 NHKスペシャルの放送をきっかけに、広く知られるようになった『腸内フローラ』。最近は、テレビ番組や雑誌で『口内フローラ』『肌フローラ』が取り上げられ、目にすることが増えている。

 腸内、口内に次ぐ“3大フローラ”の肌について、“美肌菌”の名づけ親、東京女子医科大学東医療センター皮膚科講師の出来尾格先生に話を聞いた。

「腸ほどではないですが、皮膚の表面にもいろんな細菌がいるということは、1950年代ぐらいから言われています。ただ、どれがいい菌か、悪い菌かというのは、わかっていませんでした。ここ数年、研究が進んで役割がわかるようになりました」

 人間ひとりの皮膚には、20~30種類の細菌がいて、そのうち顔の細菌は5~10種類。肌フローラを代表するのは、表皮ブドウ球菌、アクネ菌、黄色ブドウ球菌。その中で、女性にとっていちばん大切なのが、善玉菌の表皮ブドウ球菌だ。

「2010年ごろ、子どものとびひやアトピー、肌あれの原因になっている、悪玉菌の黄色ブドウ球菌を抑制する、抗菌ペプチドを表皮ブドウ球菌が出していることがわかりました。

 それをきっかけに、さほどいい菌だとは思われていなかった表皮ブドウ球菌が、悪者を退治する正義の味方に見えて、応援したいと思いました。肌のうるおいやバリア機能を守る働きもあるので、“美肌菌”と勝手に命名しました」

 その後、テレビ番組で“美肌菌”について紹介されたこともあり、多くの人に認知されるようになった。

 顔の表面には、1平方センチあたり1万~10万個の菌がいて、顔全体では、100万個~1000万個になる。健康肌の人には、悪玉菌はほとんどゼロという。ニキビ=アクネ菌の存在も気になる。

「肌のフローラのなかで、いちばん数が多いのが、アクネ菌です。ニキビの原因にもなりますが、肌を弱酸性に保つこともするので、あったほうがいいです。ニキビができない人にもアクネ菌はあります」

 アクネ菌については100年近く論争になっていて、3年ほど前に、実験によって、酸素がある環境でも、酸素がない環境でも、増殖する特性を持っていることがわかった。

 そのなかで、毛穴が詰まって酸素がない状態でも生きていることができるタイプのアクネ菌がいて、血液を溶かすような悪性タンパク質を放出し、炎症を起こし、ニキビになる。

「裏と表のある菌です。毛穴に酸素があれば、悪さはしないので、毛穴を詰まらせないことが大切です」

 毛穴をきれいにするのに、思い浮かぶのは、やはり洗顔だが、菌には増殖力があるため、ゼロになることはないそうだ。

 皮膚は角質、表皮、真皮の三層構造。美肌菌が育つ場所は、角質になる。

「角質はバリアの意味です。サランラップよりも水を通しにくく、内側の水分を逃がさないようにしているのと、外側からアレルゲン(アレルギー疾患の原因物質)が入らない働きをしています。その隙間が美肌菌のすみかになっています」

◎教えてくれたのは出来尾 格先生

 東京女子医科大学東医療センター皮膚科講師。'99年、慶應大学医学部卒業。'06年、同大学医学部助教(アトピー外来)、'10年、イングランド公衆衛生局(コリンデール)微生物部 生体解析・先端技術教室 研究員。'13年より現職