難病「拘束型心筋症」と闘う佳代ちゃんを助けようと、全国から善意が集まったのは1年前。昨年7月に渡米して2度の大手術を乗り越えた。佳代ちゃんは元気いっぱいの姿を見せた。
「帰国後、娘は急に言葉が増えました。私たち大人の会話を片っ端からまねするんです。“暑いねえ”とか“おいしそうねえ”とか」
そう報告する母・亜矢子さん(39)は幸せそうだった。
心臓の筋肉が硬くなって心不全などを引き起こす難病『拘束型心筋症』と闘い、米国で心臓移植手術を受けた千葉県流山市の金澤佳代ちゃん(2)と両親らが8日、同市の井崎義治市長を訪ねて手術成功の報告をした。何が起こっているかわからない佳代ちゃんは、報道陣にキョトンとしたり、市長室を駆け回るなど元気いっぱいだった。
「助けていただいた命です。いまは何気ないことがすごくうれしい。ごはんを食べたり、公園に行くことがうれしい毎日を送っています。ご支援いただき本当にありがとうございました」
父・輝宏さん(39)は、声を詰まらせた。
佳代ちゃんが50万人に1人という拘束型心筋症と診断されたのは昨年1月のこと。乳幼児の1年生存率は50%しかなく、できるだけ早く海外で心臓移植することが求められた。両親は友人らの協力を得て市のイベントや駅頭などで募金を呼びかけ、手術に必要な2億4500万円を超える2億8435万7439円が集まった。
渡米して昨年9月、コロンビア大学病院で心臓移植手術を受け、ニューヨークでアパートを借りて母子で通院生活を続けた。今年4月には長期間の点滴が原因とみられる『小児総胆管結石症』を発症し、胆のう切除手術を受けた。術後の経過はよく、6月22日に無事帰国した。
井崎市長は「言葉にできない苦労や心配もあったでしょう。それを乗り越えて元気で帰ってきて、本当にうれしく思う」と喜んだ。
うれしさのあまり、「なんか、オモチャはないかな? 佳代ちゃん、ここの部屋は広いから走っていいよ」と市長室ランニングのゴーサインまで出た。
市長と面会後、記者会見した両親は、ドナーや募金してくれた人たちにあらためてお礼の言葉を述べた。
「ドナーとご家族の気持ちをしっかりと受け止め、感謝して、これからの人生を生きていきたいと思っています。多額の募金をしてくれた方々には、救いの手を差しのべていただき、感謝の気持ちでいっぱいです」(輝宏さん)
輝宏さんの友人で『かよちゃんを救う会』代表の佐藤典孝さんによると、募金残額は日本移植支援協会と相談して緊急性の高い事例への引き継ぎなどを検討したいという。
佳代ちゃんは免疫抑制剤を1日2回、飲み続けなければならない。貝類や生モノなどを食べてはいけない。でも冷やし中華やカレーピラフは大好きでもりもり食べる。
身長は85センチまで伸び、体重は手術前から3キロ増えて10キロになった。『きらきら星』『ひげじいさん』を振り付けつきで歌える。
「こんなにオテンバとは思わなかった」と輝宏さん。
「身体が元気になって自信がついたのかな」と亜矢子さん。
どんな女性に成長するのか、人生はまだ始まったばかり。