■夫を訓練された犬のごとく呼ぶ
これまでのSNSマウンティングといえば、ハイグレードなランチコースや、美容・健康系の高級サロンでの様子を投稿するなど、あくまでも自分主体の贅沢(ぜいたく)自慢がメインでした。
しかし、今回クローズアップする武装ヅマたちは「夫から愛されている・大事にされている」という受け身を装った自慢をしてきます。
“ママカースト”雑誌『VERY』の中で頻繁に使われている「イケてる旦那」の略称、イケダン。見た目も普通、仕事も有名企業勤めではないような「フツメン」スペックの夫をイケダンに仕立て上げ、周知することで経済的優位ではなく、精神的な勝利を知らしめるのが、このニュータイプのマウンティングなのです。
わかりやすい例でいうと『行列のできる法律相談所』に出演していた弁護士の大渕愛子さん。俳優の金山一彦さんと再婚し、家事の担当は夫と公言。さらに、ブログには「彦さんは、育児も家事も積極的にやってくれるので、とても助かっているし、いつも感謝しています」「彦さんが久しぶりに作った料理は、こちら」とイケダン自慢がさく裂している。
そして、エッセイストでテレビコメンテーターとしても活躍している犬山紙子さんも、イケダン自慢の常連。夫である劔樹人(つるぎ・みきと)さんを「つるちゃん」と呼び、ブログにも「一日家にいる私に、好物のクレープを作ってくれた!」「夜ご飯も腕をふるってくれました。つるちゃんには感謝しかないです……」とひたすら「なんでもしてくれる夫」として登場する。
彼女たちは夫にあだ名をつけたり、「夫クン」「旦那ちゃん」など、まるで訓練された犬のように夫のことを呼ぶ傾向があるようです。木下優樹菜さんのように“フジモン”と愛称で呼んでいるような夫婦関係もそれに近いかも……。
繰り返しますが、従来との大きな違いは、豪華なディナーの写真をSNS上にアップするのではなく、イケダンによる手料理などの写真で「精神的な勝利」を演出してくるところ。
そのため、武装ヅマたちの投稿は、結婚していない独身女性のみならず、ワンオペ育児をしている“専ママ”や、共働きなのに家事に非協力的な夫を持つ“ワーママ”に対しても「羨(うらや)ましい」と感じさせるオールラウンドのマウンティング効果があるのです。
■SNS上で暴れ狂う武装ヅマたち
それでは実例を見ていきましょう。あなたは彼女たちがSNSに吐き捨てる、
《夫は公務員だから(裁判所勤めだからなど)、この時期忙しいの》
《疲れて帰ってきたのに、次の日、ゴミ捨てもしてくれた》
《腰が痛いと言ったら、ずっとマッサージをしてくれた》
という投稿を見たことがありませんか?
あるいは、あなたが育児や家事の不満をSNS上に投稿した後、コメント欄に《大変だったね。うちの場合は、夫が全部やってくれるよ》と、さりげなく優位に立つような書き込みをされたことはありませんか?
ほかにも「子どもが風邪をひいて大変」というようなネガティブな投稿でも、アップして数分も経たないうちに『いいね!』がつくような、内容を読まずにつける“無言いいね!”をされた経験はありませんか?
武装ヅマの『いいね!』は、読んでいるというマーキングではなく、行動をチェックしているという意味合いに近いのです。距離を置きたいと感じても、監視されているような気分になってしまいます。
このような、他人のコメント欄に「うちの場合はね」というイケダン自慢や、「その日は用事があって行けずに残念」など聞いていないのに予定を書いていくのも、彼女たちの特徴。
そして最悪なのが、武装ヅマたちの言いなりになって「イエスマン」になろうとするイケダンたち。彼らが、ママ友トラブルになるような行動をエスカレートさせてしまうとかなり厄介。
聞いた話では、ターゲットしたママにSNS上で接触し「〇〇ちゃん(武装ヅマの名前)と仲良くしてあげてね」「こういうのよくあるケース(笑)。怒らないでね!」と、対応に困るようなメッセを送って援護射撃することもあったそう。ある意味、夫という最大の味方を盾に、SNS上のキャラクターとしては無双状態なのです。
■なぜ彼女たちは私たちにとって目障りな存在なのか
武装ヅマたちは、暴言を吐くわけでもなく、モンスターペアレントのような振る舞いを起こすわけではありません。そのため、自分の夫や身近な人に彼女たちの嫌なところを伝えても理解されにくいことが大半!
しかし、子供同士が仲の良いママ友だったり、学生時代からの付き合いの女友達がこの「武装ヅマ」になってしまった場合は、お付き合いを止めるわけにはいかないのが、厄介なところ。でも、やたらとSNSでコメントをしてきたり、LINEでメッセを送ってきたり絡んでくるため、まともに付き合っていると、こちらの神経が疲弊してきてしまうことも……。
あくまでも彼女たちは「優位な結婚生活を送っている」と相手に知らしめるようなマウンティングがしたいため、自分とは関係のないネタでもすぐに絡む。それゆえに日常的なコミュニケーションツールであるSNS上で「自分は他人から好かれている」と思い込んでいる彼女たちのようなタイプは、とても目障りな存在になってしまうのです。
そんな彼女たちとSNS上でうまく付き合うためには、自分の投稿を相手に見えなくする限定公開などを選ぶか、既読スルーして「あなたに興味がない」という態度をとってみてはいかがでしょうか?
<著者プロフィール>池守りぜね◎ライター。出版社勤務などを経てフリーに。WEB媒体を中心に、女性向けのネタや人物取材なども行う。ライター業のほかに、シナリオや書籍、漫画原作なども執筆中。