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 アラフォー以降は、お肌のハリやくすみが気になるもの。しかし、それは加齢のせいだけではないと言うのが、美容のレーザー治療を専門とする「クリニックF」の院長を務め、多くの女性の肌を見てきた藤本幸弘先生だ。

「実は、年齢を重ねるほど睡眠の量や質は、肌や顔の状態に直結します。良質の睡眠をとっている女性は、若々しく見えますよ」(藤本先生)

 毎日、長く寝ていれば美肌美人になれるということ!?

「ただ長く眠るのではなく、質を高めることが重要です。とくに40代以降は加齢で睡眠の質が落ち、仕事や育児、介護でストレスも多い。寝る前に工夫したり、正しい枕を使ったりして、睡眠の質を高める必要があります」と藤本先生。

睡眠に問題がある人のお疲れ顔とは?

■顔と肌の状態は睡眠の質を映す鏡

 目には見えない睡眠の質のよしあし。藤本先生は、「その人の睡眠の状態は、顔と肌の状態を見れば一発でわかります」と言う。肌のターンオーバーや老廃物の排出の鍵を握る睡眠が乱れていると、如実に顔に表れるというのだ。

「美肌を作る成分は加齢により減っていきますが、睡眠が不足していたり質が悪いと、肌の老化に拍車をかけます。顔がどんよりした印象になり、老けて見えるのです」(藤本先生)

 加齢のせいにする前に、スッピンで前髪を上げて、鏡の前で次のリストをチェックしてみよう。2個以上あてはまる場合は、睡眠について見直しを!

・肌に色ムラがあり、透明感がない
・顔にむくみがある
・目のクマが濃く、疲れて見える
・シワやほうれい線が左右非対称
・顔の輪郭が四角くなってきた
・瞳がどんよりしている
・白目が濁っている
・毛穴が開き、皮膚がザラついている
・首のシワが目立ち、色ムラがある

■“クマ”に見る疲れ度サイン

 睡眠不足の“お疲れ顔”でいちばんわかりやすいのが、目の下にできるクマ。3つのクマの見分け方を伝授!

【レベル1/青クマ】
睡眠不足で現れる典型的なクマ。疲れにより、血流が悪くなることで起こる。目もとの皮膚を引っ張ると薄くなり、コンシーラーや化粧で隠れるのが特徴。睡眠をしっかりとることや肩のマッサージで改善できる。

【レベル2/黒クマ】
目のまわりのたるみにより、下まぶたと頬の間に影ができてクマに見える状態。加齢や肌の乾燥で起きる。目尻の皮膚をこめかみに向けて引っ張ると消える。化粧では隠せない。睡眠の質を高めることはもちろん、入念なケアで肌状態を改善すると消える。

【レベル3/茶クマ】
肌に色素が沈着した状態。原因は、肌のこすりすぎなどでの色素沈着、肌のくすみなど。目のまわりの皮膚を引っ張っても消えず、睡眠をとっても改善しない。黄色やオレンジのコンシーラーで隠すことができる。

■睡眠不足は姿勢にも影響

 睡眠の状態は、身体にも現れる。デコルテがよく見える服装で鏡の前に立ち観察すると、左右で肩の位置が違っていたり、肩が内側に入って猫背になっていたりはしないだろうか。そういった身体の歪みや姿勢の悪さを感じたら、睡眠に問題がある可能性が高い。睡眠時間を確保していたとしても、睡眠の質や睡眠中の姿勢に問題があることも考えられる。

「もうひとつのバロメーターは、朝、疲れが抜けているか。日中、どんなに疲れても、ひと晩眠れば本来は回復するもの。朝もどんよりする人は、睡眠環境を見直してみて」(藤本先生)

上質な睡眠が美肌に! 免疫力をも上げる理由

■脳をメンテナンスしてくれる睡眠

 なぜ睡眠が美に直結するのかを知るために、まずは睡眠が脳にとってどんな働きをするかを知ろう。

 人間の睡眠には、身体が眠っているのに脳が起きているレム睡眠と、身体も脳も眠るノンレム睡眠がある。そして、睡眠には、脳を「作る」「育てる」「守る」「修復する」「より働きをよくする」の5つの役割が。

 脳が未完成な子ども時代は、脳を「作る」「育てる」レム睡眠が大切で、脳が成熟した大人にとっては、脳を「守る」「修復する」ノンレム睡眠が大きな意味をもつ。

 大人の眠りは、最初は夢を見るレム睡眠がやってきて、やがて深いノンレム睡眠に切り替わる。このノンレム睡眠中に、脳のメンテナンスが行われ、また脳が老廃物を放出し、必要な栄養素を取り込むのも、睡眠中とされている。眠りは脳をリフレッシュさせてくれる大切なアクションなのである。

■美しい肌と健康を叶える「成長ホルモン」

 ノンレム睡眠中は、もうひとつ特徴的な出来事が。それは疲れを取ったり、肌ダメージを回復するために重要な「成長ホルモン」の分泌だ。

 成長ホルモンは肌の中で古い細胞と新しい細胞が入れ替わる「ターンオーバー」も促進してくれる。成長ホルモンがどれだけ分泌されるかは、睡眠の質が関わっている。睡眠時間が長いのに、肌の状態が思わしくないという人は、より質の高い睡眠を目指してみよう。

 さらに、成長ホルモンにはウイルスや菌から身体を守る効果も。

 WEBサイト「血めぐり研究会」が2012年に行った調査では、よく眠れていない人は、「睡眠の状態に非常に満足している」と答えた人よりも、調査の前年に3回以上、風邪をひいていた確率がなんと7倍! 免疫力アップにも、睡眠が要になる。

ノンレム睡眠とレム睡眠は、90分周期でやってくる。睡眠時間を6時間、7時間30分など、90分周期にすると目覚めが爽やかに イラスト/とげとげ

■本当のシンデレラタイム

 従来は、22時~2時が“お肌のシンデレラタイム”と言われたが、医学的根拠はまったくナシ! 免疫力を高め、美を作る成長ホルモンは、スタート時間にかかわらず眠りはじめの3時間により多く分泌されることがわかっている。

 この3時間をいかに快適にぐっすり眠るかが美しさを左右。22時を目指して焦ってイライラしながら眠りにつくと、せっかくの美肌タイムが逆に台無しに。本当のシンデレラタイムは眠りはじめの3時間である。

■加齢と戦うためにも眠りの見直しを

 また、夜間は「メラトニン」というホルモンの分泌も活発に。このメラトニンは体内時計を調整するホルモンであり、また老化を引き起こす活性酸素を除くパワーが秘められている。

 つまりアンチエイジングにも重要なホルモンなのだが、夜、暗い状況が続くことで分泌されるので、寝る前には明かりを早めに消すことが大切! 暗い部屋でぐっすり眠ることは、健康と美に直結し、老化と戦う強い味方となるのだ。

 記事の後半は、質の高い睡眠をとるための秘訣、眠りのパワーを最大限生かす方法を藤本先生に教えてもらう。

眠る前のセルフケアで眠り美人に!

 ひとつひとつはシンプルなケアでも、ステップを踏んで身体にも脳にも入眠のサインを送ることが、質の高い睡眠をとるための秘訣。“入眠前”に心身をリラックスさせ美に導く、眠る前の“ひと手間”を紹介しよう。

■プレステップ「入浴」

 まずは入浴。お風呂は低めの温度でゆっくりと。

■入眠ステップ1「保湿」

 寝ている間に肌は乾燥するので、必ず化粧水の2度づけを。1回あたりは普段と同じくらいの量を使い、しっかりとなじませます。さらに乳液やクリームをつけて蒸発を防止。しっかり保湿してぐっすり眠ることで、成長ホルモンの働きによる美容効果の期待が。

■入眠ステップ2「ストレッチ」

 活動しているときに働く交感神経から、リラックス時に働く副交感神経に、できるだけ早く切り替えることが良質な睡眠につながる。ストレッチはその切り替えをサポートしてくれる。また、血流をよくし、入眠を促す効果も。肩や腰、股関節をストレッチすると、効率よく血液の流れを促進できる。

■入眠ステップ3「両足ジャンケン」

 両足の指を動かすと、足の冷えが改善し、寝つきを助けてくれる。「グー」「チョキ」「パー」を1セットにして、リズミカルに10回繰り返すだけでOK。ストレッチをする余裕がない人は、両足ジャンケンだけでも血流改善効果が。

■入眠ステップ4「美顔器ケア」

 スチーマー、ローラーなど、美顔器を持っている人は、眠る前に使ってみて。睡眠中は成長ホルモンが分泌され、美顔効果をサポート。これも“寝る前の儀式”として習慣化することで、リラックスを促し、睡眠の質を高めてくれる。

■入眠ステップ5「目のまわりを温める」

 テレビ、パソコン、スマホなど、現代生活には目を疲れさせるものがめじろ押し。眠る前に目を休ませることで、睡眠の質も高めてくれる。蒸気が出るタイプのアイマスクや、蒸しタオルをのせて、目のまわりを温めよう。

■入眠ステップ6「白湯を飲む」

 美肌に乾燥は大敵! 朝起きたときに肌が乾燥して疲れた感じがする、そんな人は睡眠中に失われる水分が許容量を超えてしまっているのかも。水分を体内にしっかり巡らせておくことが大切。寝る前には白湯を必ずコップ1杯は飲もう。

快眠に必要不可欠の3つの枕

■“正しい枕”が質の高い睡眠と美を呼ぶ

 美容の鍵を握る、深い眠り。実は、そのために重要な要素のひとつが「枕」なのだという。枕を、働き続ける頭部を支えるコックピットにたとえる藤本先生。

「脳は眠っている間に血管を通して老廃物を排出し、かわりに栄養を補給してます。眠っている間の若返り信号を送り続けている脳(=頭部)をしっかり支えることは本当に大切です。さらに、自分に合った枕で眠ると呼吸が楽にでき、全身がのびのびするだけでなく、血管が圧迫されなくなり、血流改善にも役立ちますよ」(藤本先生)

■3つの枕で美を手に入れる

(1)季節の快眠用:夏は通気性のよいソバガラを使うなど、季節に合わせた第3の枕も用意すべき。

(2)横向き寝用:なかなか眠りにつけないときに使用。横向きになったとき、正しい姿勢を保てるよう、やや高めに。

(3)あお向け寝用:疲れていてすぐ眠れそうなときに使用。あお向けで正しい姿勢を保てるものを。

 布団と身体に隙間がある人は、身体の枕を使うのも効果的。背中が浮く人は背骨に沿うように、丸めたバスタオルを。ひざが浮く人は、ひざやかかとにタオルをたたんで当てると、楽な姿勢になれる。

 枕を選ぶときは以下の5つを満たすものを。(1)胸の上のほうが浮かず、楽に呼吸できる。(2)両肩が布団につく。(3)首を無理なく支えてくれる。(4)下あごに圧迫感がない。(5)鼻から息を吸い、お腹が膨らむ腹式呼吸が楽にできる。

 当然のような条件でも、これらを満たさず、無理な姿勢で寝ている人は意外と多いとか。また枕を選ぶとき、大切なのは実際触ってみること。「必ずしも高価なものでなくてかまいません。肌触りや頭に当てたときの感じなどを確認してください。自分に合った枕を体調や季節に合わせて変えられるよう3つは所持しましょう」(藤本先生)

■こんな枕はNG!

 意外と多いのが、夫婦で同じ枕を使っている人。男女で体形は違うし、人により好みも違うので、枕は1人1つに。また、同じ枕を使い続けるのもNG。やわらかい素材は半年~1年、硬いものでも最長で3年で買い替えを。ソファ用クッションなど、眠るために作られたわけではないものは枕に向かず、不眠はおろか首や肩を痛める原因にもなる可能性があるので注意しよう。

まだまだある!「入眠儀式」

 メラトニン分泌促進のため部屋は暗くして。眠る前にスマホなどの液晶画面を見ると交感神経が刺激され、寝つきが悪くなりますから、思い切ってスマホは寝室には持ち込まないこと!

 さらに、寝室を快適に整えるのが、快眠の基本。しっかりと片づけ、夏はエアコンなども使って快適な温度や湿度をキープ。お互いのいびきや寝返りで睡眠の質が落ちるので、夫婦別のベッドが理想。難しければ、布団や枕は必ず別々に。

 寝間着は血流を悪くする締めつけのあるスウェットなどではなく、肌なじみのよいパジャマで寝るのが理想です。

 最後に、寝る前の気分で取り入れてもらいたい、藤本先生おすすめのアクションをご紹介!

■香りで身体をリラックス

 香りによってリラックスし、浅い眠りから深い眠りへの移行時間が短くなることは立証されている。自分が穏やかになる香りを見つけ活用しよう。しかし、人間は視覚がさえぎられると嗅覚が敏感になるので、部屋が明るいときにほのかに香る程度におさえて。

■心地よい眠りをもたらす「音楽」

 音楽にはイライラを鎮めたり、眠気を呼び寄せるリラックス効果がある。藤本先生が選ぶベストな1曲は、バッハが不眠症に悩む伯爵のために作ったといわれる『ゴールドべルク変奏曲』。ぜひお試しを!

■寝る前妄想で女に戻る

 寝る前のひとときは、若かりしころの甘い恋の思い出に浸ったり、好きなアイドルや俳優のことを考えると若返り効果抜群。“仮想恋愛”のひとときが、コラーゲンの生成に関わりがある女性ホルモン「エストロゲン」の分泌を促進。藤本先生のクリニックでこの方法を10人の女性が試したところ、全員が10日後に肌年齢が10歳若返ったという報告も!

■寝酒の日本酒1杯が美肌に導く

 最近、注目されている日本酒効果。日本酒に含まれる成分には美肌効果や、肌にできるシミやソバカスの原因となるメラニン色素を生成させないようブロックしてくれる効果も! さらに肌の保湿力を促す成分も含まれており、美肌づくりには絶好の飲みものなのだとか。ただし、深酒は逆効果。寝る前に1杯程度に。

<教えてくれたひと>
藤本幸弘先生…美容/アンチエイジングのレーザー治療を専門に行う東京・四谷「クリニックF」の院長。美肌のプロとして、女優やモデルからの信頼も厚い“美のカリスマ医師”。最新著書に『美しい人は枕を“3つ”持っている』(双葉社刊)。