一生懸命、歯磨きをしているわりには40代以降80%超で増えている歯周病。とても残念なそのワケを徹底チェック! 見直すと老け歯も健康も変わります!
「日本はこれだけ歯磨き習慣が浸透しているのに、残念な磨き方をしている人が多くてもったいない!」
そう指摘するのは、歯科医師の森昭先生。“1日3回、磨けばOK!”と思っていたけれど、いろいろと間違えて過ごしているみたい……。
「まず、歯磨き=食べカスを取ると思っている人が多いですが、虫歯や歯周病を予防するためには、歯垢(プラーク)を取ることが重要です。それには、歯ブラシだけでは不足。デンタルフロスや歯間ブラシを使って、歯間まで磨く必要がありますし、歯垢が増えるタイミングに歯磨きをするべきです」
<歯磨きNG習慣>
・食べたらスグ磨く
・硬めの歯ブラシでしっかり磨く
・いつ替えたかわからない歯ブラシを使っている
・歯間の詰まりは、つまようじでクリア
・塩で歯ぐきを引き締める
・歯磨き後は、よ~くうがいをする
効果が薄い歯磨きを続けていると、虫歯や歯周病になりやすいだけでなく、歯ぐきが下がる、口臭が出る、さらには、免疫力低下や歯周病菌が原因となる全身病のリスクが高まるのだそう。
では、キレイな歯を保つにはどうすれば? 歯磨きの新常識を知っておきましょう!
【1】食後は30分以上あけてから磨く
食後の歯は、カリウムやリンが溶け出て少しやわらかい状態。食後すぐ磨くと歯が傷つくおそれが。
「歯と歯ぐきをケアするだ液の能力がもっとも上がるのは食後。30~60分かけて、歯を元の歯の状態に戻す(再石灰化)ので、その時間を待ちましょう」(森先生、以下同)
【2】歯磨きは起床後すぐと就寝前がベスト
「歯垢が爆発的に増えるのは、だ液の分泌が少ない就寝中。そのため、起床後すぐの歯磨きが有効。さらに、寝る直前に歯磨きをして口内をキレイにしておくのもオススメです」
【3】歯ブラシは1か月以上使わない
「1か月も使うと、毛束のもとに細菌がびっしりで不衛生。毛束が乱れるなど、買ったときの状態と明らかに変わったら1か月未満でも替えたほうがいいですが、その場合は磨く力が強すぎる可能性あり。歯ブラシが1か月使えるような磨き方に変えましょう」
【4】歯と歯の間は“磨く”場所。デンタルフロスはマスト
歯間も磨く場所という意識を持つことが大事。「歯と歯の接触部分を磨けるのはデンタルフロスのみなので、必ず使いましょう。また、歯ぐきとの間に隙間がある場合は、歯間ブラシを使ったほうが効率的に磨けます」。だ液の通り道ができて清掃効果が高まるので、歯ブラシ前の利用が◎。
【5】磨きすぎは、虫歯になりやすくなる
歯を磨きすぎると、歯の表面のエナメル質が薄くなり、虫歯菌に弱くなってしまう。「特に、50歳を過ぎると歯ぐきが下がって、やわらかな象牙質が露出しやすくなるので、磨きすぎが歯の大きな欠損につながることもあります」。硬め歯ブラシ、ゴシゴシ磨きはNG。
【6】昼はデンタルフロスだけでもOK
日中につく歯の表面の食べカスなどは、だ液や舌の動きで取れるが、歯間はその場に停滞して歯垢につながりやすいのでケアが必要。また、歯間を清掃することでだ液の通り道が作られ、自浄作用がアップするというメリットも。以下は森先生の1日。
・起床後…デンタルフロス→音波歯ブラシ(3分)
・朝食後…デンタルフロス→舌回し(1分)
・昼食後…デンタルフロス→舌回し(1分)
・就寝前…デンタルフロス→音波歯ブラシ(3分)
<舌回しでだ液UP!>
口を閉じて、舌先を右上のいちばん奥の歯ぐきと頬の間に置き、歯の外側をなぞるように右上から左上、左下から右下へ舌を移動する。この1周を10回。反対回しも10回行う。だ液の分泌を促すことで、口内の食べカスを洗い流し、歯垢ができるのをガード。さらに、「舌がしっかり動くようになるので、そしゃくや嚥下、呼吸機能も高まり、老化防止にも役立ちます」
【7】継続的な出血は、歯間ケアをしてこそ回復
出血が頻繁に起きる場合は、歯肉炎や歯周病の可能性が。「磨き続けることで、逆に炎症がおさまり出血が止まります。やさしく磨き続けましょう」。ふだん出血しないのに出血したときは歯ぐきに傷ができている場合があるので、やめておくこと。
【8】うがいは1回、少量の水で行う
何度もうがいをすると歯磨き剤の効果が激減!「フッ素などの薬効成分が流されてしまうので、歯磨き後は軽いゆすぎを1回でOKです」
【9】歯ぐきは歯ブラシで軽くマッサージ
塩を使うのは意味なし。歯ブラシで歯ぐきをくるくるとマッサージすれば、だ液の分泌を促したり、歯ぐきの血行促進につながる。「上の奥歯の頬側への刺激もだ液が出やすくなるのでオススメです」
<教えてくれたひと>
森昭先生◎竹屋町森歯科クリニック院長。癒しの予防歯科を啓発するMDE(メディカル&デンタルエステ)協会会長。だ液に注目した臨床歯科の第一人者でもある。著書に『歯はみがいてはいけない』(講談社)など。