凛々しい表情でカメラを見つめるシャバーニ(撮影=山口幸一)

いまだラブコールを送る熱烈ファンの姿絶えず

 ゴリラといえば動物園の人気者だが、森林伐採、肉目当ての密猟などにより絶滅危惧種となった。現在、日本の動物園にいるゴリラはわずか20頭。将来、日本の動物園でゴリラを見られなくなる日が来るかも!?

 そんな状況下、救世主として期待を寄せられているのが、東山動植物園のイケメンゴリラ、シャバーニだ。

 ’07年にオーストラリアからやってきて人気に火がつき、写真集まで出版された。

 今、どうしているのか。獣舎を訪れると、相変わらず妙齢女子が大勢押し寄せるなど、人気はまだまだ健在。確かに、彫りが深く凛々(りり)しくて時折、見せる渋い表情にオトナの男の色気が漂うような……♪ 2頭の子を育てるイクメンとしての包容力も加わり、魅力はさらに増したように見える。

 自然界のゴリラは1頭のオスと複数頭のメスからなる群れを作って暮らす。日本の動物園でも欧米にならって“群れ(家族)展示”を始めたことで、繁殖実績が上がってきた。現在、シャバーニは5頭の群れを率いており、その中に2頭の妻がいる。

 東山動植物園の獣医師・今西鉄也さんによると、

「子どもの面倒はよく見ていますが、母親たちにちょっかいを出してけんかになることも。愛情もあるのでしょうが、観客が増えてストレスがたまっているのかもしれません」

 さすがの最強イケメンゴリラも、2頭の妻以外の女性ファンにまでサービスするのはキャパオーバー?

ファンは最前列で動画撮影に夢中!

ゴリラの“幼なじみあるある”

 動物行動学者の新宅広二先生によれば、ゴリラは見かけによらずデリケート。

梅雨の時期なんかは、カタツムリを手のひらにのせてじっと観察することもあります。生き物を“観察する”ことは、人間の子どもでもある程度のレベルにならないとできない高度な知的活動です。また、求愛に失敗したぐらいの衝撃で死んでしまうこともあり、見守りに気を遣う動物です」

 シャバーニにはハオコという兄が上野動物園にいて、こちらもやはりイケメン&イクメン路線で大人気!

 飼育を担当していた上野動物園の今西亮さんは、

「ハオコもシャバーニも、オーストラリアの動物園でも群れで暮らしていて、親やきょうだいの育児をそばで見てきたので、子育てが上手。自然に性教育がなされ、尻込みすることなく交尾・妊娠に至れるのです」

 ただし、条件を満たすオスとメスをむやみに一緒にしても一筋縄ではいかない。

「幼いころから一緒に育つとお年ごろになってもお互いを繁殖の相手として見られないことも」(今西さん)

 なんだか人間界の“幼なじみあるある”と似た話。

 その点、シャバーニとハオコは子どもをもうけ、しっかりと家庭を運営している“実績のあるオス”だ。希望的観測ではあるが、今後もしかしたら「繁殖用に2頭を貸してほしい」「メスをお嫁に出したい」と縁談があるかもしれない。

 2頭のイケメン遺伝子で、日本に美形ゴリラが増える……か!?