うつには従来型と新型がある

要注意!折れやすい心の持ち主はどんな気質タイプの人?

 ストレス耐性の低い人というと、性格が弱くマイナス思考の人だと思われがちですが、『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』の著者、渡部卓さんの経験では、頑張り屋で几帳面、人付き合いも悪くなく、義理堅い性格の人が案外多いようです。

 また、その中でも、特に3つの気質の持ち主が心が折れやすい傾向があると観察しています。

 その3つの気質タイプを下記でご紹介します。

(1)メランコリー気質タイプ

 一言でいうと几帳面で、”いい人”です。

 人間関係にも気を遣い、日本人の6~7割がこの気質に当てはまり、日本人の国民特性とも言われています。

 農耕民族の中で、集団で目立たないように規律を守りながらやっていく傾向があります。個人よりも集団を大事にし、安定した環境があればチームの中で力を発揮するタイプで、日本人の”まじめさ”はこの人たちが体現してきました。

 ルールを守ることや几帳面にやることは苦にならないのですが、変化によるストレスに弱いのです。

 変化についていけない、取り残されることに非常にストレスや挫折感を感じます。

 突発事故や仕事でのミス、昇格、転勤、リストラ、定年など、それまでの日常から変化した時が危機です。

(2)執着気質タイプ

 とことん頑張る人、上昇志向が強い人で、企業経営者や熱血リーダーに多いタイプです。他人との関係の中で、自らにプレッシャーをかけて高い位置に上ろうとする人です。

 やるからには一番になりたい、勝たなければ意味がない、世の中は勝ち負けや白黒つけることが重要だという思考に傾きがちです。

 結果に執着しすぎて自らの心身に負荷をかけ、気づかないうちに過労や睡眠不足で、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」になる心配があります。頑張りすぎる結果、無理が身体的な疲労として表れてくるのです。また、ストレスから暴飲暴食に走り「メタボリック症候群」になりやすいとも言われています。

 仕事や人間関係で悩むことは少ないのですが、成果主義的な評価制度が一因になると言われています。

 このタイプの人の疲労は、適切な休息をとることで回復すると言われています。ワークライフバランスの見直しが必要ですし、リラクセーションの習慣も効果的です。

(3)自己愛・依存タイプ

 若い人に多いと言われており、新型うつ(現代型うつ)や適応不全という形で表れてきます。

 自分ができないことは相手の説明不足によるものだと考えるなど、うまくできないことに直面したときに、自分の経験のなさや能力不足とは考えず、他者のせいにする他責傾向が認められます。

 また、個性や自分磨きを重視する傾向があり、自分のやりたいことや適性へのこだわりが強くなると、実際の仕事とのミスマッチを感じて、いともあっさりと退職してしまったりします。

当記事は「BUSINESSLIFE」(運営:ビジネスライフ)の提供記事です

 原因の一つには、競争や挫折、失敗という経験を本人がする前に、親をはじめとする周囲の人たちが回避させてしまうことにあります。

 そして今は超情報化社会、検索ひとつで様々な情報にアクセスできます。SNSを活用すれば、実際には縁遠いはずの芸術や芸能、スポーツの世界の著名人が考えていること、興味関心といった情報も簡単に得ることが出来ます。こうした環境のなかで日々過ごしていると、例えば、スターやトップアスリートがまるで自分の身近な存在であるかのように感じられ、過剰にモチベート(啓発)されてしまいがちです。

 結果、彼らは競争や挫折を知らず、過剰な憧れや理想を抱いたまま社会に出ていくことになるのです。

 折れやすくなるのは、ある意味仕方のないことなのかもしれません。

「新型うつ」と「従来型うつ」のそれぞれ8つの特徴とは・・・

 自己愛・依存タイプの人は「新型うつ」あるいは「現代型うつ」と呼ばれる症状を起こしやすいと言われています。1975年以降に生まれた人に多いと言われ、「従来型うつ」との違いをまとめると次のようになります。

「従来型うつ」の特徴

・まじめで几帳面

・周囲にうつであることを隠す

・気晴らし、手抜きが下手

・場面に関わらずうつ状態

・自分を責める

・症状が改善しなくても復職したがる

・残業をいとわない

・有給休暇を大量に余らせる

 上記8項目が従来型うつの特徴です。

「新型うつ」の特徴

・自尊心が強く、傷つきやすい

・自分が「うつ」だと公言する

・仕事の時だけ「うつ」になる

・他責的で環境に不満がある

・一定レベルに回復してからも復職に手間取る

・上司や同僚の残業は気にしない

・有給休暇は使い切る

・キャリアへの偏狭な観念にとらわれる

 上記8項目が新型うつの特徴です。

 仕事が休みのときには症状が消えるのに、会社や上司の顔を思い浮かべると急に不安に覆われます。自尊心や他責傾向が強いので、周囲も扱い方に困惑する場面が多々見られます。

「新型うつ」は若い人だけに起こる症状ではないんです!

 新型うつは従来若い人に多いと言われていましたが、最近では中年以降でも似たような傾向を示す人が増えているようです。

 このような人が増加している背景には、4つの原因が考えられます。

・失敗する、ひどく怒られる、恥をかく、裏切られる、あきらめるといった経験が乏しく、ストレスへの耐性が備わらないまま社会人になってしまった。

・インターネットなどで簡単に物が買える、情報が獲得できる環境にあり、それを自分の能力として「自分はできる」という高い自己評価をしている。

・家庭や学校、職場での過保護や過干渉、マニュアル第一主義の影響で、決められたこと、指示されたことしかできない依存体質が強くなった。その結果、不安感、孤立感を感じやすくなっている。

・ゆとり教育などの影響で、「ナンバーワンよりオンリーワン」という個性重視の意識が強いため、「自分に合っているのはこんな仕事」という思い込みが強い。仕事と自分の理想とのギャップを感じている。

 上記4つが新型うつを増加する原因になると考えられます。

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 社会人になるということは、失敗も含めて様々な経験を積むことと同義です。それを乗り越えることで仕事のスキルが向上し、自信を持つことができるのです。ところが、経験を積む以前の段階で折れてしまうのが新型うつの特徴とも言えるのです。

“うつ”にならないためには、自分の心の傾向を知ることが大切

 メランコリー気質タイプ、執着気質タイプ、そして自己愛・依存タイプ・・・

 ストレスを抱えやすい人が、すべてこの3つに分類できるわけではありません。一人の中で複数の傾向が重なり合っている場合もあります。ただし、こうした型を基準として自分のストレス傾向を知っておくことは大切です。

 自分はどのタイプに近いのか、どういう要素を持っているのか、あらためて考え直してみるのもいいのではないのでしょうか。