『ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~』●監督:ニコラ・ブナム/出演:ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ヴィニョ、ジョゼフィーヌ・キャリーズほか/上映時間:1時間32分/フランス/配給: ギャガ 2017年7月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開 (c) 2016 Chic Films - La Petite Reine Production - M6 Films - Wild Bunch

 いよいよ、夏休み本番! 家族旅行に出かける方も多いだろうが、今回、紹介するコックス家もそんな典型的なファミリー。一家の珍騒動を描いたこのフランス産アクション・コメディーを見れば、夏休み気分を満喫できる(はず……)。

 主人公は整形外科医の夫と妊娠中の妻で、幼い子どもたちと一緒に最新式のメデューサの車でバカンスを計画。ところが、出発直前になって夫の父親が旅に同行することになり、早くも雲行きが怪しくなる。義理の父が来ることに妻は納得できない様子。とはいえ、車は走り始め、念願の旅へと出発! 夫は買ったばかりのピカピカの車、メデュがご自慢で、自動制御装置に頼れることを喜んでいる。

 ところが、途中でこの装置がおかしくなり、車が時速160キロの暴走を始める。一家の窮地を救うため、警察のオートバイも出動するが、どんなに手をつくしてもメデューサは止まらない。猛スピードで走る車の中では、妻の不倫問題や夫の仕事のミスなども発覚。家族の秘密が次々に明るみに出て、一家に絶体絶命のピンチが訪れる!

 暴走する車の中で物語が進むので、話の展開が早く、アクション映画として目が離せないが、それと並行して家族のありがちなトラブルも描かれるので、ハラハラしつつも家族劇として爆笑できる。一家のお茶目な子どもたちも可愛いが、最初はお荷物に思えた夫の“恋多き”父親も、後半はいい味を出している。

 出演者たちは実際に暴走する車の中で危険なスタントに挑戦したそうで、CGに頼らず身体を張って見せる演技には緊張感があふれる。完璧なはずの自動制御装置が壊れたときの怖さもわかり、そのあたりはフランス映画らしい現代風刺も光る。製作は『アーティスト』でアカデミー賞を受賞したチームで、夏休みに気軽な気持ちで楽しめる痛快なエンタメになっている。

文/大森さわこ
「ウディ・アレンの評伝本の翻訳『ウディ』(キネマ旬報社)の刊行トークショーが7月8日に行われました。ゲストはアレン・ファンの劇作家、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん」