世界中を巡る著者が、現地の健康トレンドをお届けします。
出勤前にスイッチオン。帰宅したころに美味しい料理。スロークッカーをご存知ですか?忙しいビジネスマンや共働きの家庭、料理が苦手な人の救世主と言われる調理家電です。
アメリカではもはや一家に一台と呼ばれ、イギリスやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドでも必需品。
アメリカのベストセラー欄には「スロークッカー」というカテゴリーがあり、料理にとどまらず、健康書欄にも顔を出すキーワードなのです。
2016年は「The Complete Paleo Slow Cooker」が、パレオダイエットとのコラボで話題になりました。
スロークッカーの人気の秘訣は、手間暇をかけずに本格料理が作れること。朝、材料を入れてスイッチを押すだけ。それだけで、帰宅したころには美味しい料理が出来上がります。
その秘訣は、長時間加熱すること。
簡単で経済的、放置料理の極みスロークッカー!
スロークッカーは、長時間とろ火状態でじっくりと加熱します。家庭料理ではとかく硬くなってしまう牛すじ肉も、スロークッカーではほろほろの柔らかさ。沸騰させないので煮くずれせず、火を使わないので留守中でも安全。
電気代は、1時間たった2.7円(弱メモリ時)。10時間煮ても27円ですから、コンビニ弁当より経済的です。多くのスロークッカーは鍋部分は取り外しができ、手入れも簡単。
料理下手や多忙なビジネスマンだけではなく、ずぼらな人にも嬉しい調理家電なのです。
材料を入れるだけで、筑前煮からポトフまで
スロークッカーの得意料理は、筑前煮や角煮、肉じゃが、鯖の味噌煮といった煮物料理から、カレー、シチュー、ロールキャベツ、ポトフまで和洋を問わず。焼き芋や黒豆、ヨーグルトとレパートリーは広いです。
本コラムでは、健康とダイエットに効くメニューをまとめました。
低カロリーのローストビーフとビタミンC
普通、ローストビーフはフライパンで軽く焦げ目をつけますが、スロークッカー派はそんな面倒なことをしません。お肉をスロークッカーに入れて、余計な油を使わず、塩胡椒を振るだけ。
仕事から帰宅したころ、箸で触ると崩れるような柔らかいローストビーフが出来上がっています。ローストビーフと聞くと太りそうな印象ですが、低カロリーの高タンパク。100gで200kcalしかないので、バラ肉の半分以下です。
タンパク質は消化に時間がかかるので腹持ちがよく、満腹感が持続。吸収率の高いヘム鉄が多く含まれ、貧血を防ぎます。
ビタミンCが豊富なレモンやイチゴ、パセリやブロッコリーと一緒に食べると、さらに鉄分の吸収率が高まります。
特に赤ピーマンや黄ピーマンは200mg以上ものビタミンを含み、半分だけでも1日の摂取量100mgをカバーできます。ビタミンCはコラーゲンの生成を促し、免疫力を高め、ストレスに強くなります。
抗がん作用のあるインターフェロンの生成が、促進すると言われています。ちなみに鉄分不足が続くと、ヘモグロビンが酸素を十分に運べません。酸素不足が基礎代謝の低下を招き、カラダに余計な脂肪が溜まります。ローストビーフは、ビタミンCとの食べ合わせが効果的です。
鯖の味噌味で血糖値を下げる
鯖の味噌煮もスロークッカーの得意技です。サバと調味料を入れてスイッチを押せば、2、3時間で完成。鯖は健康によく、「EPA」と呼ばれる不飽和脂肪酸が含まれています。EPAが、大腸の近くで「GLP-1」なるものを増やします。
このGLP-1に血糖値を下げる働きがあり、食欲を抑制。100gの鯖で、1日分のGLP-1を摂取できます。EPAは鯖にもっとも多く含まれていますが、マグロ、イワシ、ブリ、サンマなどの青魚にもあります。
低カロリーの王様おでん
ダイエットの基本は、摂取カロリーを抑えること。食べた量より消費カロリーが上まわれば、脂肪が燃焼されダイエットに効果があります。
ちなみにご飯一杯分のカロリーを消費するには、1時間以上のショギングが必要です。ご飯を食べるたびに外を走りまわるより、おでんを食べましょう。おでんは、低カロリーの王様です。低カロリーの具材が、たくさんあります。
こんにゃくや白滝なら、たったの6kcal。昆布巻きは、9kcal。大根は、14kcal。かまくらはんぺんは、39kcal。ごぼう巻き、57kcal。焼ちくわや野菜さつま揚げは、62kcal。
男性の1日の摂取カロリーは1800kcal(女性は1500kcal)ですから、おでんならダイエット中でも楽しめます。こんにゃく、白滝、大根の食物繊維は、便秘に効き目があります。スロークッカーの水分はほとんど蒸発しないので、調理途中で味の調整は不要です。運動不足の人に、超低カロリーのほったらかしおでん!
糖質ゼロのモツ
糖質制限ダイエットの代表格、モツ。モツは、ほぼ糖質ゼロです。レバーだけ糖質が3.7gですが、ご飯茶碗一杯の糖質は56gなので、気にするほどの量ではありません。カロリーも少なく、豚モツ100gで160kcal前後。
ただプリン体やコレステロールを多く含んでいるので、痛風や動脈硬化の原因になります。糖質がゼロだからといって、くれぐれも食べ過ぎに注意してください。
高タンパク、低カロリー、脂質が少ない牛すじの煮込み
牛すじは、高タンパク、低カロリー、脂質がほとんど入っていない健康食です。また豊富なビタミンKが、骨を丈夫にし、骨粗しょう症を予防します。とかく煮ると固くなる牛すじですが、スロークッカーにお任せ下さい。魔法のように柔らかく煮えます。
美容に効くポトフ
外食が続き、とかく野菜不足になりがちなビジネスマン諸兄。ポトフの野菜で、食物繊維やビタミンを補強しましょう。週に一度、冷蔵庫のお掃除を兼ねてポトフ。作り置きして、野菜不足を解消しましょう。
スロークッカーは、デザートも作れます。
ワインよりポリフェノールが多いあずき
あずきを煮るのは時間と手間がかかりますが、スロークッカーならスイッチを押すだけ。あずきの豊富な食物繊維は便秘に効果があり、ビタミンB複合体が新陳代謝を活発にし、美肌に効果があります。
またでんぷんや脂肪を分解し、肥満を予防。サポニンとカリウムには、利尿作用や解毒作用があります。ワインより多いポリフェノールが、動脈硬化を予防。100g中1500mgもある豊富なカリウムは、血圧を下げます。
夏バテは、汗と一緒にカリウムが流れてしまうのが原因です。あずきで、夏バテ防止!
スロークッカーの価格は、3,000円くらいから。急ぎのときは直火で使え、火からおろしてスロークッカーで一時間加熱すれば、圧力鍋の威力です。共働き夫婦や多忙なビジネスマンには、タイマー付きをオススメします。
石澤義裕(いしざわ・よしひろ)◎デザイナー 1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。