男女の愛情を独特の表現と会話で描いた坂元裕二の世界観を味わえる一冊
■『往復書簡 初恋と不倫』
(坂元裕二=著 1600円+税 リトル・モア)
著者の坂元裕二は『東京ラブストーリー』をはじめ、名子役・芦田愛菜を一躍有名にした『Mother』など、大ヒットドラマを手がけた人気脚本家。
本書にある『不帰の初恋、海老名SA』『カラシニコフ不倫海峡』は、2012年に朗読劇の脚本として書き下ろされたもの。クラスでいじめられていた男子のもとに、突然届いた同級生からの手紙、名も知らない女性から胡散(うさん)臭いスパム風メールがある日、届く……。両ストーリーとも女性からの手紙やメールからストーリーが始まる。
会話形式の作品で、はじめはどんな展開? と、まったく読めない状況が続くが、そのうちただの甘酸っぱい初恋話やドロドロの不倫劇ではなく、荒唐無稽と思うようなサスペンスを盛り込み、日々の些細(ささい)な出来事や独特な心情の表し方などを、会話の要所要所に入れテンポよく読ませていくのは坂元裕二ならでは。HAPPYだけではない男女の愛を考えさせられる。
(文/安川ヤス子)
終活をしていないと家族はどうなる?著者のリアル体験コミックエッセイ
■『マンガ 親が終活でしくじりまして』
(寝猫=著 1100円+税 三五館)
母親を突然亡くした著者が、葬式・墓・相続など次々と決めなければならない物事に東奔西走する実体験を描いた、リアル終活コミックエッセイ。
終活は必要だと思っていても、始めるのは腰が重いもの。週女世代は自分の終活を考えなければならないが、まずは親。何もしていない親が亡くなった場合の慌ただしさが、このエッセイでは手に取るようにわかる。
数年前から、「終活」や「エンディングノート」という言葉が定着してきたが、自分の親、ましてや夫の親に「終活して」とお願いするのは難しい。せめて、亡くなったときに連絡してほしい人のリスト、どのようなお葬式で、どのように埋葬されたいのか? という遺言状があれば残された家族が右往左往することも少ない。特に決めておきたいのは延命治療。家族に決断を任せるのは重荷を背負わせることにもなる。とはいえ、本当に終活は必要なのか? 終活とはいったい何なのか? その本質にも迫り、終活そのものを考えさせられる。
(文/ますみかん)
どこのどなたか存じ上げませんが日本のオッサンって……渋い!
■『JAPANESE DANDY Monochome』
(河合正人=プロデュース 大川直人=写真 4100円+税 万来舎)
40代を迎えたからでしょうか? 最近、テレビを見ていても「いいよなぁ」と思う俳優は、ほぼほぼ50歳を越えている気が。20代のイケメン俳優にはまったくピンと来なくなってしまいました。
自覚はなかったものの、「オッサン好きのアンタにいい本があるよ」と友人がすすめてくれた本が、『JAPANESE DANDY Monochrome』。めくれどめくれど、日本のオッサン。その数、なんと170人。俳優ならまだしも、見ず知らず(正確にはおしゃれ業界の第一線を走ってきた方々らしい)のオッサンを見たところで……と思いきや、これがなかなか意外や。
オール白黒写真で、テーラードスタイルに身を包んだ彼らは、いい意味で日本人に見えない。シワやシミ、はずした目線、射貫くような眼差し、憂い、渋み、含蓄のある佇まい。その人生の中で得たもの、手放したもの……何やら想像力をかきたてる。日本のオッサンはこんなにもカッコよかったのか……ため息の出る1冊でした。
(文/週刊女性編集部 Y.I.)