豪華キャストで話題の舞台『煉獄に笑う』。2.5次元を代表する顔として、多くの舞台で主演を務めてきた鈴木拡樹さんが石田佐吉役、注目度急上昇中の崎山つばささんが曇芭恋(くもうばれん)役を演じる。

 終始、なごやかな雰囲気でおっとりした印象の2人は、ファンから“仏感がある”と言われているのが共通点。そんな2人が、舞台に向けての意気込みや見どころなどを語ってくれた『週刊女性』本誌(2017年8月22日・29日合併号)のスペシャル対談の続きをお届けします。

左から鈴木拡樹、崎山つばさ 撮影/廣瀬靖士

崎山くんの芭恋のビジュアルの完成度の高さは想像を超えた

――お互いが演じるキャラクターは、ご本人に合っていると思いますか?

崎山 拡樹くんと佐吉は、風を運ぶっていうところがすごく似ていると思います。僕も拡樹くんに影響される部分は多いので、芭恋としても崎山つばさとしても、きっと稽古場でも本番でも、何か影響されるんだろうなっていうのは、今からすでに楽しみですね。

鈴木 そう言ってもらってありがたいですね。でもプレッシャーも感じる(笑)。あらためて引き締めていかないとな、って思います。崎山くんの芭恋は、いやもうビジュアル見て皆さん、“おお~!”って思ったと思うんですけどね。この完成度の高さに。想像はしてたけど、(それを)超えましたよね。

――ホントに皆さん、完成度の高いビジュアルですよね。

鈴木 浅田舞さんもびっくりしました。

崎山 いや、ほんとに。

鈴木 眉もつぶされて目元のメイクとかも入って、ビジュアルの雰囲気が絶対強いですもんね。

崎山 浅田さんが演じる芦屋弓月は情報屋で、僕はけっこう絡むところが多いのかなって思います。フィギュアスケートでパフォーマンスを長くやられている方なので、魅せ方などを学びたいですね。

鈴木 浅田さんの存在は、この舞台に風を起こす材料のひとつになると思いますし、表現者として今までに受けたことのないアプローチがあるんだろうなと思うと、ワクワクします。

――おふたりの関係についても伺いたいんですけど、どんな先輩と後輩ですか?

鈴木 つばさくんは強い。折れないですね。

――メンタルが強い?

鈴木 メンタルが強いっていうよりも、たぶんちゃんと見据えてて、しっかり自分の中でこうなっていきたいっていうプランがあるからなんでしょうけど。ブレない。

崎山 でもそうなんですよ。僕、不安要素があるまま舞台に上りたくないっていうのがすごくあるので、それをとことん追求したいというか……。妥協したくないっていうのもあって、限られた期間の中で、どれくらい自分の目指しているところに持っていけるかっていうのがあるので。だからご飯に行かないで帰っちゃったりするんですけど(笑)。

崎山つばさ 撮影/廣瀬靖士

――以前おふたりが共演された『ノラガミ』の時は、ご飯は行かなかったんですか?

鈴木 普通には行ってたんですけど……。(つばさくんは)誘われない限り行かないからね(笑)。

崎山 そうなんです(笑)。でも今回は、拡樹くんが2回は行こうねって言ってくれたので。

鈴木 アハハハハ!

崎山 だから3回は行きたいと思います(笑)。

鈴木 さっきのつばさくんの話で、もうひとつ付け加えるとしたら、カッコいいなと思う部分で、自分も実際そうやろうとしてたことがあるけど、つばさくんほど粘れなかったのは……。稽古で自分のプランをまずやってみるじゃないですか。で、(演出家に)「こっちのプランもやってみて」って言われて、そっちもやってみるよね?

崎山 はい。

鈴木 で、後日もう一度、自分のプランを固め直したのを、演出家さんにまたぶつけてくるじゃない? 何度も何度も。だから、そういうところを見て強いなって思ったのかもしれない。なかなかいないと思いますよ。そこまでこだわり抜いて、「よくしてきたので、もう一回見てください!」って出せる人。

崎山 悔しいまま終わりたくないっていうのがたぶんあって、負けず嫌いなんです。自分で納得したいというのがあるんですよね。強情なんです(笑)。

拡樹くんの背中はデカすぎてちょっと遠い。人間的にも役者的にもすごい人なので

――鈴木さんは、崎山さんにとってどんな先輩ですか?

崎山 『ノラガミ』の時は、僕は自分のことで精いっぱいだったので、拡樹くんのお芝居を横から見てるぐらいだったんですけど。僕からしてみたらデカすぎて、背中が。だから今回は、その背中に近づければいいなっていうのはすごくあって。でもちょっとね~、遠いです拡樹くんは。僕の中で、人間的にも役者的にも。拡樹くんの舞台も見たりするんですけど、やっぱり「この人すごいな」って思うので。

――そういうすごい先輩と一緒に舞台に立てるというのは大きいこと?

崎山 いや、大きいですよ。しかもちゃんと関係性の深いところで絡むことができるので、すごくうれしいですし。それなりの覚悟がないといけないなっていうのもありますね。

鈴木拡樹 撮影/廣瀬靖士

――この作品は、稽古から本番が真夏から残暑で暑い時期ですが、過酷さを乗り越えるための元気の素はなんですか?

鈴木 熱中症対策、これ非常に大事です! この作品もそうなんですけど、アクションが含まれてくると、ミネラルウォーターだけとると塩分不足になって、貧血っぽくなっちゃうことがあるんで。人によって、バランスは変えたほうがいいけど、スポーツドリンクと塩分タブレットをとるとか。そうしないとダメなんだなと、やってきた中で分かりましたね。

崎山 気をつけます(笑)。僕はもう食べる! もともとは小食なんですけど、自分なりには食べるようにしますね。特に夏は稽古で疲れてくると食欲が減ったりするんですけど、でも、ちゃんと朝ごはんを自分で作るようにして食べたりとか。やっぱりガソリンは入れないと動けないので。

鈴木 偉い!

崎山 そこは、ちゃんとしようかなとは思います。

鈴木 なかなかできないからね。

崎山 食べなくていいやってなりますもんね。

――鈴木さんは走ったりとかは?

鈴木 ランニングはずっと続けてます。日課ですね。地方公演のときとか、走れないときもありますけど。

――どれくらい走るんですか?

鈴木 だいたい1時間弱くらい。

崎山 え~! すごい。

鈴木 昔は2時間とか走ってたんですけど、最近はもうちょっと睡眠時間をとりたいなと思って、1時間くらいにして早めに帰ろうと思うから、少し不完全燃焼なんですよね。ホントは好きなだけ走れるのが気持ちいいですね。

芝居はいろんな作業があるので楽しい。やることが尽きないし飽きることはない

――ここ数年、2.5次元はもちろん舞台人気が熱いと思いますが、役者として感じること、また仕事への取り組みや意識の変化はありますか?

鈴木 こうやってインタビューしてくださるから、目標を持てたと思うんですけど。せっかく演劇に携われているので、少しでも見てくれる人が増えたらいいなって。そう呼びかけてたのが実ってきたっていうことなんだとしたら、ほんとに嬉しいことだと思いますし、少しだけかもしれないですけど貢献できてる部分もあるかなと思うと、もっと広めたいと思いますね。

崎山 僕は拡樹くんに比べたら経験は浅いですけど、そういう先輩方が先を歩いてくれているので、それに付いていくというか。自分なりのものを得ながら、背中を見つつ進んでいけたらいいなと思いますね。なんか2.5次元っていうジャンルが10年ぐらいかけて、今ようやく広まってきて成熟しつつあるのかなって。受け継ぐじゃないですけど、そういう気持ちではいたいです。

鈴木拡樹、崎山つばさ 撮影/廣瀬靖士

――自分は何のために芝居をしていると思いますか?

鈴木 一番最初は、もちろん興味を持ったから始めたんですよね。やりがいを感じたのは、やっぱり反応してくれるお客さんがいるのもそうだし、ホントにごく単純なことで言ったら、出演した作品の評判を聞いたら親とかも喜んでくれますし。いろんなやりがいは感じますね。役者なら誰でもそうだと思うけど、やっていくうちにどんどん創作意欲が芽生えていくから、自分でスキルを身に付けたりだとか。逆にそのスキルが付きすぎて、なんかくどい芝居になってるなと思ったらはがしてみたり(笑)。いろんな作業があるので楽しい。やることが尽きないし飽きることはないです。

崎山 僕もその意見に近いですね。進めば進むほど、次が見えてくるというか。終わりがないというか。たぶん満足はしないとは思うんです。満足をしてしまったら終わりな気もするし。常に追求していくというか、研究していくというか、そういう終わりのない物語を進んでいるような、そんな感覚ですね。

■舞台『煉獄に笑う』とは?
大人気コミックス『煉獄に笑う』の初の舞台化。戦国乱世の真っただ中。300年に一度、琵琶湖によみがえるといわれる伝説の化物「大蛇」。武将たちは大蛇の絶大なる力を求めていた。織田家家臣・羽柴秀吉の命を受け、大蛇の謎に挑む石田佐吉(後の三成)。曇神社八代目当主・曇芭恋と阿国の双子を巻き込んで一戦を交える……。
東京公演:8月24日~9月3日サンシャイン劇場/大阪公演:9月8日~9月10日森ノ宮ピロティホール
【公式HP】www.rengoku-stage.com

<プロフィール>
すずき・ひろき◎1985年6月4日、大阪府生まれ。AB型。舞台を中心に活躍し、『最遊記歌劇伝』シリーズ、舞台『弱虫ペダル』シリーズ、舞台『刀剣乱舞』シリーズなど人気の2.5次元作品にも多数出演。

さきやま・つばさ◎1989年11月3日、千葉県生まれ。B型。ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ3作品で石切丸を演じ人気急上昇中の若手実力派。1st写真集『YOKU』発売中。

(取材・文/井ノ口裕子 撮影/廣瀬靖士)