「僕は子どものころから食癖(しょくへき)がありまして。丼ものは、ご飯がたれを吸い込んだ状態にして食べるのが昔から好きなんです。たとえば牛丼屋さんでイートインで食べられたとしても、わざわざテイクアウトにして、ちょっと冷まして蒸らす。そうすると、つゆがご飯の中に染み込むので、お米が“太る”んです。これがおいしい!

 そう熱く語るのは、お笑い芸人・ミュージシャン・俳優とマルチに活躍するマキタスポーツ。“たれ”に並々ならぬ思いをもつマキタが、8月21日(月)放送の『液体グルメバラエティー たれ』(テレビ東京系 毎週月曜 深夜0時12分〜)に満を持してゲスト出演!

「たれ」への熱い思いを語るマキタスポーツ。自身おすすめのたれ「うまくて生姜ねぇ!!」を手に 撮影/齋藤修造

 究極のたれを求め、全国各地で評判のたれを紹介していく番組で、的確なコメントと分析を行うマキタは、さながら“たれの伝道師”のよう。収録を見た記者がその感想を伝えると、はにかんだ笑顔で答える。

「ありがとうございます(笑)。こういう細かいネタは“これぞテレ東”って感じがします。すばらしいですね。僕はたれを染み込ませたご飯好きでいたんですけど、そういうのは恥ずかしいとか、コンプレックスを感じていたんです。

 でも何十年も前に、あるテレビ番組で、映画監督の山本晋也さんが麻雀するときに丼ものを注文したら、“すぐに食べないで冷蔵庫に入れて冷ます”とおっしゃっていたんですよ。そのときに自分が肯定されたような気になりましたね。その番組をやっていたのがテレ東でした(笑)」

 たれのおいしさを知ると、もっと食の世界が広がるとマキタは力説する。

人によっては家庭で教えられる中で、たれで白いご飯を汚すな、と教育されている方も結構いると思います。でも僕は、1回その偏見をとっぱらって、ゼロスタートをきったほうがいいと思うんです。

 餃子を食べるとき、餃子をたれにつけているうちに肉汁とかが染み込んで、なんともいえない自分専用のたれができあがりますよね。それとは別に、複数のたれを混ぜてカスタムしていくことで、より深みが出てくることもある。そういうふうに、たれを自分でプロデュースする視点で楽しんでほしいと思います

 お笑いも音楽も、自己流にカスタムすることでオリジナルの芸風を確立してきたマキタだが、食にも共通した意識を持っていたようだ。

番組では、テレビ東京の鷲見玲奈アナウンサーとゲストのマキタスポーツが、絶品と称されるたれの紹介VTRを見ながら試食! 見ているだけで食欲をかきたてられる 撮影/齋藤修造

「公式どん兵衛士」に認定される

 さらに、マキタは2015年にネットで火が付いた、「10分どん兵衛」の生みの親でもある。その名の通り、カップ麺のどん兵衛を、お湯を入れてから規定の5分ではなく10分待ってから食べるというもの。これがおいしいと評判になったことで、どん兵衛の売り上げもアップしたという。今年6月には、製造元の日清からその功績が評価されて、マキタは「公式どん兵衛士」に認定された。

「うれしかったですね。『10分どん兵衛』は僕の中で完全に“非公式な遊び”の感覚でやっていたものが、思わぬ方向でバズって有名になったものなんです。今はネットの力もあるから、公式のやり方ではないところで、どう遊ぶかというのが重要。そうやって非公式に出た遊びを、日清さんみたいな懐の深い企業が面白がって公式に取り込むというのは、非常に現代的だと思いますね」

 マキタは、ラジオのレギュラー番組『東京ポッド許可局』でも、食について語ることが多い。今、市販のものでマキタがカスタムしている食べ方はあるのだろうか。

「このやり方が推奨されてるかはわかりませんが、僕独自でたどり着いたものをいうと、缶詰のオイルサーディンを使って作るチャーハンですね。あのオイルも僕はたれだと思っているんですけど。

 作り方は、最初にイワシだけ取り出して、フライパンで表面をカリッとさせるまで焼いて取り出しておく。残りのオイルをフライパンに敷いて、ご飯を入れて、しょうゆを1まわし半くらい入れてかき混ぜながら炒める。炒めたご飯を盛りつけたあとに、焼いたオイルサーディンを乗っけて、お好みでパクチーやあさつき、刻み海苔をかけてできあがり。イワシのだしが出ておいしいですよ。

 あと、実はサバ缶はお味噌汁に入れるとおいしいんです。サバは油が多めなので、こってり感がでて温まるし。缶詰のたれだって捨てどころはないですよ!」

マキタスポーツ 撮影/齋藤修造

口コミサイトを利用しない理由

 食にこだわるマキタだが、実は口コミサイトは利用しないのだという。

「どこそこのお店がおいしいとか、今カレーはこの店が熱いとか、食べログ的な評価にあまり関心がないんです。

 僕も二十数年前は、ラーメンを食べ歩いていた時代があったんですよ。その時に魚介系のスープと動物系のスープを混ぜるお店が出てき始めたんですが、メディアでラーメンのモードみたいなものがうたわれて、最新のラーメンはこれだ! って紹介されているものに僕は振り回されて、いろいろ食べに行ってたんです。でも、僕の中で優劣はなくて、“全部うまいな”って思った。そんな中で、“まだあのラーメンをおいしいと思ってんの?”みたいな風潮がちょっとくだらないなと感じて。

 今はそういう情報に左右されず、“自分がおいしいと思うものがおいしいものだ”ということだと僕は思っています」

 基本的に「よく寝られて、便通がよくて、ご機嫌な状態であること、天気がよいこと、誰と食べるかなど、身体と環境が整っていれば食べ物はおいしく食べられる」とマキタは話す。そして、もうひとつマキタ流の食べ方を教えてくれた。

自分の思い出に刷り込むことです。“どこで何を誰と食べたか”っていうのが頭に刷り込まれれば、そのストーリーがグルメになるから。たとえば、お腹が空いたときにふらっと入ったお店がすごくおいしくて、お店を出たら快晴で、その空をツバメがすーっと通って行ったとか。ひとりでラーメンを食べてるときに、後ろの席でカップルが別れ話をしていた。なんともいえない気分になって食べたそのラーメンがおいしかったとか。そういうのを僕は“背景食い”って言ってるんです。

 背景とか文脈っていうものが自分の中にちゃんとあって、身体が整っていれば、いろんなご飯をおいしく食べられると思います」