脳にまつわる様々なうんちく。これまで「常識」とされてきたことが、じつは思い込みだったかも? 脳神経外科医として、これまで1万人以上の脳の病気の患者さんたちを診てきた築山節先生による「脳の新常識」とは。

 

■脳の99%は使われていない

【間違い】
 
それは昔の話。今は、脳のどの場所がどう使われているかがわかってきています。それぞれの役割や使い方に差はありますが、役割に従って、きちんと使われています。

■脳細胞は毎日死んでいて、生まれたときから増えない

【間違い】
 
昔は、幼少期に脳が完成した後は神経細胞は死んでいくものと考えられていました。しかし、近年の研究で、脳の中枢神経系にも、新しい細胞を生み出す幹細胞があることがわかりました。

■年をとってから新しい家を建てたり、引っ越したりすると認知症になりやすい

【正解】
 
人の生活スタイルは、毎日、蓄積されてできあがっていきます。しかし、新築や引っ越しは、それがすべて新しくなるということ。若い人は対応できても、高齢者は新しいことが多すぎると、ついていけなくなります。脳が「もういいや、これ以上は無理」と、新しい物事を受け入れるのをやめてしまうのです。高齢になってからは、少しずつ変化させることが大事。生活環境をガラリと変えたとたん、認知症になるケースが多いので、注意が必要です。

■お腹がすいているほうが頭がよく働く

【正解】
 
食事をとると代謝が進み、身体や頭の熱を冷やそうとして機能が下がるので眠くなります。時間がたってくると血糖値や身体の働きが安定してくるので、脳もよく働くのです。つまり、いちばん安定しているのが食事前ということ。

■頭が疲れたら、甘いものを食べるといい

【間違い】
 
脳にすぐ効く特効薬はありません! 脳はブドウ糖をエネルギーにしていますが、ブドウ糖を摂取してもそれが直接的な効果を及ぼすわけではないのです。甘いものが効く人は、それがその人にとってのご褒美になっているから。

■耳が遠くなって短気な人は認知症になりやすい

【どちらも】
 
老人性聴力障害になると側頭葉が萎縮してきます。使わなくなると脳は萎縮するので、認知症のリスクが高まります。耳が遠くなったと感じたら、すぐに補聴器を使用したほうがいいでしょう。ただし、「最近、おじいちゃんの耳が遠くなって怒りっぽい」からと言って、それが認知症だとは限りません。怒っているのは、正確な情報が入らず話が理解できないから。ゆっくりとわかるように話していくことで、イライラや不安は解消されていきます。

<プロフィール>
築山節先生
日本大学大学院医学研究科卒業。医学博士。公益財団法人河野臨牀医学研究所附属北品川クリニック所長。脳神経外科の専門医として数多くの診療治療にたずさわり、’92年、脳疾患後の脳機能回復をはかる「高次脳機能外来」を開設。著書に57万部のベストセラー『脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める』や最新刊『定年認知症にならない脳が冴える新17の習慣』など多数。

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