新恋人ができて「籍を抜きたい」と亡き夫の親に申し出たという、上原多香子

 上原多香子の夫だったET‐KINGのTENNさんが'14年に自殺して3年。その原因が俳優・阿部力との不倫関係にあったことが『女性セブン』で報じられた。

 なぜ、今ごろになって明るみに出たのか。

「上原さんはTENNさんの死後も、彼の姓である森脇を名乗っていました。しかし、新恋人の脚本家・コウカズヤさんとの熱愛が今年の5月に発覚すると突然、彼女が“籍を抜きたい”と言い出したんです。彼女の態度の変化に怒った遺族が、TENNさんの遺書を公開したようですね」(スポーツ紙記者)

“籍を抜く”というのは何を意味するのか

『弁護士法人・響』の西原和俊弁護士によると、夫が亡くなったからといって、義理の両親との関係がすぐに切れることはないという。

「夫が亡くなると、妻との婚姻関係はなくなりますが、戸籍はそのままです。復氏届を提出すれば、結婚前の戸籍に戻って旧姓を名乗れますし、分籍届を提出して、まったく新しい戸籍を作ることもできます。

 ただ、それだけでは夫の両親との関係である姻族関係は消えません。関係を絶つには姻族関係終了届を提出する必要があります」

 聞き慣れない言葉だが、姻族とは要するに婚姻によってつながった親戚のこと。姻族関係終了届の提出は“死後離婚”とも呼ばれる。

「姻族関係終了届が提出されるのはまれです。提出件数は'15年で2700件。'05年で1700件だったので、提出件数は増加傾向にはありますが、それでも旦那さんに先立たれた奥さんの全体の数からすると、非常に少ないといえるでしょう。

 基本的に、姻族関係終了届は、知らない方も多いので出されないことが多いです。夫の兄弟や両親と折り合いが悪く、きっぱり縁を切りたいと考えて出す方が多いと思います」(西原弁護士)

 新たな人生を踏み出すための制度ともいえるが、トラブルになることも多い。

 男女問題専門家の露木幸彦氏は、届けが出されるのは生前から夫との関係が悪化していた場合が多いと話す。

「夫が浮気をしていたり、お金を使いこんでいたり、妻や子どもに暴力をふるっていたりしたケースですね。そのため、生前の夫に対して恨みを持っていた場合が多いです。また、遺伝子や家庭環境の問題もあります。だいたい、父親と息子の性格は似ていますから、亡くなった夫と似たような性格の両親の面倒を見ることに抵抗を覚えてしまうんですよ」

 介護問題が絡むケースも増えてきている。

「夫の両親の介護をするのが嫌だからという理由で離婚する“介護離婚”も多くなっていますからね。夫のことが好きでなくなっていれば、その両親の面倒を見るのも嫌でしょう。“亡くなった夫の両親の面倒を見てえらいね”というほんわかしたものではなく、殺伐とした雰囲気が待っていますから」(露木氏)

 とはいっても、姻族関係終了届を提出するのは簡単なことではない。周囲の目が気になるからだ。

「夫の両親や親戚などから陰口をたたかれるのが嫌な方や、夫の両親と縁を切ることに耐えられない方は踏みとどまることが多いと思います。届けを出して、縁は切るけど人間関係は続けるというわけにはいきませんから。でも、姻族関係終了届は、妻が単独で出すことができるんです。夫の両親に通告する必要はないんですよ」(露木氏)

 それでも後で義理の両親ともめることになるかもしれない。メリットとデメリットを見極める必要がある。

「メリットは、扶養義務から解放されることです。扶養義務は、大きく2つに分かれます。ひとつは、自分の子どもや配偶者に対する生活保持義務。自分の妻や子どもに自分と同じレベルの生活を送らせなければならないというもので、重い義務です。

 もうひとつは、義理の両親や兄弟に対する生活扶助義務。生活保持義務とは別で、自分に余力があれば助けるという程度の義務です。それでも嫌なら、姻族関係終了届を提出するしかありません。分籍届や復氏届では、夫の戸籍からは抜けますが、姻族関係は消えませんからね」(西原弁護士)

 区切りをつけることで、その後の人生を自由に生きられるというのもメリットのひとつだ。しかし、提出するとなると、精神的なハードルは高い。

「義理の両親に“あなたたちとは付き合いたくない”と言うようなものですからね。困ったときに頼る人をなくすこともデメリットです。

 例えば、もしお金で困ったときに、義理の母親が裕福であれば頼ることができます。届けを出すと、それができなくなってしまいます」(西原弁護士)

トラブルに巻き込まれやすい“死後離婚”

 人間関係で面倒が起きることは覚悟する必要がある。

「生前に夫の両親と同居していたり、身の回りの世話をしていたのであれば、義理のお兄さんなど、誰かが代わりをしなければなりません。その場合、引き継ぎをする必要がありますが、相手の理解を得て任せるのは難しいです。むしろ、生前に“あの嫁には介護は任せておけないな”と陰口を言われているぐらい仲が悪いほうが話を進めやすいかもしれません」(露木氏)

 生前、夫の両親から金銭や土地などの援助があったりすれば、関係解消は言い出しにくいだろう。“死後離婚”にトラブルはつきものだが、上原多香子のケースは特殊だ。

 彼女は、名前を旧姓に戻したものの、義理の両親との関係は切れていない。つまり、姻族関係は継続しているが、夫の戸籍から抜けた可能性が高い。

「姓を戻したのであれば、復氏届を出したということで間違いないと思います」(西原弁護士)

 上原の問題が明るみになったのは、TENNさんが亡くなった3年後に彼女が“籍を抜きたい”と言ったことに遺族が腹を立てたからだ。トラブルに巻き込まれやすい“死後離婚”は慎重に行動しなければならない。こうした場合、どうすれば遺族の怒りを買わずにすむのか。前出の露木氏は籍を抜いたり姻族関係を解消するなら夫が亡くなったときにするべきと指摘する。

「そうでないなら、再婚するまで夫の姓を残して。新しい人と再婚すれば戸籍からは抜けます。わざわざ、相手の両親の怒りを買ってまで抜ける必要はありません。ただ、上原さんのように30代で夫と死別するというケースはまれですので、こういう事態は起こりにくいです」

 新しい人生に踏み出すのは簡単なことではない。