夫となり父となった東出昌大(29)。子どもの話になると目尻を下げ、笑顔を見せる――。
東出といえば、前クールのドラマ『あなたのことはそれほど』で不倫した妻に嫉妬狂いする夫を演じ、その“怪演”が話題になったばかり。
「民放のドラマを1クールしっかりやるというのが久しぶりだったんですが、配役のバランスも絶妙で、反響がすごかったですね。道を歩いていても急に役名の“涼太”って呼ばれたりして(笑)。テレビってすごいなってあらためて思いました」
そんな彼がまたもや“怪演”を見せると話題の映画が『関ヶ原』だ。タイトルどおり、天下分け目の合戦を描いた大作で、東出は西軍として参戦する小早川秀秋を演じている。
東軍に寝返り、いわゆる“裏切り者”として語られることの多い小早川。だが、今回は“義を貫こうとする武将”として描かれる。
「小早川って小柄で華奢で愚鈍で色白のナマッチョロイ男の子っていうイメージがあったんです。僕はこのタッパ(身長189cm)だけでも大きい。だからお話をいただいたときは正直驚きました。でも台本を読んだら“そうきたか”って。そこにはこれまでとは違う小早川が描かれていたんです」
出演オファーから撮影に入るまで数か月。その間、文献を読み込むなど下準備に勤(いそ)しんだ。
「合戦絵巻にはよく出てくる小早川も、彼について専門的に描かれている本が“これだけか”っていうくらい数冊しかないことに驚きました(笑)。でも、その限られた情報の中でも僕の小早川像というものがどんどん塗り替えられていって。新しい彼の姿に期待していただければ!」
“この夏の勝負を賭けた作品”と意気込む東出だが、そうなるのも無理はない。彼は大の歴史好きとして知られ、博識ぶりには驚くばかり。
「もう“歴史好き”の粋を超え、週刊女性さんの読者の方からしたら、煙たいくらいマニアなので(笑)。槍同士で(突くのではなく)叩いたり、母衣(※)が出てくるとか、撮影でもマニアックな部分を見ては喜んでいました」
そんな彼も“昔は歴史が大嫌いでした”と意外な一面も。
「社会や歴史の授業を毛嫌いしていましたね。父親が歴史好きだったんですが、1度“なんで歴史なんて勉強しなきゃいけないの? 昔のことじゃん”って言ったことがあって。そしたら“バカか!”って言われたのを覚えています(笑)」
そこから脱却したきっかけは、父親が愛読していた書籍だった。
「20歳前後かな。ちょうどそのころ、今は亡き父の病気が発覚したときでした。父は日ごろ何を考えているんだろうって疑問に思って、父の書棚にあった司馬遼太郎とか藤沢周平作品を手にとってみたんです。本を読んでいくうちに、“あぁ、これはドラマなんだな”って。そこには今と変わらない人間の営みやドラマがあって、日本を揺るがす土壇場においてもすごい人間くさいことを言い合っていたりしていて。そういうところに惹かれ、どんどん好きになっていきました」
父親からたくさんのものを受け継ぐ中で、“話し方”についても教えがあった。
東出の言葉遣い、話し方はとても丁寧で優しく、思わず引き込まれる。その旨、本人に伝えると――。
「いやいや、畏れ多いです。もともと剣道をやっていて、父も剣道の師範だったんですが、“ほかの先生と話すときにしっかりしなさい”って幼少のころからよく言われていました。今もこういった受け答えのときには言葉遣いに気をつけますが、友達と会えば“マジで”とか“~じゃん”とか普通に言ったりもします」
そんな砕けたところも見てみたい!
「入り口を間違えたのかな(笑)。朝ドラの『ごちそうさん』のときに堅く入っちゃったからもう後戻りできないというか……。今、急に砕けて(今回演じた)小早川の影響で“ご乱心”って言われても困っちゃいますからね(笑)」
※母衣…鎧の背につけられた布のこと。流れ矢を防ぐものとして用いられた
■冬より夏が好き!
「夏を乗り切る方法? 逆に教えてもらいたいです(笑)。でも僕、暑いのが好きで。夜がすごく気持ちいい季節じゃないですか。ハイボールを飲んだり、焼酎のソーダ割りもすごくおいしいので、暑さにめげず“暑い!”って夜に大声出して飲むのが、またいいんじゃないかなって思います」
<出演情報>
映画『関ヶ原』
出演/岡田准一、有村架純、平岳大、東出昌大/役所広司ほか。
8月26日(土)全国公開