その家の周辺住民は、ここ数か月、満足に寝ていない。
「自宅で安眠できなくなったので耳栓を買いました。悔しいですよ。あの母娘が引っ越してくるまでは静かな住宅街だったのに……」
と近所の住民は話す。
神奈川県小田原市で騒音などのご近所トラブルを注意しようとした住民男性Aさん(47)に車で突っ込んだとして、県警小田原署は18日、殺人未遂の疑いで無職・小松徳子容疑者(65)を逮捕した。
同県警によると、17日午後11時10分ごろ、自宅前の駐車場で車両正面に立っていたAさんに向けて車を発進させ、衝突後にボンネットに乗せたまま車両を前後進させて殺害しようとした疑い。男性は脛とひじに打撲傷を負った。
「助手席には35歳の娘が乗っていた。昨年10月、都内から引っ越してきた母娘は近隣住民とトラブルになっていた。小松容疑者は男性に接触した事実を認めつつ“殺意はなかった”と容疑を否認している」(全国紙社会部記者)
トラブルのきっかけは風鈴とみられる。複数の近隣住民によると、今年5~6月ごろ、賃貸の一軒家で暮らす小松母娘は2階ベランダにいくつも風鈴をぶら下げ、四六時中、チリンチリンとうるさかったという。
住民が注意したところ母娘は逆ギレし、風鈴は最高10個まで増え、夜中や明け方に大音量で音楽を流すようになった。'90年代に大ヒットを飛ばした『My LittleLover』の楽曲ばかりだった。
「工事現場で何かをハンマーで叩くような音が聞こえてきたこともある」と前出の住民。
奈良県平群町では'05年、大音量で音楽をかけて「引っ越し、引っ越し」と布団をはたいた“騒音おばさん”が逮捕されており、小松容疑者は“新・騒音おばさん”になる。
周辺では夜間、母娘に注意した住民宅への投てき事案など(“嫌がらせ事件”マップ参照)が連続発生。大家さん宅や、近隣住民と立ち話しただけの家も狙われた。
「自宅敷地内にペットボトルを投げ込まれました。最初は1個、次々と増えて最高4個まで。商品名のフィルムをはがし、きれいに洗ってあったので通行人のポイ捨てではない」と近所の女性は話す。
被害男性Bさん(40)は次のように証言する。
「うちは7月20日ごろ、玄関にサバのみそ煮が投げつけられていました。ドアに煮汁がつき、しばらく生臭さが消えませんでした。すぐに防犯カメラを設置すると、7月23日未明、小松家の娘がうちに近づく映像が撮れていたんです」(Bさん)
映像を確認すると、深夜2時すぎ、小松家からジャージー姿の女性が周囲をうかがいながらペットボトルのようなものを持ってBさん宅にゆっくり近づき、カメラの死角に消えた後、足早に自宅に戻る姿が映っていた。わずか1分弱。躊躇のない動きだった。
「油がまかれていました。しかし犯行の瞬間は映っていないんです。警察に相談したら“証拠がない。現行犯じゃないと捕まえられない”と言われました」とBさんは話す。
別の映像では、向かいの家に何かを投げる小松容疑者の娘らしき女性が映っていた。しかし、サバみそや生卵など洗い流せるたぐいは被害届の提出を拒まれたという。
「向こうは母娘とも無職で時間がある。こっちは仕事もあるし、母娘の動向を完全監視はできない」(別の住民)
母娘は強気だった。夜間に不審な動きを住民に見とがめられても娘は「ただ歩いているだけ。何が悪いんですか」と開き直った。年配の女性は小松宅近くの路上で「目障りだから、そんなところに立ってないで!」と怒られた。ピザ配達の男性は友人と会話中に小石を投げつけられた。
そして小松容疑者の娘は11日、近隣宅に生卵を投げつける現場を通りがかった女性住民に目撃され、羽交い締めにされた。娘は「離して! 関係ないでしょ!」と女性の腕をひっかき、小松容疑者は金色のガラケーでその様子を撮影していたという。住民らは警察に通報したが、生卵は洗い流せるためか事件化できなかった。
「小松容疑者はメガネ型の拡大鏡をかけていて見張り役。実行役は娘です。母娘は室内から“くたばれ! 死ねよ!”と大声で叫んだり、警察が来ても自宅から出ようとせず、“証拠あんのか? 令状(逮捕状)持ってこい!”と怒鳴る始末。母親の逮捕後、娘は被害者Aさんに対して室内から“当たり屋死ね!”と叫んでいたからひどい。マスコミが取材に来ても大音量の音楽を流しました」(前出の住民)
Aさんが轢かれる前日、騒音を注意しようとしたBさんもまた小松容疑者の運転する車に轢かれている。運転席の窓ガラスをコンコンと叩くと急発進し、後輪でビーチサンダルをはいていたBさんの足の甲を踏みつけた。これも事件化しなかった。
Aさんが振り返る。
「小松容疑者は無表情でした。助手席の娘は怒っている様子でした。近所のみなさんが車を取り囲んでくれましたが、娘は母親に“行け(轢け)!”と指示していたそうです。母親は娘の奴隷みたいな感じ。償いより、とにかく母娘には退去してほしい」(Aさん)
8月24日夕、外出した小松容疑者の娘を直撃した。身長150センチ台のやせ型でマスク姿。近くで見ると目のパッチリした清楚系美人だった。
─お母さんは反省していますか。
「……」
─近所の人はあなたたち親子を怖がっています。
「……」
─反論があれば聞かせてください。
「……」
最寄りのバス停まで約16分間、口を開かず、目を合わせようともしなかった。
複数の住民が「まだあの家には娘がいる。事件は終わっていない」と口をそろえる。何かされるのではと神経をすり減らす生活が続く。