緊急逮捕された増田愛梨奈容疑者(Facebookより)

 今年1月、地元で行われた成人式の式典に出席した女子大生は妊娠6〜7か月目を迎えていたはずだが、周囲の人間が彼女の体形の変化に気づくことはなかった。

「最後に会ったのは半年前。以前のアルバイト先で2〜3か月、同じところにいましたけど、本当に普通の子、という印象しかありません」

 アルバイト仲間だった40代の男性は言葉少なに、そう明かす。

 女子大生は今年3月、誰にも打ち明けることなく、ひとりで隠れるように出産したのだろうか。嬰児をポリ袋に詰め、実家近くの茶畑にポイ捨てした。遺体は女児で、へその緒が残されていたという。

死体遺棄現場の茶畑は草木で鬱蒼としている

 8月17日午前11時ごろ、静岡県牧之原市の茶畑付近で、近所に住む男性がポリ袋を発見。袋を開けたところ髪の毛が見え、110番通報したことで事件は明るみに出た。

 18日午前0時45分、静岡県警は、静岡県立大学の看護学部に通う増田愛梨奈容疑者を死体遺棄容疑で緊急逮捕した。

 遺体発見現場の周囲は静かで、「田舎だけどいいところでしょ」と行き交う人が口をそろえる住宅地。当日の様子を、近くの和菓子店店員が、

「付近は立ち入り禁止になって、(取材の)ヘリコプターも飛んでいました。理由のわからない子どもたちは、ヘリコプターにはしゃいじゃってね」

 と振り返る。

 近所の住民は、

「ここは一応お茶畑だけど、手入れとかしていないから、草が伸び放題。隠しやすいとか思ったのかもしれないね」

 と推測する。

 そして、

「報道では、異臭がしたとか言っていたけど、私は気づかなかった。ずっとにおいがすれば気づくはずだけど、そんなことなかった」

 増田容疑者は地元の小中高を卒業し、県立大学に進学。実家を離れ、キャンパスに近いアパートに、姉と2人で暮らしていたようだ。

 死体を遺棄したのは実家周辺で、容疑者の両親は40年近く前に開発された新興住宅地に約30年前から住んでいたという。

「家族は、父方のおばあちゃんとご両親。子どもは3人で、男、女、女。逮捕された娘は末っ子です」

 と明かすのは古参の住民。

「みんないい人、いい家族。お父さんは寡黙な人だけど、信用が厚くて、町内会の会長とかも任されるような人。お母さんは医療関係の事務をしていて、おとなしい感じの方。ご両親とも優秀な方で、頭がいいです。

 お母さんと娘さんが一緒にバス停まで歩いている姿も見ましたよ。お母さんは近所の人にも名前を呼んであいさつをしてくれます。まわりの全員と仲よくしているかどうかはわからないですけど、ご近所付き合いはしているほうだと思いますよ」

 と付け加えた。

容疑者が姉と住んでいたアパートに家宅捜索が入った

 2階建ての実家は、すべての窓のカーテンが閉められていた。それでも長年住んでいる隣近所を騒がせたことを詫びるために、両親は律義にも、近所に電話をかけたという。

「あいさつの電話、というんでしょうか。お父さんはひと言、“言ってくれれば……”と悔やんでいましたね。“なんで相談してくれなかったんだ……”って。

 お母さんは泣きながら、“とにかく頑張って元の生活に戻さないと”って言っていました。いい家族だと思います、本当に。起きてしまったことは取り戻せないけど、みんなこれからだと思って、前を向いて生きていくしかないですからね」

 一家を知る別の住民は、涙ながらにそう明かした。

 親に相談しなかった増田容疑者だが、昨年6月30日、ツイッターで《ずっと吐き気と頭痛と倦怠感が収まらないんだけどなにこれ》と驚いている。さらに同日《妊娠祝いよこせよ》と追記。翌7月1日には《だれでしょう》と、父親を示唆するようなツイートをしている。これらが妊娠初期のつぶやきであれば、その後、堕胎を決断する時間もあったはず……。

「いやぁ、誰も気づかなかったのかね。周りにいた人が気づかないっておかしいでしょう。頭がいいからって相談をしないのはだめ。親はダテに長生きしてないんだから、知恵をもらえばよかったのに」

 と、近隣の主婦は首をひねる。同居していた姉にも、たまに帰省していた実家の両親にも、誰にも感づかれることなく妊娠生活を送り、出産を終え、増田容疑者はすべてをなかったことにできるとでも思ったのだろうか。

 遺棄現場近くの住民は、

「20歳で子どもを産むことは恥ずかしいことじゃないわよ。ちゃんと育てればいい。でもね、今回は捨てたっていうことが問題だよ。しっかり罪を償ってこれからちゃんと生きていってほしい。悪いことを繰り返すようじゃだめよ。ただでさえ親に迷惑をかけているんだからね」

 たとえ親には相談しにくいことでも、行政の窓口もある。生まれた子を預けることができる赤ちゃんポストだってある。看護という命に向き合う学問を専攻していたにもかかわらず、大切な小さな命をゴミのように捨てた。

 罪を償い、その負い目と生涯向き合って生きることが、赤ちゃんへの罪滅ぼしだ。