現状を把握して、ムダな出費をあぶり出す──。家計管理の王道ともいえる家計簿。でも実は“毎日記録する”という労力のわりに成果が出ていない人が多いとか。

「家計簿をつける本来の意義は、記録を見て家計を分析し、改善して貯蓄につなげること。それなのに、多くの人は家計簿をつけることにエネルギーを注ぎます」

 と話すのは、FPの風呂内亜矢さん。

「まじめな人ほど、細かく費目分けして、数十円の狂いもないようにきっちり計算しがち。その作業が大変すぎて挫折するケースがほとんどです。家計簿をつけることだけに満足して、その先の支出の分析をしないため節約につながらない人も多い。いずれにしろ、“貯まる”というゴールにたどりつけないのです。その結果“私はこんなに頑張ったのに貯められない”と思ってしまうのも家計簿の落とし穴

 家計簿をつけたからといってお金が貯まるわけではありません。貯蓄が増えるまでのステップは以下の通り。

 1、家計データを記録する
 2、データ記録を継続する
 3、たまったデータを分析する
 4、改善策を検討・実行する
 5、やっと貯蓄できるようになる

 ここで貯蓄を実現するために必要なのは4以降。3までの段階では、どんなにコツコツまじめにデータを記録しても、貯金を増やすことには貢献していない。むしろ1~3は手抜きをしてもいいステップなのだそう。

 また、まじめな人は「食費は家計の15%までに」など、一般的な理想の家計割合を守ろうとして、「外食はダメ、自炊しなきゃ」と自分を追い詰てしまう傾向が。

「そもそも家庭によっても個人によっても、何にお金を使うかは異なります。例えば、おしゃれが好きでコスメは最新のものをそろえたいとか人それぞれこだわりがあるはず。自分が使いたいものに使うのはOK。自分にとって重要でないもの、意識せず使ってしまっているものを見直して支出を抑える、ということが大事。そこをチェックするのは、家計簿でなくても、もっと簡単な方法がいろいろあります」(風呂内さん、以下同)

 めんどくさい家計管理は今すぐ卒業! ムダを省き、ムリをせず、ラクにできることだけやる、風呂内流の“〇〇だけ”家計管理。その方法を詳しくご紹介しましょう。

貯まる人は上手に“手抜き”しています

【1】特定費目をチェックするだけ!

 貯蓄をするには、ムダな支出を抑えるのが第一。ムダをチェックするのが家計簿のひとつの役割だが、

「特定費目だけつければよし。私はシステムエンジニアをしていたとき、カフェや自動販売機などを何も考えず利用していて、月1万円ぐらいかかっていました。そこで水筒を持参したり、30円のドリップパックのコーヒーに替えたところ、月1000円に。つまり月9000円、貯蓄を増やせたのです」

 “使いすぎているかな”と気になる費目、減らしたい費目だけ、使った金額をメモする。これならラク。家計簿よりずっと手間がかからず、それでいて、1点集中でムダ遣いがあぶり出されるので、それを見るだけで減らそうという気持ちが働き、結果もすぐあらわれやすいそう。

【2】固定費を見直すだけ!通帳を見るだけ!

「支出を抑える効果が高いのは、通信費や保険料など毎月かかる固定費。1度見直せば節約が自動的に継続されます。固定費の見直しのためにもおすすめしたいのが、通帳を見る習慣。じっと眺めるだけで、『やっぱり保険料が高すぎる』とか、解約を忘れたスマホの有料オプションに気づいたり、いろんな発見が。家計簿をつけなくても、家計の収支がだいたいわかります」

【3】カードを使い分けるだけ!

 費目ごとの“袋分け”の現代版ともいえる役割を果たすのが、カードの使い分け。

先にお金を入金しておくプリペイドカードを利用すれば、カードで予算管理ができます。例えば食費などの生活費が週1万円の予算なら1万円を入金し、その範囲でやりくり。さらにカードで支払うとポイントが還元されるという大きなメリットが。イチオシはLINE Payカード。還元率が2%と最も高く、JCB加盟店ならどこでも使えます」

【4】口座を分けるだけ!

 確実に貯金する方法として、風呂内さんが推奨するのは、口座分け。

「給与振り込み用の口座とは別に貯蓄用の口座を設ける。毎月決まった日にちに一定額を入金するようにしておけば、手間がかかりません。ただし、振り込み手数料がかかると、実質目減りするので注意を」

 給与振り込み口座から貯蓄用口座に所定日に自動で振り込まれる手続きをしておくと毎月銀行に行く手間が省ける。その場合、振込手数料が発生しない金融機関を選ぶとよい。

【5】慣れてきたら短期・中期・長期で貯蓄を分類!

 お金を貯めるには、目標をもつことが大事だという。

「といっても、漠然と“老後資金のため”という理由ではモチベーションが上がりません。短期、中期、長期、3つの目標をもつのがおすすめ。そして、貯蓄をそれぞれ、分けると管理しやすくなります。短期は旅行や帰省など1年以内ぐらいに使うための貯金。中期は子どもの大学資金や住宅ローンの繰り上げ返済など数年後のための貯蓄。長期はリタイア後の資金。短期はすぐ引き出せる普通預金や1年以内の定期預金などに。長期用には確定拠出年金など長い目で見て増やせる可能性があるものに預けるのも一案です」

【6】アプリを開くだけ!

 Money Forwardなど家計簿アプリは、レシートを読み取ってデータ化してくれる。クレジットカードや銀行口座と連携して、家計の分析も可能。使いこなせば、家事の合間にアプリを開くだけで家計管理が行える。

 ここに紹介する、“〇〇だけ”管理術を、すべてまじめに取り組む必要はない。「とりあえず試して、合わないと思ったらやめればいいのです。自分にとって効果のあるものだけをチョイスして」。

<教えてくれた人>
風呂内亜矢さん
SE、不動産会社の営業を経て2013年にFP(ファイナンシャルプランナー)として独立。テレビ、新聞などでお金に関する情報を発信。著書に『その節約はキケンです』(祥伝社刊)など多数