昭和のテレビ界、映画界で大活躍した植木等を、彼の付き人兼運転手だった小松政夫が手がけた原案をもとにドラマ化。“明るい昭和”を象徴する植木との師弟愛を通した人間模様を、笑いと涙で描く。その舞台裏について、プロデューサーが激白!
植木等への愛が生んだ“のぼせもん”ドラマ
昭和を代表するエンターテイナーの植木等と、植木の付き人兼運転手だった小松政夫の師弟愛の物語が登場。師弟の絆、家族愛、仲間同士の友情だけでなく、『スーダラ節』はじめ、誰もが愛した昭和のヒット歌謡、劇中で再現する人気バラエティー番組のコントなども楽しめる斬新な作りになっている。原案は小松政夫、植木等を山本耕史が演じる。
制作の経緯について、佐野元彦プロデューサーは、こう話す。
「私にとって、植木さんは“レジェンド”。いつか植木さんと父上の物語をドラマ化したいと考えていましたが、決め手に出会えず、温めていたんです。ところが昨年、私の手がけた時代劇に小松さんの出演が決まり、エッセイを読ませていただいたんです。そして、植木さんと小松さんの師弟愛を知り、感銘を受けました。植木さんの没後10周年の今年、ぜひ作品化しようと決めたのです」
問題は、植木を誰に演じてもらうか、だった。
「植木さんの役は、スポーンと明るく抜けていなければならない。そして、何より歌って踊れてギターが弾けること。この条件を満たす俳優はいるだろうか? と考えたら、意外と身近にいました。時代劇で何度もご一緒している山本さんです。
山本さんは、今の俳優の中でいちばん殺陣(たて)がうまいと思っていますが、今回は刀を振り回さない役(笑)。かわりに歌って踊ってギターも弾ける多才ぶりを、テレビで初披露してもらいました」(佐野P、以下同)
カツラに眉毛、ブレザー姿で、人気絶頂期の植木を模しているが、制作陣も山本本人も、モノマネにならないよう、バランスをとりながらの役作りになった。
「演者の山本さんの魅力も出なければ、ドラマとして楽しくありません。モノマネでなく、試行錯誤して演じてもらいました。本作は、植木さんへの愛から生まれたもの。キャストもスタッフも植木さんへの敬意をもって臨んでいます」
ただ、『スーダラ節』、『無責任一代男』などの歌に関しては、山本に声の出し方や歌い方を植木に寄せてもらったという。
「植木さんが世界で初めて開発したという、歌いながら笑うという芸も再現してもらいました(笑)。小松政夫さん役の志尊淳君は、“ドロ臭さ”が決め手。売れる前の小松さんの人間としての青さ、情熱(のぼせもん)がストレートに出せると思ったんです」
ドラマ冒頭、語り部で小松が登場するのにも注目。自身がブレイクした淀川長治さんの扮装で、愉快に物語をナビしていく。
小松&伊東のコンビで『電線音頭』が登場!
懐かしの名曲を楽しんでもらうため、クレージーキャッツのメンバー役にもこだわり、楽器のできる俳優と、演じられる音楽家に依頼した。
「ハナ肇さん役は、パンクバンド歴がある山内圭哉さん。同じドラムスでもパンクとジャズでは全然違うということで猛特訓。谷啓さん役の浜野謙太さんは、ミュージシャンとしても活躍し、トロンボーンが圧倒的にうまい。桜井センリさん役の小畑貴裕さんには、劇中で使う楽曲の楽譜おこしなど裏方としても尽力してもらいました。音楽家の小畑さんですが、コントにも挑戦しています」
今作のいちばんの魅力は、テレビのエンターテイメント番組勃興期のエネルギーと、昭和の人間くさい暮らしぶりを、“ガシャン”とくっつけていること。
「私は“ガチャコンの魅力”と呼んでいるのですが、両方をまじり合わせるのではなく、くっつけている。その真ん中にいたのが、植木さんです。植木さんの人生と、その時代の素晴らしさをご堪能ください」
第2話(9月9日放送)では、植木は、付き人になった松崎(のちの小松)がまだ心を開いていないことを感じていた。一方の松崎は、植木のバイタリティーに圧倒される日々を過ごしていたが、突然、母(富田靖子)が博多から上京し──。
「歌やコントを楽しんでいる中で、自然にドラマを見て、見終わったときに、親子の愛や仲間の大切さなどを感じていただければ」
サプライズもある。小松と、植木の父役で出演している伊東四朗による名コンビが復活。懐かしのヒット曲『電線音頭』を披露する。いつどんな形で登場するかは、見てのお楽しみです!