氷川きよし  撮影/廣瀬靖士

「うわ〜、すごい! ありがとうございます」

 9月6日に誕生日を迎えた氷川きよしと、40本の真紅のバラ。

「あっという間ですね。40年、健康で生きてこられたことに心から感謝しています。ちょうど折り返しというか、あと倍で80歳じゃないですか? やっぱり、悔いない人生にしたいなと思いますね」

悩まないと成長はない

 40歳といえば“不惑”。感慨もひとしおなのでは?

「もう、迷いはないです! というか、なくなりましたね。小さなことは全然気にしなくなりました。いつもナチュラルで、仕事でもプライベートでも、差のない自分でいたいなと思っています。若いときは“氷川きよしを作ろう”と、頑張りすぎたときがあったような気がします。もちろん、人間はやっぱり悩まないといけないし、悩まないと成長はない。また、人の中でしか成長はできないと思うんです」

 若いときは、誰もが“なめられたくない”と虚勢を張ってしまうものだが、

「自分を偉く見せようとか、カッコつけようとか、見栄を張ろうとか。全然必要ないと思うようになって、すごく楽になりました。お世話になった平尾昌晃先生も、先生のほうから“氷川くん、久しぶり! 元気? 頑張ってるね〜。偉いね〜”って、いつも声をかけてくださって。やっぱり、自分もそういう振る舞いができる人になりたい」

 年齢を重ねるほど、向上できる人生でありたい――。穏やかにそう語る。

「若いときって、それだけで許されることもありますよね。僕も“若いのに演歌歌ってて、偉いね”と、よく言ってもらってました。でも、僕だっていつまでも同じ場所にはいられない。やっぱり年相応に変わっていかないと。もちろん、変わってはいけないものはココ(胸の中)にちゃんとありますよ」

氷川きよし  撮影/廣瀬靖士

 40本のバラには“真実の愛”の意味があるようだけど?

「素晴らしいですね! 僕、思ったんですけど、結局、この世の中でいちばん大事なのって、愛。愛しか信じられない。愛がすべてだと思うんです。お金は血液と同じで、まわっていくための手段でしかなくて。もちろん、必要ですよ(笑)。でも、そこに気持ちがなかったら寂しいし、孤独だと思うんです。人間として、嫌なことや厳しいことも言ってくれる人が、(デビューして)18年間ずっと周りにいてくれていることは、本当に愛情だと思っています」

自分が亡くなっても残る作品

 では、30代でやり残したことがあるとしたら?

「結婚? やっぱり、両親に孫の顔を見せたいし、自分も子どもが欲しい。一方で、周りの人に恵まれているから孤独は感じないし、ひとりでいるのが楽だったりもして。たぶん、このまま10年くらい時間がたっちゃうんだろうなぁ」

 30代最後の日にリリースされるのは、今年の勝負曲である『男の絶唱』D・E・Fタイプ。

「『男の絶唱』は10年後、20年後も歌える作品だと思っています。だからこそ、1年かけて大切に歌って、多くの方に届けられるようにしたくて。ただ、カップリングにはすごく悩みましたね。

 それぞれ、全然違うタイプのものにしたかったので。オーバーかもしれませんが、自分が亡くなった後も残っていく作品ですから。キチンと責任をもってやる使命がある。最近、あらためてそう感じています」

 大人の演歌歌手としての自覚と誇り。もう貴公子やプリンスではないのかもしれない。だって、氷川きよしは、歌謡界の“要”なのだから――。

9月5日に発売された『男の絶唱』 ※記事の中でCDの写真をクリックすると、アマゾンの購入ページにジャンプします

<リリース情報>
『男の絶唱』
カップリングは【D】『酒場のひとりごと』、【E】『芝浜恋女房』、【F】『片恋のサルサ』(写真はFタイプ)各1204円。発売/日本コロムビア