『ダンケルク』●監督:クリストファー・ノーラン/出演:フィオン・ホワイトヘッド、ハリー・スタイルズ、ケネス・プラナーほか/1時間46分/アメリカ/ワーナー・ブラザース映画 2017年9月9日(土)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかで全国公開中 (c)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

 戦争なんか、誰だって行かないほうがいいに決まっている。でももし、完全に安全な状態で戦争をバーチャル体験できるとしたら?

 この映画は、それを実現させてくれる。しかも殺し合いはナシ。第二次世界大戦の最中、フランスの海辺、ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍の猛攻をかわしながらいかに生き延び、戦場から脱出するかというサバイバル作戦だからだ。これをC・ノーラン監督はほぼCGを使わず描いている!

 若い兵士たちはなんとか船に乗り込もうと必死で頑張るが、爆撃を受けては海に投げだされてしまう。そして、そんな兵士たちを救おうと空軍のパイロット、海軍の指揮官、自らの意志で参加した民間船の一般市民たちが奮闘。観客は緊迫した戦場に放り込まれ、兵士たちと一体化したような感覚を味わうことになる。耳にはチクチクチク、と時計の針を思わせるノイジーな音楽が鳴り響き、絶望と希望が行ったり来たり。これがもう圧巻! 緊張感とサスペンスが押し寄せる、こんな映像体験は初めて。

 自己犠牲もいとわず団結したこの作戦は、いまも英国で「ダンケルク・スピリット」と誇らしげに語られている。映画はことさらドラマティックな展開を見せることなく、ひたすらリアルにクライマックスへと突き進むのだけれど、その中で光る彼らの“男気”には本当に惚れぼれ。

 そしてもうひとつ見るべき理由が。それはこの映画が“英国美男博覧会”だということ! これで俳優デビューしたワン・ダイレクションのハリーが埋もれるくらい、さまざまなタイプのイケメンが代わるがわる登場するから眼福だし「助かってほしい」と心から願える。全米大ヒットの理由はここにもあるはずだ!

文/若林ゆり