毎日のランチに自分へのごほうび、各種支払いなど。私たちの暮らしのニーズに、きめ細かく応えるコンビニ。1970年代に登場して以来、さまざまな企業が事業を展開、品ぞろえの強化に加え、チケット発券やATMの設置など異業種との提携も進めてきた。
そして近年では、『セブン-イレブン』、『ファミリーマート』、『ローソン』の大手3強への集約が進み、国内コンビニの9割を占めるまでに。地方を基盤とするローカルコンビニは大手への統合が進んでいるのが現状だ。
ただ、その火が完全に消えてしまったかといえば、それは違う。北海道に、地元民から絶大な支持を集めるコンビニがあるのをご存じだろうか? オレンジ色に白の不死鳥マークの看板が目印のコンビニチェーン、その名は『セイコーマート』。『コンビニ顧客満足度調査』で過去7回のうち6回も1位を獲得、地域密着型コンビニの雄ともいえる存在だ。
「北海道179市町村のうち、175市町村でグループ店舗を展開しています。食の品質には強いこだわりがあり、商品にはできる限り北海道産の原材料を使っています」
こう話すのは『セコマ』の広報担当者。
道産の牛乳、野菜、魚をふんだんに使った商品が多いということは、もう想像がつくはず。セイコーマートの最大の特徴は、とにかく“おいしい”のだ。
中間コストを切り安さとおいしさを両立
「北海道の各地に牛乳プラント、アイスクリーム工場、水産加工場、漬物工場などのグループ会社を持っているので、PB(プライベートブランド)商品の製造、物流、小売りを自社で行っています。中間コストを省くことで、高品質でもお手ごろ価格を実現しました」(セコマ広報、以下同)
例えば、人気商品である、少量でパックしたお惣菜。税込み108円という低価格で、キンピラゴボウや煮たまご、白菜漬けなどバラエティーに富んだ味がズラリ。複数買ってランチを楽しむ会社員あり、あと1品を求める主婦ありで、常に売り場は大にぎわいだ。
またアイス売り場は、PBだけでショーケースが埋まるほど。道産メロン味のアイスだけでも、ソフトやシャーベットなど複数の種類があるのがすごい!
ワイン棚も充実。’80年代から自社で輸入を開始し、幅広いカテゴリーのワインを、ワンコイン・500円を切る値段でそろえている。
「私ごとですが、ワイン好きの友達に“デイリーで飲むテーブルワインとしてなら、最高のコスパ”と言われたとき、とてもうれしかったですね」
そして真打ち、セイコーマートといえば絶対にはずせないのが、店内調理の先駆け『ホットシェフ』(※一部取り扱いのない店舗もあり)。約20年前から、できたてアツアツのフライドチキンや大ボリュームのおにぎりなどを、調理担当のスタッフが店内キッチンで作り続けているのだ。
「ホットシェフ目当てでいらっしゃるお客様も多い。道外からの観光客の方がわざわざ寄って、買われることもあるんですよ」
地域と共存しながら地元の発展を目指す
北海道では無敵のセイコーマートだが、道外では埼玉、茨城に一部店舗があるのみ。今後、全国展開の予定はあるのだろうか?
「今のところ予定はありません。いわゆる“3強”と呼ばれるコンビニさんたちと戦おうとは考えていません。それより、セイコーマートにしかない商品を、みなさんに好きになってほしい。私どもは、地元のお客様に足しげく通っていただける店づくりを目指しています」
ほかのスーパーやコンビニが撤退してしまった人口減少地域や離島に出店し、自治体と連携しながら住民のライフラインを支え、買い物難民の解消にもひと役買っている。
「われわれが北海道で頑張っていくには、地元の方と一緒に頑張っていく必要があります。過疎地の出店は、特に地域に密着しますね。アルバイト募集を回覧板で回してくださったり、イートインコーナーを町内会の会合で使ってくださったりと、住民の方の協力なしでは経営が成り立たないんです」
根底にあるのは、自分たちはあくまで、北海道の企業であるという思い。
「この土地では、進む高年齢化に向き合わなくては企業が存続できません。日常的に買いやすい価格の商品を、今後も提供していきたいです」
ちなみに店舗展開はなくとも、北海道の原料を生かして北海道で加工した商品を本州のスーパーに卸しており、また、北海道ブランドの商品を通販したりする計画はあるそう。北海道の強みを最大限に生かす姿勢は、ほかのローカルコンビニにもヒントを与えるのではないだろうか。
「おいしさを通して、北海道のよさを知っていただけたら幸いです。セイコーマートの味を、ぜひ1度お楽しみください!」