あなたの頭痛は片頭痛? 緊張型頭痛? それとも――。頭痛の種類を見極めてから対処しないと、命にかかわる危険性も! さらに市販の鎮痛剤をむやみやたらと服用していると、痛みから一生逃れられない身体になってしまいますよ。
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頭が重苦しい、ズキンズキンと痛む……。頭痛もちの人はもとより、そうでない人も、今の時季は頭痛を訴える人が増えるという。
「その原因は、気圧の変化にあるんです」
そう解説するのは、頭痛専門医の丹羽潔先生。
「梅雨どきに頭痛になる人は多いですが、9月も秋雨前線により長雨が続きます。さらに台風も発生する。雨や台風が近づくと気圧の谷ができて低いところに空気が集まり、やがて暖かい空気が上昇して空気中の酸素濃度が低くなります。そのため、簡単に言うと軽い酸欠状態に陥り、高山病のような症状が出るのです」
呼吸が苦しくなるほどの酸欠ではないけれど、脳に影響が及ぶという。
「酸素が少ないと肺の中は二酸化炭素が多くなります。二酸化炭素は脳に行くと血管を広げる作用がある。脳内の血管が拡張すると、痛み物質が出たり神経を圧迫したりして頭痛を引き起こすのです」
日本人に多い2大頭痛は、“片頭痛”と“緊張型頭痛”。
「このうち、特に気圧の影響を受けやすいのが片頭痛です。“気象病”のひとつともいわれ、雨や台風のときは症状が出やすい。一方、血行が悪くなることで頭部に痛みが起きる緊張型頭痛は、片頭痛ほどは天気の影響を受けません。とはいえ、気圧の変化によって関節にかかる圧が変わるため首にこりが生じ、やはり痛みにつながることは考えられますね」
痛いと、薬に頼らざるをえなくなる。頭痛もちの人ほど、“いつものことだから”と安易に市販の薬に手をのばしてしまいがち。
「例えば“今日はママ友とのランチ会があるから”など何か大事な用があるときに頭痛になると困るので、そんなに痛くないのに予防的に頭痛薬を飲んでしまう人が少なくありません。これを長期間、頻繁に続けてしまうと、やがて薬が効かなくなる危険性が。本来、人間はちょっとした痛みは感じないようにできているのに、薬を飲みすぎるとかえって痛みを感じやすくなるのです。
そのため、飲めば飲むほど頭痛が悪化する。これを“薬物乱用頭痛”といいます」
頭痛を治すつもりが逆に頭痛を引き起こす皮肉な結果に。また、「単なる頭痛だと甘くみていると、くも膜下出血や脳腫瘍など重篤な病気が潜んでいるケースもある」と丹羽先生は警鐘を鳴らす。
このように、ひと言で“頭痛”といっても、種類や原因はさまざま。それに合わせた対処をしないと、効果が得られないどころか悪化する危険性もあるのだ。自分はどのタイプの頭痛なのか、その正体を知って、それぞれの対処法を探っていこう!
持続する頭痛と吐き気は危険!
頭痛は約350種類もあり、大きく2つに分類される。
「ひとつは、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛など、頭痛そのものが病気の『一次性頭痛』。もうひとつは、くも膜下出血や脳腫瘍などほかの病気によって頭痛が現れる『二次性頭痛』。前述の薬物乱用による頭痛も二次性に入ります」(丹羽先生、以下同)
頭痛の8割以上は、一次性。
「中でも最も多い緊張型頭痛の特徴は、後頭部を中心に重苦しい鈍い痛みや、頭全体を締めつけられるような痛みが続きます。
肩こり頭痛ともいわれ、肩や首、頭の筋肉が緊張することで起こります」
片頭痛はズキンズキンと脈打つような強い痛みを感じるのが一般的な特徴。
「脳内の血管が広がり、血管に絡みつく三叉神経が刺激を受けることで痛みが起こる。リラックスすると血管は拡張します。そのため、週末にストレスから解放されたり、寝だめしたりしたときに片頭痛が襲ってくることがよくあります」
激痛の発作が数週間にわたって繰り返される群発頭痛も血管が広がることで起こる。
「目の奥の頸動脈に炎症が起きるのが原因と考えられ、激しい痛みに襲われます」
また、第四の頭痛と呼ばれるのが、大後頭神経痛。
「今回は紹介しておりませんが、一次性頭痛にあたるものです。後頭部にピリピリッとした痛みが走るのが特徴で、周期的に繰り返されます。これも気圧の変化に影響され、今の季節に症状が出やすい頭痛です」
脳内の出血や腫瘍などによる危険な二次性頭痛は、どう見極めるのか?
「これまで頭痛と無縁だったのに50代以降に急に痛みだしたという場合、くも膜下出血などの疑いが。頭痛や吐き気が持続するのも危険」
また、一次性頭痛も軽視してはいけない。ひどくなると仕事や家事が滞り、日常生活に支障をきたす。
「だからこそ間違った自己診断で間違った対処をしないこと。ここで紹介した症状は主なもので、違う症状が出る場合もあります。頭痛もちと自覚する人は、1度は頭痛指導医か専門医がいる病院で診てもらうことをおすすめします」
なお、わざわざ病院へ行くほどでもない一時的な頭痛の場合は市販薬でもよいという。
「市販薬はお腹にやさしく、早く効くので、たまに飲むのはOKです。ただし月に10日以上、服用しないこと」
2大頭痛との上手な付き合い方
【片頭痛】
「片頭痛は生活習慣病のひとつです」(丹羽先生、以下同)
ストレスをためず、バランスのとれた食事をとり、適度な睡眠をとる。それをベースに、片頭痛を招く誘因を避けることで改善できるという。
「例えば、雨の日に満員電車に乗ったら、すでに2つの誘因の地雷を踏んだことになります。これにストレスや睡眠不足が重なれば、一気に頭痛の引き金を引く可能性が。天候や生理は自分ではコントロールできないので、ほかの生活部分で、誘発する行動をできるだけとらないようにする。例えば“飲み会に誘われたけど、今日は生理だし、台風も接近しているので、まっすぐ家に帰ろう”とか。
ちょっと生活を律するだけで防げます」
誘因すべてを禁止するとストレスになるので、1~2個に抑える工夫を。
「お酒は血管を広げる作用があるので、ほどほどに。
特に赤ワインには血管拡張成分が含まれています。一方、コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには血管を収縮する作用があり、片頭痛の予防になります。ただし、飲みすぎるとリバウンドで血管が広がるのでコーヒーなら1日2杯程度に。
また、空腹になると血糖値が下がり、片頭痛が起こりやすくなります。どんなに忙しくても朝食はとりましょう」
それでも頭痛が起きてしまったら、どうすれば?
「簡単に言うと、広がった血管を収縮させることが痛みを抑えるコツ。頭部に血液を送っている頸動脈を冷やすと効果的なんです」
なお、薬は飲むタイミングが重要だとか。
「片頭痛は血管が広がってしまうと鎮痛剤が効きにくくなります。片頭痛に処方されるトリプタン系の薬(イミグラン、マクサルトなど)は、血管が拡張するのを止めるものなので、我慢できないほど痛くなってから服用しても遅いのです。
軽い痛みを感じたときに早めに飲むのがコツ。それでも痛いときはロキソニンなどの鎮痛剤を服用する。これが正しい飲み方です」
【緊張型頭痛】
血行が悪くなることで起こる緊張型頭痛は、家庭や仕事などライフスタイルが大きく影響しているという。
「デスクワークで長時間うつむきの姿勢でいると、どうしても肩や首の筋肉に負担がかかり、こってしまいます。また、片頭痛と同じく、ストレスは緊張型頭痛にとっても発症の大きな要因です。
例えば、親の介護をしていたり、精神的、肉体的ストレスがかかったりすると血行が悪くなるのです」
逆に言うと、心身の緊張を解いて血行をよくすることが、予防、緩和につながる。
「簡単にできて効果的なのが、ストレッチです。背中側に首筋から肩、腰の上までつながる僧帽筋という大きな筋肉があります。ここをほぐすと、肩や首のこりが和らぎ頭痛にも効きます。
また、手を握り、まっすぐ前方に手をのばして突く、“正拳突き”の動作を左右交互に行うのも効果的でしょう。どちらも仕事の合間などに気分転換でちょっと動かすだけでラクになります。ぜひ日々の習慣に取り入れてください」
ウォーキングなど、リズミカルな運動も効果的だという。
「姿勢も大事です。猫背、あぐら、肩ひじをついて横たわる、脚を組む……。こうしたNG姿勢のクセを改めましょう」
“温める”ことで血行が促され、症状が緩和される。
「入浴は首や肩の筋肉をほぐし、心身のストレスもとるのでおすすめ。なお、蒸しタオルなどで首を温めるときは後ろ側に当てます」
片頭痛と緊張型頭痛、両方持っている人は、どうすればいいのか?
「首の前面は冷やし、後ろは温めると覚えておきましょう。
同時に発症することはありませんが、これを覚えておけば、どちらの症状が出ても適切に対処できます」
また緊張型に限らず体内の水分が不足すると頭痛が起きやすくなるという。
「本格的に痛くなってからでは水分を補給しても痛みがとれないので、早めにこまめに水分補給を。普段から野菜や果物など水分の多いものを積極的に摂取しましょう」
<プロフィール>
丹羽潔先生◎東京頭痛学会専門医・指導医。東海大学医学部卒業後、ドイツ、アメリカの大学病院を経て、にわファミリークリニックを開業。2015年、頭痛に特化した専門クリニックを開院。両病院の理事長を務める。