「世の中に自分自身を知ってもらわないと、できないことってあるんですよね。例えば、作品を制作するときや、PRの方法を考えるとき。そういうときに、自分が表に出ていることが生かせる瞬間に立ち会えると、よかったなと思うと同時に責任感を感じます」
ドラマ『民王』や、映画『帝一の國』など話題作に出演し、若手俳優の中でも人気・実力ともに一歩抜け出した感のある菅田将暉(24)。
大河ドラマ『おんな城主 直虎』で演じる青年期からの井伊家の嫡男・虎松は、後に直政と名乗り“徳川四天王”の一角を担う。井伊家再興を果たす、物語の重要なキーパーソンに抜擢された菅田だがーー。
「虎松は、ゼロ以下のマイナスからスタートして這い上がっていく男。今の僕が置かれている立場と照らし合わせて、慢心せずにいられるというか……。まだまだ頑張れと、脚本の森下(佳子)さんやプロデューサーに尻を叩かれている感じがしています(笑)。
才能や持っているものだけで上がっていくのではなく、ドロ水をすすり、カッコ悪いところもいっぱい見せて、精神的に何度も負けてもひとつひとつ学んでいく。この過程が今の自分の境遇を含め、やりがいがあってワクワクしているんです」
そんな覚悟を持って臨む役。自分と似ている部分は?
「真逆な存在かもしれません。今回は虎松を14歳から演じるのですが、当時の僕は運動は好きだったけど、線が細くて。モテたかったから髪の毛を伸ばしたり服を買いに行ったりと、色気づいてました(笑)。
彼のように自分の人生について1回も考えたことがなかったし、興味があったのは明日の髪型のことだけでした(笑)。同じ年代の自分との共通点は、虎松が元服前で前髪を下ろしていることくらい。僕は大胆な行動力もなく、せせこましく生きていましたから(笑)」
森下脚本は、朝ドラ『ごちそうさん』以来で2作目。
「『ごちそうさん』でもそうだったんですけど、必ずBL要素が一瞬入るんです。今回はソフトタッチですけど、森下さんは僕のBLが好きなのかな(笑)。
でも史実などを調べると確かに、家康のお気に入りの中でそういった要素もあったかも、っていろいろ出てくるんです。こういうのを脚本に入れてくるのは、うまいなと思いましたね」
作品の舞台になっている戦国時代。生死を賭して生きていく日常に“ロマン”を感じる人も多いが、
「現代も戦い方は違うけど、競争社会じゃないですか。戦で使うものが、剣や拳からハートの部分に変わっただけではないでしょうか。日々、僕らも戦いの毎日ですよ。
僕の“戦”は、きっちりと自分も面白いと思える作品を作って、それをみなさんに見てもらうということに尽きる気がします。作品に携わる以上、その責任もあると思いますし」
俳優として、自分の行く道を見定めている菅田。
「作り手の中で俳優って、気を抜くと微妙な立ち位置になるんです。いちばん表には出るし、絵に残るのも僕らだけど、根本からの作り手ではないから。脚本を書いているわけでも、演出をしているわけでもないじゃないですか。だからといって、作品に対して何の責任もありません、は違うと思うんです。
自分が作品に出ている意味を考え、感じていないとやる必要もないと思うし、そもそも自分が楽しめないですよね」
いろいろな役を演じているからこそ、あまり見えない素の姿。普段の菅田将暉は、どんな人?
「“素”の自分、どんな人間なんでしょうね。芯の部分はめんどくさがり屋かな。なるべく楽をしたいと思っています。もちろん、サボりたいという意味もあるけど(笑)、不安要素がある状態でカメラの前に立つと、決して楽ではないですよね。だから、頑張る。基本、自分がどんなときにも“楽”な状態でいたいんです」
不断の努力から、菅田将暉の“楽”は成立している?
「けっこう、そのあたりは子どものころから要領がよかったんですよ。夏休みの宿題なんてやったこともないし。やらなくても怒られないものと、逃げ切れるものはやらない(笑)。でも、成績はそこそこよかったんですよ」