大宮浩一監督は、理想の介護を目指して若い人たちが立ち上げた民間福祉施設などに密着したドキュメンタリー映画『ただいま、それぞれの居場所』(’10年)、続編『季節、めぐり それぞれの居場所』(’12年)を製作。社会福祉政策は“ゆりかごから墓場まで”が重要ということで、今度は『夜間もやってる保育園』にて夜間保育園を見つめながら、子育てについて考えます。

『夜間もやってる保育園』●監督:大宮浩一/出演:エイビイシイ保育園、玉の子夜間保育園、すいせい保育所、エンジェル児童療育教室、たいよう保育園ほか/上映時間:1時間51分/配給:東風 2017年9月30日よりポレポレ東中野ほかで全国順次公開中 (c)夜間もやってる製作委員会

 現在、認可夜間保育園は全国に約80か所。うち、本作に登場するのは、有機野菜による食事提供を行っている東京都新宿にあるエイビイシイ保育園、20年前に沖縄県のモデル事業として開設された那覇市の玉の子保育園、療育教室併営の新潟のエンジェル保育園など。

 子育ての現場の進化を実感する一方で浮かび上がるのは、私たちの労働環境です。特に繁華街にあるエイビイシイ保育園には、夜の仕事に就いているシングルマザーが多いのかな? と想像していましたが、実際は彼女たちだけではなく省庁勤務のキャリアウーマンの姿も。出産後も変わらず働き続ける女性たちが増えたのは喜ばしい限りです。

 しかし飲食店で働くアジア人夫婦のように、お父さんが昼夜かけ持ちで働いていたり、子どもの迎えが明け方になってしまうお母さんも。家庭の事情もありますが、それでもやはり家族で過ごす時間が守られている欧州などと比較すると、われわれは働きすぎじゃないかと考えてしまいます。

 また今回はあまり触れられていませんが、24時間体制で勤務する保育士たちの労働環境と給与体系も気になります。若い保育士たちの情熱が、削がれることのないようにと願わずにはいられません。

 今春厚生労働省が発表した昨年10月時点の全国待機児童数は4万7738人。家族を取り巻く環境の変化に、行政が全く追いついていないことを数字が物語っています。本作のチラシにある一文を紹介しましょう。

 保育が変われば社会が変わる──。

 同感です。

 文/中山治美