当選確率は9割!勝利の女神・幸慶美智子さん

 選挙期間中の日曜日、洗車中のお父さんには選挙カーから、

「車を洗うはご主人が無駄な政治を洗い流すは○○候補」

 工事中の作業員さんには、

「道路のデコボコはみなさんが、政治のデコボコは××候補者が正します!」

 思わず、“うまい!”の声が出ちゃう絶妙のマイクパフォーマンスで、“カリスマうぐいす嬢”の異名を取るのが、幸慶(ゆきよし)美智子さん(48)。応援した候補者の当選率、なんと9割を誇る。

「ブライダルの司会をしていた大学生のときに、地方統一選挙があったんです。お友達から、“候補者にうぐいす嬢としてつくんだけど、もうひと候補につく人がいない。アルバイトしませんか?”という誘いを受けたのが、この世界に入るきっかけでした」

 当時はまだ駆け出し。前述のようなコミュニケーションなど、当然できない。だが、応援スタッフは自分と同じ大学生ばかり。選挙戦はサークルのノリで楽しかった。

 自分が乗った選挙カーに、テレビでおなじみの大物政治家がポンと乗り込み、候補者とたった3人になった際には、「もう、スゴイ威圧感。大学生が急に大人の世界に入ったみたいで、必死に原稿を読みました(笑)」

 自分の声が街中に響く楽しさに夢中になった。住宅地では住民から、“うるさい!”と怒鳴られ、トマトを投げられたことさえあったものの、

「“ああ、そうなんだ”って。それまではトマトを投げた人と同じところから政治を見ていたのに、選挙カーの中に入っただけで、中の人になるんだ、って思いましたね」

 以来、うぐいす嬢として応援した候補者数は地方選挙から国政選挙まで280名を超える。その間、さまざまな候補者・政治家の素顔に触れてきた。中でも印象に残るのは、2015年に政界を引退した橋下徹・元維新の会代表だ。

有権者との握手は両手で相手の手を包み込むように

「橋下さんはとにかくタフで、ものすごく強い人。17日間も選挙をすると、休まなければやっていけない。当時は大人気でもみくちゃにされていたんですけれど、休みたいなんて言葉、1回も聞いたことありません。常に礼儀正しくて、腰が低くて。選挙カーが入って最終日に初めて、“ちょっとだけお茶だけ飲ませてください”。あんな方、ほかにいません」

 緑の勝負カラーが印象的なあの候補には、直で接したことはないとことわりながらも、

「感情が顔に出ない人ですよね。政界の女性は、男性よりずっとタフですよ」

 目標を達成したり法案を通すためには、有力男性議員を持ち上げて、いい気持ちにさせて転がす程度は政界の女性なら朝飯前。話題のあの人も、自分自身の“希望”のためなら、おそらく手段は選ばないと語るのだ。

 いずれにせよ、どの政治家も海千山千の猛者ばかり。応援するうぐいす嬢も、並の根性では務まらない。

「山陰某県の選挙では、ホテルを経営しているという候補者から、“今日はわしのホテルに泊まってもらう”と」

 そう言われ、当時まだ20代だった幸慶さんが候補者の車に乗り込んだ。車はどんどんと山の中へと入っていき、周囲はとうとう真っ暗闇に。

 不安がつのる幸慶さんの目に、突如として宮殿みたいなホテルが現れた。ホテルに入ると、そこには昭和の香り満点の回転ベッドと、実にあやしげなお風呂が……。候補者は老舗旅館とともに、ラブホの経営者。このラブホが、選挙期間中の宿だったのだ。

「それで昼は老舗旅館を本部にうぐいす嬢をやって、夜はラブホに宿泊。5日間、スケスケのお風呂に入って、回転ベッドで眠りました(笑)」

 “チン味”のごちそうにあやかったことも。

「ハモの湯引きみたいなものを出されて食べたら、“それは牛のあそこじゃ”(笑)。あそこがどこなんだか、今でもはっきりとはわからないんですけれど(笑)」

 これで日給1万5000円。うぐいす嬢も、タフじゃなければ務まらないのだ。

「山は動いた」で知られる故・土井たか子さんと

 これまで280名の候補者を間近に見てきたが、当選する人はみな、あることをきちんと理解していると幸慶さん。

「“一寸の虫にも五分の魂”ってことわざがありますよね。“人も虫も命の重さに違いはない。等しく大切”という意味だそうですが、候補者がそれを理解しているかいないかが当落を分けるように思います。

 これは候補者よりも有権者でない一般の人の事務所訪問に対する対応を見るとわかります。どんな職業の人にも丁寧に対応できる事務所は、候補者さんも立派です」

 昨今、続出している政治家の不倫は、こんなふうに映る。

「息抜きが欲しかったのかなあと。議員になると、相談できる人って、少なくなるんですよね。そんなときに親身になってくれる人が出てくるとどうかなっちゃうんじゃないのかなあ……」

 そんな政治家たちを尻目に今日も日本各地でうぐいす嬢たちが、わが候補者への投票を声をからして訴えている。

 どの候補者が笑い、誰が泣くのか!?

 当落とともに、陰の功労者たちの活躍にも注目だ!