衆院選を前に「政治とニッポンの行方」について緊急インタビュー。武器輸出をテーマに取材を続ける東京新聞の社会部記者、そして子育て中のママとしての顔も持つ望月衣塑子さん(42)に伺いました。

東京新聞 社会部記者 望月衣塑子さん

疑惑に答えられない政府のもとで──

 選挙はまだ終わっていないのに、いま、ものすごい失望感に襲われています。

 政局報道一色で政策論争は深まっていません。消費税の増税分を何に使うか。強行採決で成立した安全保障関連法の運用拡大の是非は。安倍首相にどうやって森友・加計学園疑惑の説明責任を果たさせるか。国民に丁寧に説明すると約束したはずです。

 私が加計学園疑惑について菅義偉官房長官に繰り返し質問したのは、きちんとした回答をもらえなかったからです。本来は政治部記者が担当するんですが、会見でのやりとりは予定調和の域を出ず、いまだに政権に批判的な質問をしづらい空気が流れています。

 私は子育て中で“夜討ち朝駆け”ができず、政治家の本音を聞き出すのはあの場しかありません。菅官房長官が政府のスポークスマンとして何を語るか。会見は国民に見えるので大きな反響がありました。政府が疑惑にきっちり答えられているか、わかりやすかったんだと思います。

 森友学園への国有地売却で約8億円が値引きされた問題では、会計検査院が10月末ごろ調査結果を公表し、加計学園の獣医学部新設についても文科省の設置審が10月末ごろ許認可を判断する見込みです。急な解散のため、今回の総選挙ではこれらの結果について、投票で意思表示することはできなくなりました。

「安倍1強」が続く中、自民党内は自由にモノが言える空気ではなくなっています。政権批判を許さない。異論は排除する。よくも悪くもそこは統制がとれています。テレビメディアへの圧力など歴代政権が手をつけなかったことにも踏み込んでいる。社会全体に嫌な感じが漂っています。

 私は武器輸出をテーマに取材を続けてきました。

 今年5月、参院本会議で改正自衛隊法が可決・成立しています。国有財産である自衛隊の中古装備品を他国に無償譲渡したり、低価格で売れるようになったりしました。東南アジアや中南米では、日本の武器が欲しいという国が結構あるんです。戦後、日本は米国の防衛装備品などを中古でもらい受け、いまは無人偵察機など、防衛省内でも「いらない」と言う人もいるものまで買わされている。

 欧米列強にならい、これからは売りつける立場になって軍事国家を作ろうとしているようにみえます。武器輸出による経済効果も期待できる。儲かれば武器商人になってもいいんでしょうか。日本は憲法9条で武力の放棄を掲げたから、軍産複合体的な国家は選択肢にありませんでした。政治の力で戦争ビジネスへの道を限りなく切り開いた感じがします。

 女性誌を読むママ友は多いんです。ちょっと政治も考えたいよねっていうママもいるし、小池都知事のファッションチェックするママもいる。テレビが報じる政治家の姿を見て、「この人よく笑っているよね~」と好印象を持つママもいる。笑顔でも、言っている内容は冷徹です。そういう層に政治の実態を伝えていきたいです。

<プロフィール>
望月衣塑子(いそこ)さん◎東京新聞 社会部記者。日歯連のヤミ献金疑惑などをスクープ。新著『新聞記者』(角川新書)を今月12日に発売