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 曇りや雨の日になると、体調が悪くなったり、やる気が出なくなったり……。それ、もしかしたら“気象病”かも! 特に、気温と気圧が急激に変化する季節は“低気圧女子”が急増するというデータが。天候と身体とはふかーい関係があるんです。

低気圧と身体の不調の関係は?

「私が気象予報士だと知ると、多くの女性が天気による身体の不調を訴えてきます。

 ウェザーニューズのデータでも日本人の6割が気圧の低下で不調を感じ、女性の3人に1人は頭痛に悩まされ、2人に1人はだるさを感じているそうです」と、天気によって身体の調子が悪くなる女性が増えると話してくれたのは、お天気キャスターの小越久美さん。“低気圧女子”という言葉をつくった当人で、「私自身も雨の日には、古傷が痛みだしたりする低気圧女子なんです」

 小越さんのように、古傷が痛んだり、関節が痛んだり、頭痛がしたり、気分が重くなったりして「明日、雨になるのがわかる」という人、結構いますよね。まずは、低気圧女子の特徴をあげたので、チェックしてみて。ひとつでも当てはまったら、あなたも間違いなく低気圧女子!

【あなたはいくつ当てはまる? 低気圧女子 チェックリスト】
□ 自分の体調の変化で天気がわかる
□ 雨が降る前、降っているときに頭が痛くなる
□ 天気によって、イライラすることがある
□ 天気が悪い日は身体がむくみやすい
□ 憂うつになりやすい季節がある
□ ストレスを感じやすい
□ 新幹線や飛行機に乗ると、具合が悪くなることがある
□ 季節の変わり目によく風邪をひく
□ 高山病にかかったことがある
□日常生活が不規則なほうだ
*いくつ当てはまりましたか?

 それにしてもなぜ、気圧が身体に影響するのでしょう。そもそも、低気圧って何? 教えて小越さん……。

「気圧とは空気の重さのことで、雨や雪をもたらす低気圧は高気圧に比べて空気が薄く、体調不良の引き金になるのです」

 冬の気象図を見てみると、等圧線の間隔が狭く、たくさんあるのがわかるはず。この等圧線が多ければ多いほど気圧の変化が大きく、だるくなったり、憂うつな気分になったり。にっくき敵の姿というわけです。

 この季節によく耳にする言葉が『冬将軍』。とても偉そうなネーミングで、シベリアから寒波がやってくるぞってこと。インフルエンザが流行りだすのもこのころから。

「空気が乾燥してくるので、お肌のケアも冬仕様に。しっかりと保湿対策を行い、冬用のファンデーションに切り替えましょう」と小越さんから女性ならではのアドバイス。

 そしてダブルで低気圧が発生するのが『二つ玉低気圧』。とことん低気圧女子を攻めまくります。大都市圏に住んでいる人が注意したいのが『南岸低気圧』。思いがけなく雪になったりするので、この言葉を聞いたら、寒さ対策を万全に。

「もうひとつ気をつけてほしいのが玄関前線。これは気象用語ではありませんが、玄関を境にして家の内側と外では気温差がとても大きくなります。気圧変化と同じくらいのダメージを身体に与えてしまいます

 上着などでの体温調節もこまめに行いましょう。

気温・気圧の変化で自律神経が乱れる

 低気圧になると、身体に不調が起こるのはわかったけれど、身体の中ではどんなことが起きているのか。不調の原因のもとをたどってみると、「自律神経が関係しているんですよ」と、自律神経の研究者である順天堂大学教授の小林弘幸先生。

 私たちの身体は、天気に関係なく、体内の環境を一定に保とうとする力が備わっています。夏の暑さや冬の寒さでも体温を一定に保ち、また外界の気圧の変化に合わせて、身体の内側からも対応しているんです。この働きをしているのが自律神経。ところが、「気温や気圧が急激に変化すると、自律神経の働きが追いつかず、低気圧女子を悩ませるわけですね」(小林先生)

 自律神経には、アクティブモードの交感神経と、リラックスモードの副交感神経があり、その人の活動状況や暑さや寒さに合わせて身体の機能をコントロールしているわけです。だから急激に寒くなる冬は、自律神経も乱れてしまう。さらに女性特有の身体の機能も大きく影響していて、「女性は40歳を過ぎたころから副交感神経の働きが落ちてきます。また月経などでホルモンの影響も受けるので、どうしても自律神経が乱れてしまいがちです」(小林先生)

 女性が天気で不調になりやすいってこと、納得です。

低気圧女子を克服する8プラン

「自律神経の総合力を引き上げるのも乱すのも、毎日の心がけ次第ですよ」と小林先生。

 ここからは天気に合わせて自律神経の乱れをコントロールする簡単な方法を、小林先生に教えてもらいましょう。

どんより曇っていたり、雨が降っていたり、しかも寒ければ、誰でもやる気が起こりませんよね。それは副交感神経が強く働くからで、意識的に交感神経を上げること。こんな日だからこそ、動きたくなくても動く! これがポイントです」(小林先生)

 でもでも動きたくない……その気持ちはわかるけれど、思いきって動いてみると、活発な行動がメンタルに作用して、不思議なことにやる気が出てくる。

 ちなみに晴れた日には交感神経が活発になりすぎるので、のんびり、ゆっくり過ごしたほうがいいそう。雨の日は動いて、晴れの日はのんびりなんてちょっと意外。覚えておきましょう。

《低気圧女子のための処方せん》

(1)目覚めたら水を1杯飲む:軽く口をゆすいで口腔内の雑菌を除いてから、コップ1杯の水を飲む。腸が目覚めて、自律神経も活動開始。

(2)朝食はしっかりとる:食べることで体内時計が正常になり自律神経もリセット。

(3)発酵食品、食物繊維をとる:腸内環境がよくなれば、自律神経の総合力が上がり体調も整う。

(4)着替えを用意する:雨でぬれた服を着続けると不快感から自律神経が乱れるもとに。

(5)天気が悪い日は動く:駅まで元気よく歩く、階段を使う、電車の中では立っている、仕事中はてきぱき動く。家にいるなら、掃除をしたり、スクワット運動を行う。

(6)笑ったり歌ったり:面白い映画を見る、落語を聞く、大きな声で歌をうたう。

(7)スマホはほどほどに:スマホを見続けていると、頭痛や肩こりに。雨の日はスマホも控えて。

(8)湯船に浸かる:暖かい部屋から、寒い浴室は自律神経を乱す原因に。それなのにシャワーを浴びるだけでは血流も滞ったまま。ゆっくりと湯船に浸かり、質のよい眠りをとるように心がけて。

 どうですか? どれも簡単にできることばかりだけれど、続けているうちに低気圧に負けない身体になっているはずです。雨にも風にも寒さにも負けないで、元気に冬を乗り切りましょう。

【大腿四頭筋を鍛える背中すりすりスクワット】
自律神経のトータルパワーを上げるには、背中を壁につけたままで行うスクワットを。腰は浅く落とすだけでOK、最初は1分から、できるようになったら3分を目標に毎日行う。
【雨の日こそ動くべし掃除も立派なエクササイズ】
だるいからと動かなければ、副交感神経が優位になりすぎ、ますますダルオモ~。体操やストレッチもいいけれど、小林先生は「掃除をしましょう。キレイになれば気分もすっきりしますよ」
【歌をうたって腹式呼吸をすれば自律神経機能を調整】
思いっきり笑ったり、歌をうたったり、さらにカラオケで大きな声で歌えば自然に腹式呼吸になり自律神経のバランスが整い、ストレスも解消。血流がよくなることで、免疫力もUP。
【血流をよくするぬるめのお湯で全身浴→半身浴】
39~40度のややぬるめのお湯で、最初の5分は肩まで、次の10分は半身浴を。交感神経から副交感神経へスムーズに切り替わる。お風呂から上がったら、水分補給も忘れずに。

取材・文/つきぐみ(水口陽子、渡辺晴美)

<教えてくれた人>
小越久美さん◎気象予報士/健康気象アドバイザー。日本テレビ『日テレNEWS24』で気象キャスターを務めたほか、桜の開花予想や気象データを基にした商品の売り上げ予測などの分析なども行っている。

小林弘幸先生◎順天堂大学医学部教授。自律神経研究の第一人者であり、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」としても知られる。テレビ・ラジオなどにも多数出演。