「今、報道されているビール瓶で殴ったということは、これは殴っておりません」
10月25日から26日未明に、鳥取市内の飲食店で起こった横綱・日馬富士の暴行問題。被害者である貴ノ岩がビール瓶で殴られたという報道に対し、酒宴に同席していた白鵬は、それを否定している。
表情を変えず無視する貴乃花
「暴行問題が発覚してから沈黙を守っていた白鵬も、11月16日の朝稽古が終わったあと、記者の質問に対し事件当日の話をしたのです。
ですが、貴ノ岩の兄はテレビの取材に対し“テーブルの上の酒の瓶を持って、手あたり次第ぐちゃぐちゃにして、容赦なく何度も殴った”と弟から聞いたと話しています。つまり、証言が真っ向から食い違っているんです」(スポーツ紙記者)
貴ノ岩が所属する部屋の貴乃花親方が11月13日に相撲協会に提出した診断書には、《脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑い》と明記されている。
「暴行があった翌日(10月26日)に、日馬富士は貴ノ岩に対して謝罪し、お互いに納得したはずなんです。しかも、次の日(27日)には、伊勢ケ濱部屋の関係者が貴乃花部屋へ謝罪の電話を入れている。
そこで先方から、“病院へ行きましたが大したことはありませんでした”という返答があったので、横綱は九州場所に出場する準備をしたんです」(伊勢ケ濱部屋後援者)
だが、貴乃花サイドは“大したことはない”と言いながら、29日に鳥取県警に被害届を提出。結果として、11月17日に日馬富士は国技館で警察の事情聴取を受けている。
「'16年の理事長選で、うちの伊勢ケ濱親方(元旭富士)は唯一、貴乃花親方に票を入れている。つまり、親方同士で話ができない仲じゃないんです。確かに手を出した日馬富士は悪いですが、いきなり警察に被害届というのもどうなんでしょうか? 親方と横綱はかなり驚いていましたよ」(同・伊勢ケ濱部屋後援者)
その後、伊勢ケ濱が貴乃花へ謝罪を申し込むが梨のつぶて。11月11日に行われた緊急理事会の席で伊勢ケ濱が謝罪しても、貴乃花は表情を変えず無視していたという。
「9月場所で優勝し、日馬富士は連覇に向けて今場所も気合が入っていました。しかし貴ノ岩との一件がおさまらないことで、福岡に来てからは稽古に集中できてなかったですね。
場所前の激励会でも、ずっとウーロン茶を飲んでいて、話しかけても心ここにあらずといった感じでしたよ」(同・伊勢ケ濱部屋後援者)
暴行が起こった直後は、伊勢ケ濱サイドは事態が収束すると思っていたのは間違いないだろう。だが、その後の貴乃花の行動には、思わず首をかしげたくなる。
「貴乃花側が提出した診断書が警察に出したものと協会に出したものが違う。しかも協会へ出した症状が重いほうの診断書を書いた病院は“頭蓋底骨折と髄液漏れは、双方ともに疑いである”とし、“重傷であるように報道されていることに驚いている”とコメントしているんです。
となると、貴ノ岩を休場させた際に“頭が割れている”としていた貴乃花親方の言葉は何だったんだという話になりますよ」(前出・スポーツ紙記者)
理事長への不信感
なぜ、貴乃花は和解に否定的なのだろうか?
「昨年の理事長選に出馬した際も、貴乃花親方は相撲界の改革を訴えていました。特に'07年には、時津風部屋で新弟子が暴行で死亡するという痛ましい事件が起きており、協会の透明化を望んでいた。今回の件も協会へ報告する前にまずは警察へ被害届を提出し、大ごとにしたかったのでしょう」(相撲ジャーナリスト)
とはいえ、貴乃花は巡業部長の役職に就いている。被害届と同時に協会へ報告する義務もあったはずだ。
「もし、協会へ報告すれば、場所前でもあり調査をうやむやにされると思ったのでしょう。それ以上に、貴乃花親方は協会執行部、特に八角理事長(元北勝海)への不信感が大きい。彼としては、少しの不正や隠ぺいも許さないという思いがあるのです」(貴乃花部屋に近しい人)
そんな、孤独な戦いを繰り広げる貴乃花を支えているのが、8歳年上のおかみさんである景子夫人だ。
「相撲の四股をエクササイズに生かした『シコアサイズ』など、景子さんの提案で始めたことは多い。親方のファッションや髪型なども、おかみさんの言いなりですからね。今回の騒動についても、彼女が立ち回り方をアドバイスしているかもしれませんよ」(前出・相撲ジャーナリスト)
都内の自宅から車で出てきた景子夫人を直撃取材した。
─すみません、貴ノ岩関のケガはどうですか?
「申し訳ないです。話せないんです……」
と、車のウインドーを開けて笑顔を見せる。
─親方に何かアドバイスされてますか?
「本当にすみません」
と言い残すと走り去った。
「日馬富士は引退勧告も覚悟していますが、このタイミングで公になってよかったのは、子どもの小学校お受験の合格発表のあとだったこと。11月上旬に発表で、その前だったら合格を取り消されたかもしれませんからね」(前出・スポーツ紙記者)
ちなみに、その学校は貴乃花の子どもたちが卒業している。
“平成の大横綱”と言われた貴乃花は、これから土俵の外で、どんな取組を見せるのだろうか─。