11月20日、2019年度前期放送のNHK連続テレビ小説100作目となる『夏空』のヒロインに広瀬すずが決定し、発表会見がNHK放送センターで開かれた。
サプライズ会見だった
北海道から上京した主人公がアニメーターを目指す物語で、会見で広瀬は「まだまだ先ですが、がんばります」と語ったが、
「報道各社に《2019年度前期 連続テレビ小説 作品・ヒロイン発表会見のお知らせ》と書かれた会見を知らせるFAXが届いたのは、当日の午前のこと。そこには広瀬すずの名前は記載されておらず、<ヒロイン>とだけ書かれていて、会見でのサプライズとなりました」
と、ある芸能記者は言う。
「2019年は、すでに東京オリンピックを舞台に宮藤官九郎が描く大河ドラマの放送が、これも異例の速さで発表されています。しかし、99作目のヒロインを飛び越して100作目を発表というのは、不思議です」(同芸能記者)
NHKでは女性記者が過労死したことの影響もあるからか、会見ではプロデューサーが、早い発表の理由について「早く発表することで、早く準備ができる。働き方改革にもつながる」と、大河ドラマも含めた収録方法の変革について語った。あるテレビ関係者は、
「働き方改革は理由のひとつかと思いますが、99作目を飛ばして発表した理由の説明にはならない。まるで、99作目のヒロインが捨て駒のよう。会見での説明は、後付けにもとれますよね」
と言う。同関係者は、「朝ドラ100作目」という重みに注目する。
「〇本記念、〇周年というのは、たとえば単なるサッカーの試合に、『開局50周年記念 親善試合』という冠がついたりとか、民放でも無意味に強調することがあります。それがNHKの看板である国民的シリーズの朝ドラの100本目というと、予算も多くかけることも考えられますし、相当気合いが入ることは予想されます。
発表が早かったのは、そこから期待のハードルが上がることを、なるべく避けたいというところもあったのかと思います」
ミステリアスとなった99作目のヒロイン
発表を早めることで、視聴者にアピールする期間を長くし、<朝ドラ100作目は広瀬すず>ということをゆるやかに浸透させたいねらいもあるのではと、前出の関係者は言う。
「『100作記念って聞いてたけど、思ったほどでもないな』となったり、期待が上がりすぎないような配慮もあるのかなという気もしました。とにかく節目であることで、万一こけてしまうと、朝ドラ全体の勢いにも影響がありますから」
来年秋スタートで、日清食品創業者・安藤百福の妻をヒロインとして描く99作目の朝ドラは、現時点で発表されているのは『まんぷく』というタイトルと脚本家など。
朝ドラの制作は、基本的にNHKの東京と大阪が交代で担当しているが、97作目にあたる現在放送中の『わろてんか』は大阪制作。朝ドラについて取材する機会が多いライターは、
「単純に東京制作の100作目が早く制作スタートすることで、発表も早くしたというだけの理由かもしれません」
という見方も。
「今回の会見で、99作目が誰なのか、ミステリアスな存在になった感じもありますよね(笑)。逆に、できるだけ明かさないというのも面白いかもしれません」(前出ライター)
朝ドラ100作目のヒロインという大役をつとめる広瀬すずについては、こうみる。
「100作目で、20歳前後のヒロインというと、やはり広瀬すずが頭ひとつ抜けているのではないでしょうか。映画の『ちはやふる』や『先生!、、、好きになってもいいですか?』の演技も好評ですし、来年1月スタートの日テレドラマの主演も決まっている。
100作目にふさわしい女優とはいえます。朝ドラは、若手女優の登竜門とされることもありますが、オーディションを行わずに知名度の高い女優がヒロインをつとめることも時々あって、今回もそれだと思います。
朝ドラは、高畑充希が『ごちそうさん』(13年度後期)出演後に『とと姉ちゃん』(16年度前期)のヒロインになりました。また、有村架純は『あまちゃん』(13年度前期)出演の後に『ひよっこ』(17年度前期)のヒロインに。
朝ドラ出演経験者が数年後ヒロインの座を射止め、結果的に顔見せのような効果も出ていますが、今『わろてんか』に、姉の広瀬アリスが出ているのも、ある意味印象付けの効果があるかもしれませんね」
ところで、広瀬すずは、バラエティ番組で制作スタッフのことを「どうして生まれてから大人になったときに、照明さんになろうと思ったんだろう」などと発言してネットで炎上したり、俳優・成田凌との熱愛報道など、お騒がせ若手女優としての一面もある。
「過去にはジャニーズJr.との熱愛疑惑もありました。ネットの掲示板では、そんな彼女の名前をもじって“くずちゃん”と呼ばれたことも。放送まで1年半近くありますが、その間に何も起こらないよう、十分気を付けたいところですね」(前出芸能記者)
前出の朝ドラライターも、
「会見で“プレッシャーを感じております”“私で大丈夫なのか”と語っていたのが印象的でした。朝ドラヒロインは、できるだけプレッシャーをかけないよう周囲が配慮することが多いのですが、逆にそういったプレッシャーをかけて意識づけられているのかと。広瀬すずさんは、そういったプレッシャーに負けない強さがある女優だということですね」
<100作目ヒロイン>という重圧に負けない、朝ドラヒロインらしい強い女性ということか。
<取材・文/渋谷恭太郎>