生命誕生の奇跡と、生きることの大切さを描いた連続ドラマの続編が、前作に続いて好評だ。主演の綾野剛はじめキャスト、スタッフが「前作を超える素晴らしい作品に」との思いで臨む撮影現場の秘話、そしてクライマックスは─。
“本家”監修医たちも
刺激を受ける撮影現場
2015年に話題を呼んだヒューマン医療ドラマの第2弾。原作は鈴ノ木ユウの同名コミック。主人公の産婦人科医で天才ピアニスト“BABY”の顔も持つ鴻鳥サクラ役は、前作に続いて綾野剛。共演者は松岡茉優、吉田羊、星野源、坂口健太郎、大森南朋らレギュラー陣が顔をそろえた。
“出産は、奇跡だ”とサクラの言葉どおり、命の誕生までの物語、命を育むことの意味や難しさを丁寧に描き、初回視聴率12・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマーク以降も、高視聴率をキープしている。
「交流のなくなっていた知人から連絡が来るなど、個人的にも反響の大きさを感じています。特徴的なのは、公式サイトの応援メッセージ。番組の感想もあるのですが、例えば、子宮内胎児死亡を扱った回では、私も何か月で赤ちゃんを亡くしましたなどの告白や悩み相談が多く寄せられています。
誰にも言えなかった悩みを打ち明けてくださる方が多いのかなと感じます。また、吉田さんが素敵すぎると、小学生から看護学校に通う方まで、助産師に憧れる人も増えています」
と、鈴木早苗プロデューサー。出産経験のある女性が共感できる場面が多いのは、リアリティーを追求した作品作りによるもの。
「監修の先生方あっての本作。産婦人科、新生児科の複数の先生方に加え、テーマごとの専門医と、やりとりしながら脚本を作っています。神奈川県立こども医療センターの豊島勝昭先生や日赤医療センターの渡邊理子先生は、朝から夜遅くまで撮影に立ち会ってくださいますし、監修の先生方が“撮影現場を見たい”と、全国から来られることも増えました」(鈴木P、以下同)
回を重ねるなかで、監督やスタッフは医療知識を習得。オペシーンなどは医療台本に従い、器具類をセットしている。
「お医者さんが、医療には素人の私たちに刺激されるという不思議な図式ができています(笑)。“自分の仕事の意味を再発見した”、“俳優やカメラマンのプロフェッショナルの仕事を目の当たりにして、頑張ろうと思った”と、おっしゃっています。ちなみに、シーズン1の死戦期帝王切開のシーンは、すべての手順や段取りを撮影したため、お医者さんたちの勉強会で、使用されることもあるようです」
徹夜でピアノ練習
俳優・綾野の見せ場
リアルな医療シーンに、俳優たちも真剣そのもの。
「医療用語は事前に勉強して、意味がわかったうえで撮影に臨んでいます。綾野さんは“台本にはこうあるけど、このほうがいいよね”と提案も。アドリブも専門医なみです。吸引分娩のシーンでは、器具を膣に入れるとき、“吸引しますよ”のセリフに加え、綾野さんや吉田さんが“ちょっと気持ち悪いけど、我慢してね”と加えたり。これには監修の先生や助産師さんも驚いていました」
綾野は、自分以外の役のセリフも読み込み、監督に相談することも。
「綾野さんは、気遣い屋さんです。ずっと前室にいて、楽屋にこもるということはないです。ゲストの方には、チーム感ができあがっているメンバーの一員に入れてあげようとするし、撮影前にちょっと騒がしいと、“これから監督がしゃべるよ”と、注意喚起して、申し分のない座長です」
“BABY”のピアノ演奏は、吹き替えなし。
「曲は毎回、綾野さんが脚本から受けたイメージを、ピアニストの清塚信也さんと話して、監督と3人で作っています。すべて違うバージョンなので、綾野さんは清塚さんの演奏をビデオに撮影して徹夜で練習して、撮影に臨んでいます」
物語はいよいよクライマックス。第9話(12月8日放送)では、サクラは、3回の流産を経験し不育症に悩む夫婦に向き合う。
「これまで誕生の瞬間を描いてきましたが、そこに至らずに悩んでいる方も多いので、今回は子どもを授かる奇跡を取り上げます。さらに10話では、笑顔でやさしいサクラが初めて怒りの感情を表します。静かな怒り。俳優・綾野剛の見せ場になっています。
今、自分が存在しているのは、産んでくれたお母さんがいてくれたからで、奇跡の積み重ねなんです。つらいことがあっても“自分は奇跡の存在”と思えば、前向きに生きていけると思います。すべての女性、そして男性やお子さんにも、それぞれの感じ方で見ていただきたいですね」