13代目チャンピオンに輝いた、とろサーモン(左・村田秀亮、右・久保田かずのぶ)

 12月3日に開催された『M-1グランプリ2017』。4094組の頂点となる13代目チャンピオンに輝いたのは、結成15年目のラストイヤーでの初の決勝進出を果たしたコンビ、とろサーモン(村田秀亮・久保田かずのぶ)だった。

「決勝に進出した中に、彼らがいたことにまず驚きました。特に久保田さんは、“ゲスキャラ”“クズキャラ”として、その人間性のほうが実際のネタよりも知られていたかもしれません。それだけに、どんな戦い方をしてくれるんだろうというワクワク感もありました。そして優勝ということで、二重の驚きです」

 と、ある芸能記者は言う。

 決勝に進出した8組の中から、最終決戦に残ったのは、彼らと和牛ミキの3組だった。

「和牛とミキは、ともに正統派の漫才。いっぽうでとろサーモンは、ちょっとシュールなところもあるネタ。3組で票が割れれば、とろサーモンにもチャンスが……なんて思っていたら、審査員7名中4名がとろサーモンに入れるという文句なしでの優勝でした」

 動画配信サービスの、ネットフリックスのドラマ版『火花』で、売れない芸人を演じた村田は、優勝後のコメントで、ドラマでの「売れたいわー」というセリフに触れて、

「売れてない芸人が言った本気のセリフだったんです」

 と、涙を浮かべながら語った。

「最終的に、少し感動的な空気になったのが意外でした。飄々とした雰囲気の久保田から、珍しく“勝ちたい”といった感情が出ているように感じました。優勝したときに、いつも予選落ちなので、どこかM-1を憎んでいるようなところもあったと語る“クズ芸人”の本音が、少しにじみ出たような気もします」(同芸能記者)

 いっぽう、彼らの漫才の力をよく知る放送作家は、

「順当ですね。やっとという感じもありました。決勝のネタの時も、審査員の雰囲気が2番目に票を集めた和牛とどっちかだろうという感じでした」

 と振り返る。

技術の和牛か、発想のとろサーモンか、といったところでした。今回は、とろサーモンのほうが、より個性が際立ったところで優勝となった気がします。

 東京の番組では、トーク中心の構成になることが多いので、彼らがどんな漫才をやるのかといったこと自体、新鮮に見てもらえたところもあったかもしれません」(同放送作家)

“クズ”っぷりがウケることも

 今後しばらくは、キングオブコントで活躍した、にゃんこスターやかまいたちのように、テレビなどで顔を見る機会が増えると思われる。

「年末年始の特番にも、この時期ならまだ間に合いますからね。お正月によく見た顔ということになると思います」

 そこから先に関しては、前出の芸能記者と同じく、久保田の“ヤバ目キャラ”次第ではないかと、前出の放送作家は指摘する。

「こういったキャラは、売れれば売れるほど、好感度が下がっていく場合がありますからね(笑)。千鳥の大悟も、最初はコワモテキャラの印象が強くて、全国区では好感が持たれるまでに時間がかかりました。

 だけど、“クズ”をキャラとして売っているわけではないかもしれませんが、蛭子能収さんなんかは、クズっぷりが受けて人気者になっています。出川哲朗さんなんかも、長年嫌われ者としての扱いだったのが、今では好感度タレントですからね。M-1チャンピオンという箔が付くことで、ゲスいキャラが逆に面白くなるということはあるかもしれません

 最終決戦で、惜しくもとろサーモンに敗退した和牛とミキ。得点は最下位、加えて審査員の上沼恵美子の強烈なダメ出しが、かえって印象的になったマヂカルラブリー、ハイスピードでシンプルなネタで押し切ったジャルジャル、敗者復活枠で健闘したスーパーマラドーナなど、優勝したとろサーモン以外にも「爪痕」を残した芸人も多かった今年のM-1グランプリ。

 2018年のバラエティの中心となっている可能性は高そうだ。

<取材・文/渋谷恭太郎>