8日、野村沙知代さんが亡くなった。85歳だった。
プロ野球の元監督・野村克也氏の夫人であった沙知代さんは、90年代中ごろから毒舌コメンテーターとして、テレビのバラエティー番組などで引っ張りだこになっていたが、一躍脚光を浴びるようになったのは、'99年に勃発した“ミッチー・サッチー騒動”だ。
ことの発端は、ミッチーこと浅香光代がラジオで、沙知代さんのことを痛烈に批判したことからだった。前年の舞台共演で生じた二人の確執の根深さをうかがわせたが、沙知代さんが、
「どうせ売名行為でしょ。金持ちケンカせずよ」
と反撃したことで、火に油を注ぐことになり、騒動は拡大していった。
「週刊誌やワイドショーの格好のネタでしたから、マスコミはすぐに飛びついて、連日報道されることになったんです。
ところが二人のケンカだけで終わらず、芸能人や著名人が沙知代さんバッシングを始めたんです。もちろん沙知代さんの味方もいましたが、分は悪かったですね」(芸能レポーター)
この騒動で登場した芸能人・著名人は、十勝花子さん、渡部絵美、神田うの、デヴィ夫人、美輪明宏、塩月弥栄子、有田芳生、田中眞紀子など10人は下らなかっただけでなく、テレビ局自身も巻き込まれることに。
「沙知代さんが出演した'99年7月4日に放送された『おしゃれカンケイ』(日本テレビ系)では、“商品イメージにそぐわない”という理由でスポンサーの資生堂がその放送回のみ提供を降りるという前代未聞の事態が発生しました。
しかし番組の平均視聴率は25.7%(関東地区)をたたきだし、番組史上最高となりました」(スポーツ紙記者)
騒動は1年以上続いたが、'01年に沙知代さんが脱税容疑で逮捕されたことで、結局、ミッチーサイドの勝利という形で収束したのだった。
今年3月、私が“宿敵”のミッチーにインタビューした際、沙知代さんのことをどう思っているか尋ねると、彼女は、
「あんな人は、それまでも見たことないし、この先も出てこないだろう。二度と顔も見たくないね。勘弁してくれって」
今でも許せない気持ちは変わっていないようだった。
ある意味、芸能史を飾った沙知代さんは平成が終わりを迎える前に静かに旅立った。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。
※写真キャプションを修正しました(2017年12月8日23:17)