<いま、テレビの主役からファッションリーダーまで、常に新たなスターを生み出す存在。それが、女芸人>
そんなナレーションとともに幕を開けた、新たなお笑いコンテスト、『女芸人NO.1決定戦 THE W』。大会名の「W」は「WOMAN」と「WARAI」の頭文字で、芸歴・プロアマ・ジャンル不問、636組の中から勝ち抜いた10組の女芸人が、いま最も面白い女芸人の座を目指す。
一般審査員の存在
記念すべき第1回のチャンピオンに輝いたのは、お茶の間でもおなじみ、人気ピン芸人の、ゆりやんレトリィバァだった。
「実力も人気も、納得だと思います」
と、バラエティ・情報番組などを手がける放送作家は言う。
「今回のような大会は、普通に面白く見られる正統派の漫才はなかなか勝ちにくく、ゆりやんのような分かりやすいタイプが強い傾向はあると思います」
その理由のひとつとして、『THE W』の審査方法を挙げた。決勝大会は、ヒロミ、生瀬勝久、吉田沙保里、ら7人のタレント審査員と、一般審査員の合計得点により競われるもの。
「タレント審査員も、お笑いのプロばかりではありませんし、何よりも一般審査員の存在はすごく大きかったです」(前出・放送作家)
ゆりやんは、決勝の1戦目では、アメリカンハイスクールのミスコンに出場する女子高生のスピーチネタ、最終決戦では、誰もが知っている国民的アニメ『ドラえもん』のパロディコントで会場じゅうを笑いに包み、優勝につながった。
「特に最終決戦のネタの、世間に知れ渡ったものをモチーフにして、それをどうやるとイメージが壊せるのかという、その面白さです。ネタ自体の難易度はそれほど高くないけれど、とにかく面白い。
それをプロだけで審査した場合、ああいうネタは、“ああそういうのね”と、片付けられてしまうこともあります。プロだけの審査の場合、しっかりした漫才ネタが優勝していたかもしれません」(前出・放送作家)
番組誕生の背景
この『THE W』という大会が誕生した理由はどんなところにあるだろうか。あるテレビ関係者は言う。
「テレ朝で『M-1グランプリ』が復活、『R-1ぐらんぷり』と『THE MANZAI』はフジ、『キングオブコント』がTBSと、民放キー局がそれぞれ芸人No. 1を決めるコンテンツを持っている中、日テレだけが持っていませんでした」
女芸人に限定した理由は、他のコンテストとの差別化に加え、
「『行列のできる法律相談所』、『踊る!さんま御殿!!』に『今夜くらべてみました』など、日テレはトークでその人の魅力を引き出していくスタイルの番組が多いです。
『世界の果てまでイッテQ!』あたりも含めて、特に女性ウケのいい女芸人やバラエティタレントが欲しいので、そういった番組に向けての役割もあると思います」(前出・テレビ局関係者)
『THE W』の副賞は、「視聴率100%券」。これは、日テレの人気番組の中から、視聴率が合計100%になるまで好きな番組を選んで出演できるものだったも、そういうねらいがあってのものなのかもしれない。
少し前までは、森三中のような身体を張るスタイルや、ハリセンボンのように見た目いじりをするような笑いを取る女芸人が人気だった。が、近年の女芸人の傾向は時代とともに変わってきている。
「渡辺直美さんやブルゾンちえみさんなど、同性にかっこいいと思われたりする女芸人が増えていることは確かですね。今は、差別にならないようなことでも差別と指摘されることもあり、テレビ界全体が、あまり身体を張らせない流れになっているところもあります」(前出・テレビ局関係者)
今後、『THE W』は、先行するお笑いコンテストのような存在に成長していくだろうか。前出の放送作家は「意外に苦労するのでは」と続ける。
「触れ込みとしては、最も面白い女芸人を決めるというものでしたが、審査も含めて、本格的な大会というよりも、売れてる芸人にとってはネタ見せ番組的な色合いが強いものになっていました。
これから売れたいと思っていたり、きっかけをつかみたいという芸人にとっては、効果のある番組だったと思います」
13.1%という高視聴率を記録し、上々の幕開けとなった『THE W』。参加した女芸人の活躍とともに、2回目以降、成長できるコンテストになっていくだろうか。
<取材・文/渋谷恭太郎>