JR福井駅前の交番前の歩道で、覚せい剤かと思われる「白い粉」を落として猛ダッシュで逃げれば、怪しいと思った警察官は追ってくる─。
いたずらのセンスのかけらもないことをやらかした自称広告業の男が、偽計業務妨害の罪で逮捕されたのは、9月のことだった。
その際の様子は、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開されていた。その広告収入で金を稼ぐのが「ユーチューバー」。近年、小学生の将来なりたい職業にも顔を出すほど認知されている。
ウェブメディア評論家の落合正和さんは、
「本格的に出てきたのは、'13年、'14年あたり。スマートフォンの普及によって、加速度的に増えました」
中にはヒカキン氏のような、影響力があり企業のPRイベントにも起用される大物ユーチューバーもいるが、
「今年は、ヤマト運輸の人を脅す“チェーンソー男”とかもいましたね。そして中堅クラスのユーチューバーが出てきた年という印象があります」
と落合さん。炎上系の大半は、目立ちたがりではないかと見る。
「この前も、そこそこの人気のユーチューバーがサイゼリヤで大量に注文して残すという動画で炎上しましたよね」
本当に仕事として向き合っている人がいる一方で、すそ野に広がったユーチューバーがやらかしている玉石混交の過渡期が今だと指摘する。
女子高生が自分のおっぱいを着衣の上から触らせる「フリーおっぱい」やボディウォッシュの使用可能回数を確かめる動画が無駄遣いだと炎上したり、きりがない。
冒頭の「白い粉事件」で逮捕された自称広告業の男も、逮捕されないレベルのいたずらは続けると明言しているのだが、いたずらの定義が難しい。交番の前でケンカをしたら、警察官は助けに来てくれるのか? という他の投稿動画まである。
ユーチューバーでもある久保田康介弁護士は、これらの動画の違法性について、
「法律に関しては、それを知らなかったというのが通用しない。例えば廃墟探索も建造物侵入などになる。“フリーおっぱい”は、公然わいせつの定義には当てはまらないと思います。交番前のケンカ演技の動画は理論的には業務妨害になると思います」
という見解を示した。
冒頭の男は、略式命令の40万円の罰金を不服とし正式裁判を求めている。
「覚せい剤撲滅、啓発のためにやった」とのことだが、その前に自分の行いを振り返り、人様に迷惑をかけないことを優先すべきだった。