「僕自身は顔を変えたいという願望はないし、ありのままに生きているので顔を隠したいとも思わないですね」
芥川賞作家・中村文則のサスペンス小説を映画化した『悪と仮面のルール』で、主演を務めた玉木宏(37)。愛する人を守るため、顔を変え過去を捨てた殺人者役という難しい役に挑戦している。
「絶対的な悪=“邪”になるために創られたと父から告げられる久喜文宏を演じたのですが、あらためて人は生まれた環境で左右される生き物なんだなと思いました」
先日放送され大きな話題を呼んだ、殺人犯の息子を取り上げたドキュメント番組は、今回の作品とリンクする部分もあり、見入ったという。
「子どもは生まれたい環境に生まれてくるものじゃない。殺人犯の息子がインタビューで“殺人犯の息子だけど、自分はそうじゃない。でも親と同じ血が流れているから、人を殺めてしまうんじゃないか……と自分が怖くなる時がある”と語っていたんです。映画を撮り終わった後にこの番組を見たのですが、僕が演じた文宏と殺人犯の息子も葛藤しながら生きているというところでは共通しているので、すごく考えさせられました」
劇中では見事な肉体美を披露しているだけに、役づくりも大変だったかと思いきや……。
「朝ドラ『あさが来た』の役のためにで10キロ太ったんですが、そこからすぐにこの撮影に入ったので、今見ると優しい身体をしているなと(笑)。トレーニングするのが毎日の日課なのですが、舞台に備えて毎日ボクシングジムで2時間汗を流していたので、今のほうがバキバキですよ(笑)。
朝ドラの時は80キロまで太って、今は72キロ。いちばんやせた時は52キロまで落としましたが、運動で無理なくやせているので、食事制限はあまりしませんね」
毎日の運動のほかに、仕事や日常で行う個人的な“ルール”はありますか?
「仕事の前は最低でも2時間前には起きて、お風呂に入ってから現場に向かうぐらいですかね。あとコーヒーを1日1杯飲むなどすごくシンプルです。なので撮影期間中だからといって特別なことはしない。しいていえばそれがルールですね」
守ってあげたくなる女性のタイプとは
劇中では運命に翻弄されますが、運命を感じたことは?
「人生は日々の積み重ねだと思うので、個人的には運命は感じないです。でも、今さらほかの仕事ができるとは思えないので、俳優の仕事ができているのは運命だと思えるように、続けていけたらいいですね」
思いを寄せるヒロインを務めた新木優子自身にも、引きつけられる部分があったそう。
「撮影したのが1年半ほど前だったのですが、とても真摯にピュアに仕事に臨んでいて、何かをつかもうという姿勢がすごく印象に残っています。そういう姿を見ていたので、こうして光を浴びられているのは当然だなと。ただ、会ってすぐに撮影が始まったので、会話した記憶がほとんどないんですけどね(笑)」
殺人を犯してまでひとりの女性を守る役どころですが、守ってあげたくなるタイプは?
「女性に限らず、男である以上は弱い立場の存在は守ってあげなければと思っています。ヒロインの香織も、ひとりで生きていくのが難しそうな弱さを感じるので、手を差しのべたくなるタイプです」
ポーカーフェイスの殺人犯を演じたが、久しぶりにコメディーにも挑戦したいと語る。
「昨年はまじめな作品が多かったので、笑ってもらえるような作品に出たいですね。いつも、その時に演じている役と対極な作品をやりたいという思いがあるんです。そうして経験値を増やすことで、木の年輪のように演技にも現れると思うので」
サスペンス作品だが、究極の恋愛映画でもあるので女性にも見てほしいとほほ笑む。
「文宏が置かれた環境はかなり特殊ではありますが、とてもピュアな恋愛映画でもあるんです。そういう視点で見てもらえれば、作品の世界観もより伝わると思います」
<出演情報>
映画『悪と仮面のルール』
出演/玉木宏、新木優子、吉沢亮ほか。
1月13日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー