法言語学者で明治大学教授の堀田秀吾教授による「科学的に元気になる方法」。今回のテーマは、現代の情報化社会では避けて通れない、コワ~い「デマの拡散」についてです!

【今週のエビデンス】

「デマが拡散される流布量は、重要さ、曖昧さ、そして信用度(もっともらしさ)が左右する」

(アメリカの心理学者 G・W・オルポートの研究)

※写真はイメージです

助手:2000年以上も昔に書かれた『死海文書』によれば、1948年のイスラエル建国から70年後の’18年に人類破滅の大戦争が勃発すると予言されて……。

堀田:おいおいおい! どうした急に!?

助手:オカルト界ではノストラダムスの大予言くらい有名な予言ですよ。何か?

堀田:「何か?」じゃないよ。その予言を信じているの?

助手:鵜呑(うの)みにはしていませんけど……実際に北朝鮮との緊迫した状況や、中東情勢を見ているとリアリティーがあるじゃないですか。

堀田:う~ん、変にそういった話題を持ち上げると、あっという間に流布していくから慎重に扱ってね。『デマの心理学』の著者でもあるアメリカの心理学者G・W・オルポートは、“流言の流布量=内容の重要性×内容の曖昧さ”というように流言の基本法則を定式化しているんだ。

助手:ふむふむ。重要であると同時に、曖昧であればあるほど人って落ち着かないというか、情報にとらわれてしまいますよね。なんか納得。

堀田重要さ、曖昧さ、そして信用度(もっともらしさ)がウワサの伝達を促進すると、研究の結果、明らかになっている。1973年に起きた「倒産する」というウワサから取り付け騒ぎが発生し、短期間に約20億円もの預貯金が引き出された豊川信用金庫事件は最たる例。

助手:なんですか、その事件?

堀田:デマの根源をたどると、なんと電車内の女子高生3人の雑談から派生した事件だった。ひとりの女子高生が雑談を信じて、その家族までもがウワサを信用し、その流言が町中に広がり……たった数日で約20億円の預貯金が引き出されたんだ。流言の伝播(でんぱ)ルートが心理学や社会学の教材になるほど興味深い事件として名高い。

助手:へぇ~。でも、今はインターネットの時代ですよ。さすがに調べればわかるし、そんなに簡単に踊らされないでしょ~!

堀田:昨年、話題になった「フェイクニュース」「ポスト真実」などの言葉を忘れたのかい?

助手:あ……。

堀田:むしろ、デマやウソの情報などは、インターネットによって都合のいい手段として重宝されているくらいだ。情報源が定かではないのに、気軽にネットで調べたものを「正しい」と思い込む人は少なくない。北朝鮮事情が緊迫しているからこそ、「人類破滅の大戦争」という響きですら、もっともらしく聞こえる。

助手:そういった情報を面白おかしく囃(はや)し立てるべきじゃないですね。反省です。

堀田:どこで誰が聞いているかわかりませんからね。しかも、ツイッターなどですぐに情報が拡散される時代。重要さ、曖昧さ、もっともらしさがそろっているウワサを耳にしたときは、1度、疑ってみる! それがより高度な情報化社会を生き抜くヒントにつながると思いますよ。

〈プロフィール〉
堀田秀吾(ほった・しゅうご) 1968年、熊本県生まれ。明治大学教授、法言語学者。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく多角的な研究を展開。「学び」×「エンタメ」をライフワークとし、法律事務所や芸能事務所の顧問も務めるなど多岐にわたって活躍中。近著に『科学的に元気になる方法集めました』(文響社)がある。