ディズニーの名作映画をミュージカル化した超大作ミュージカル『メリー・ポピンズ』が、ついに来年3月、日本に初上陸。メリーの親友、バートをWキャストで演じる大貫勇輔さんと柿澤勇人さんに作品の魅力などを聞いた。
追い込み方がハンパじゃない(笑)
──本国スタッフによるオーディションを経て、バート役に決まった心境は?
大貫 すごく長期間のオーディションで、まず最終選考が終わったときは泣きました、僕。「やっと終わった~!」って。なんかわからないんだけど部屋を出た瞬間に涙が出てきて(笑)。
柿澤 そうだったんだ。
大貫 決まったときは「よし! やっとスタートラインに立てた」という感じで、グッと気が引き締まりました。
柿澤 僕も「もうこれで最後」って言われても「どうせまたあるんでしょ?」って、信じられませんでした(笑)。決まったときは「俺、ホントにやっちゃうんだ」って、正直思いましたね。22歳のときにNYで見てたんで。そのときはまさか自分がやるとは思ってなかったし、タップも踏んだことなかったんで。
──大貫さんはタップも経験はあるんですか?
大貫 2年前に1度、舞台で踏んだことがあるくらいなので、ほとんど初挑戦って言っていいくらい。大きなチャレンジですね。
柿澤 僕はタップシューズも持ってなかったから、最初は劇団四季の友人から借りてきてブカブカの靴で練習してた(笑)。
大貫 こう言ってるけど、決まってからの追い込み方がハンパじゃないよね(笑)。
柿澤 いやいやいや(笑)。
大貫 タップの先生が一緒なんですけど、僕に言ってくるんですよ。「柿澤さんがめっちゃレッスン来てる。超頑張ってる。メキメキ上達してる」って。
柿澤 アハハハハ!
大貫 「お! マジかよ」って。俺も焦りだした感じ。
柿澤 たまたま、その期間空いてて、今しかないなって思って頑張ったっていうか(笑)。まだまだなんで。
勇輔に居残り練習付き合ってもらう
──バート役で何を大切に演じたいと思いますか?
大貫 煙突掃除や大道芸人、絵描きとかいろいろな仕事をしている不思議な人で、すごくジェントルマンで労働者階級であることに誇りを持ってて。いろんな面を持ってると思うのでそういうところは表現できたらいいなと思ってます。
柿澤 久々に愛される役なので、歌も芝居もダンスもチャーミングに演じられたらいいなと思ってますね。
大貫 役作りってする?
柿澤 例えば病気の役とかだったら、メシ抜いてガリガリになるまでやせるとか、それぐらいかな。あとは資料読むとか調べるとか。でもけっこう体形とか気にするかも、その役の身体ってどんなだろうとか。あとは声はどうしようかなとか。役作りってあんまり意識したことないけど、準備できるものは準備しようかなって感じ。今回は「ウソでょ?」ってくらい高いタップシューズ買った(笑)。勇輔はどんなことするの?
大貫 体形を気にするとか資料を読むとかほとんど一緒だなと思って。あとは台本を読み解いて、役のプロフィールを作ったりする。今回ならバートの好きな食べ物とか血液型とかできるだけ細かく箇条書きにして。
柿澤 それもいいね。
──今回はWキャストですが、どんな心境ですか?
大貫 踊りのWキャストはあってもミュージカルのWは初めてで、しかも比べられる相手がカッキーっていうのが正直プレッシャーでしかなくて。だから現場でいろいろ教えてもらいながら、やれたらなと思います。
柿澤 いやいや。今回は僕にとっていちばんの課題はタップダンスだと思うんで。タップって足先だけじゃなくて見せ方もあるだろうから、それはもう勇輔のを見て……っていうか居残り練習に付き合ってもらって教えてもらおうと思ってます。だからすごく頼もしいですね。
──オリジナルキャストを担うことに対して、何か思いはありますか?
大貫 僕はかなりあります。僕の人生のなかで『ビリー・エリオット』が大きな転機で。子どもたちが約2年間かけて、できなかったことができるようになった事実を目の当たりにして、自分に限界を作っちゃダメだなと思ったんですよ。ダンサーであることを言い訳にしないで、ちゃんと俳優になりたいっていうのをすごく思いました。だから今回、オリジナルキャストに入れたことが本当にうれしくて、たくさん課題はあるけど、彼らができたんだから、俺も頑張らなきゃという思いがすごくあります。
柿澤 僕はあんまり意識してなかったですけど。『デスノート』でワイルドホーンが「ブロードウェイの俳優が何を目指してるかというと、新作のオリジナルキャストになること。それって一生残るからね、誇りなんだよ」って言ってくれて。すごいことなんだなと。
──最後に読者にメッセージをお願いします。
大貫 劇中の楽曲が本当に素晴らしくて、聴いてるだけでワクワクします。耳で楽しめて、バートの見どころでもあるタップの魅力もあり、ディズニーの夢の世界観プラス家族愛の話です。子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、楽しめるミュージカルなので、たくさんの方に見に来ていただきたいです。
柿澤 曲もいいですし踊りも見てて面白いです。みんなが笑顔になって楽しかったねって思えるようなミュージカルだと思うので、期待していただきたいですね。僕も親戚の子どもを久々に呼べる作品です(笑)。
取材・文/井ノ口裕子 撮影/森田晃博
〈プロフィール〉
おおぬき・ゆうすけ 1988年8月31日生まれ、神奈川県出身。バレエ、ジャズからアクロバットまでジャンルを超えて活躍するダンサー、俳優。近年の主な作品は『ロミオ&ジュリエット』『ビリー・エリオット』『Pukul』など。現在WOWOW『バレエ☆プルミエール』にMCとして出演中。
かきざわ・はやと 1987年10月12日生まれ、神奈川県出身。'07年劇団四季入団。『ライオンキング』ほかに主演。'09年退団後はミュージカルのほか、ストレートプレイ、映画、ドラマなど幅広く活躍。
〈出演作品〉
■ミュージカル『メリー・ポピンズ』
ディズニーと『レ・ミゼラブル』ほか数々のヒットミュージカルを生み出し続ける名プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュが贈るファンタスティック・ミュージカル。1910年のロンドンが舞台。子どもを放りっぱなしのバンクス家に、魔法が使える賢い子守(母親に代わり子育て全般を行う女性)メリー・ポピンズ(濱田めぐみ/平原綾香Wキャスト)が舞い降りて……。胸に迫る家族の物語を待望の日本キャスト初演。 東京:2018年3月18日~24日(プレビュー公演)3月25日~5月7日@東急シアターオーブ/大阪:5月19日~6月5日@梅田芸術劇場メインホール
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