コラーゲンがたっぷり入っているというテビチ

 12年間にわたり世界中をめぐっている著者が、現地の健康&食べもの情報を毎週お届けします。

野生動物の天国、世界一巨大な陸デルタにて

 海外旅行中の我が家ですが、妻Yukoの生誕53周年という歯切れの悪い数字を祝って、小旅行に出かけました。

 向かったのは、モアミ・ゲーム保護区にあるオカバンゴデルタ。

 アンゴラから流れてきた川がカラハリ砂漠に突っ込んだものの、海も湖もないのっぺりとした大地。行き場を失った水が三々五々適当に枝分かれし、ただ干上がるのを持つ川の墓場です。

 四国くらいある、世界一巨大な陸デルタです。政府が強制的に住民を追い出したので、野生動物の天国。そのど真ん中へ、高級コテージ専用の軽飛行機で飛びます。

 軽く船酔いしながら窓を覗けば、こんな戦略特区を手に入れるとはどんな忖度が舞い降りたのか、建物は高級ロッジが一軒だけ。完全独占。

 水たまりだらけの専用滑走路が一本。名前も知らない動物が、のんきに横切ってくれます。

 ロッジは、猛獣に囲まれていながら1メートルも柵を作らないという、食うか食われるかを天にまかせた安全対策。

 振込詐欺にあったんじゃないかくらい高額な宿泊料なので、ワイン、ウィスキー、ジン、ウォッカ、その他なんでも飲み放題です。

 油断すると、すぐにおつまみが出てきて健康に悪いです。サファリドライブは、1日2回。休む暇なし。3日目にはライオンやヒョウを見かけても、犬猫にしか感じられないくらい堪能しました。

コラーゲンでお肌ツルプルと思いきや……

 晩飯は名も知れぬ高級ワインを飲みながら、オックステール・シチュー。

 牛の尻尾の煮込みなんてオシャレなモノ、最後に食べたのはいつだったろうかと思いを馳せながら、生まれて初めて食べています。

 口の中に広がる大地の地味。骨と肉の間に舌をぐいっと差し込み、ほろほろと崩れる肉の細胞と細胞の間を味蕾でまさぐれば、そこはコラーゲンの領域。

 一滴も残すことなくコラーゲンをすすります。

 翌朝、どんだけお肌がツルツルのプルプルになったかというと、いつものようにザラザラです。

 胃に入ったツルプルはまだ、肌の角質層に届いていないようです。

当記事は「BUSINESSLIFE」(運営:ビジネスライフ)の提供記事です

大量に食べてもムダ?「変身コラーゲン」論争

 いったい何時間ぐらいで、オックステールコラーゲンが肌から滲み出てくるかといえば、実際のところ、一生かかっても無理です。

 それが、サプリメント界を揺るがす大論争「変身コラーゲン」です。

 コラーゲンは、言うても所詮タンパク質。大量に食べてもカラダのなかでアミノ酸か、小さく分解されて「ペプチド」に変身してしまいます。

 どう頑張っても、口→胃→肌とダイレクトに届きません。それは事実。

 変わり果てた元コラーゲンは、やがてカラダの中でタンパク質として復活しますが、コラーゲンになるかどうかは誰にもわかりません。

 骨としてカラダを支えるかもしれないし、血管として物流に励むかもしれません。たくさん食べた→コラーゲン大量生産とはならないのです。

 だったら、ビタミンCでも飲んどけ!コラーゲン作りに役立つから!というのが、「コラーゲン食べても無駄だろ」派の主張です。

「コラーゲン効果アリ」派の論拠は「ペプチド試験」

 一方、いやいやいや、それはちょっと古い情報じゃないですか!今時のコラーゲンは違いますよ、頑張ってますから、と訴えるのが、生活がかかった業界筋。

 コラーゲンは小さく小さくバラバラに分解されてペプチドと呼ばれるのですが、ペプチドはけっこう長い間、血中に残るんだぞ、と主張します。

 そして某細胞が、血中に漂うバラバラ・コラーゲンを見て、こいつぁコラーゲンの危機かもしれんと補充に勤しむというのが、彼らの拠り所です。

 重ねて2009年、2014年のコラーゲンペプチド試験では、ズバリ効果があったんだと威張るのです。

 しかし、ここで食べ無駄派の待った!が入ります。

 いやいやいや、効果があったと言ってもあれじゃないですか、その試験のコラーゲンペプチドは、コラーゲンに熱を加えて、ゼラチンにしちゃってるじゃないですか。しかも酸素で分解までして、もはや別物じゃないですか!

 替え玉試験みたいなもんでしょう、それ!と叫びます。まだまだ熱い論争が続きそうな「変身コラーゲン」論争、この先が楽しみです。

「角質層の奥まで届く」はムダ? 「届かないぞコラーゲン」論争

 次に、美容界を揺るがす大論争「届かないぞコラーゲン」。生活がかかったポジショントークの宣伝は、「角質層の奥まで届く」です。

 角質層の奥まで届くんならそれでいいじゃないかって気がしますが、「角質層じゃ意味ないじゃん派」によると「コラーゲンは角質層ではなくて、真皮にいるのですよ(ウフフ)」となります。

 例えるなら、角質層は家の門。

 コラーゲンが鎮座する部屋に行くには、顆粒層と呼ばれる部屋を通り、さらに有棘層の間を突き抜け、やっと基底層なる奥座敷にたどり着きますが、そことて目的地ではありません。

 その奥にある真皮こそが、コラーゲンのお部屋なのです。実に遠い。しかもですね、皮膚には異物が入らないように天然のバリア機能があります。

 どこの馬の骨だかわからない素性知れずのコラーゲンをすんなり受け入れるほど、人体の神秘は甘くはありません。

 門前払いを受けたコラーゲンは、皮膚の上でテカってるだけじゃないかと思われるわけです。

 それでもいいじゃんか、っていうのが角質層派です。じゃあ、角質層で威張るなよってことです。

コラーゲンより効くのは「カバーゲン」か「ロバーゲン」!?

 オカバンゴデルタの我が家は、メインロッジから150メートルも離れていて、夜間は単独歩行禁止です。

 見飽きるほど猛獣がいるわけですから、襲われないのが不思議なくらいで、このデンジャラス感がボクらの緩んだ肌に適度な緊張を与えてくれます。

 コラーゲン要らずですが、夜、カバを目撃して脂汗が吹き出ました。カバはライオンより強く、時速40kmで走るので、陸上界では象に次いで武闘派です。ガンを飛ばしたら、容赦なく殺されます。

 それがすぐ目の前、ベランダの下。頑張れば握手できそうな近距離。カバの肌は猛獣の牙が食い込まないほど厚く、約4cm。しかし刃物には強いものの、動物界きっての敏感肌です。

 陽灼けを避けるために、たいして泳ぎも得意でもないのに、日中は水の中にいるのですから。眼下のカバ、オレンジ色にテカってました。

 カバは汗腺がないので、皮膚から赤い粘液を出して、乾燥や紫外線から身を守っているのです。

 もしかしら、コラーゲンよりカバの粘液のほうが、美肌にいいかもしれません。美容界からの新商品、「カバーゲン」を待ちたいものです。

 ちなみに中国には、2500年前もから阿膠(あきょう)という漢方薬があります。ロバの皮を使ったコラーゲンで、ミネラルに富み、コンドロイチンも含んでいます。

 そうとう効用があるらしく、中国はアフリカでロバの爆買いをしてブルキナファソやニジェールで輸出禁止を食らっています。「ロバーゲン」も効きそうです!

 フンコロガシを眺めながら、ボツワナからお送りしました。


石澤義裕(いしざわ・よしひろ)◎デザイナー。1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。