「チョレイ!」
東京体育館に高らかなかけ声が響き渡った。1月21日、卓球の全日本選手権で、14歳の張本智和が史上最年少で優勝を飾ったのだ。
「これまで卓球界を牽引してきたリオ五輪銅メダリストの水谷隼選手が、史上初の10度目の優勝をかけて大会に望みましたが、14歳下の張本選手が、圧倒的と言っていいほどの強さを見せて優勝しました」(スポーツ紙記者)
張本の代名詞といえば、得点を決めたときなどに発する、「チョレイ!」という掛け声。その声は、もはや雄叫びと言っていいほどだ。
「今回の全日本選手権では、特に大きく、そしていつも以上に長かった気がします。もうチョレイのひと言だけではなく、“チョォレェェィ! オォウ! オォウゥ!!”みたいな感じでしたからね(笑)」(同・スポーツ紙記者)
両親はともに中国人で、張本の国籍も中国だったが、'14年に家族とともに帰化。
「“チョレイ”は、特にコレという意味がある言葉ではなく、お母さんによると、日本語でも中国語でもない、ただのかけ声だそうですよ」(卓球雑誌ライター)
このかけ声については賛否両論といったところで、当日、会場で水谷との試合を観戦していた卓球ファンの男性は、
「ちょっといくらなんでも、やりすぎ、うるさすぎじゃないの……?」
と否定的。また、日本一に輝いたことで張本にはこれまで以上に注目が集まり、ネット上でも、
《卓球張本くん…チョレー!!チョレー!!とやかまし》
《卓球の張本智和ほんと嫌いだわ。スポーツマンシップ皆無》
《嬉しいのはわかるけど、そんなに雄叫びあげんでもええやろ》
など、物議を醸した。学生時代、陸上選手として活躍したタレントの武井壮は、こういったネガティブな意見に対し、
《スポーツやってて自分に勝った相手がガッツポーズして雄叫び上げてるの失礼だと思ったりリスペクトが無いなんて思った事も一度もないわ。。それ見て悔しいのは、自分がその雄叫びを上げて勝利を味わえなかった事だ。また鍛えていつか勝つその日を目指すのみ。リスペクトがあるからこその雄叫びだよな。》
と、スポーツマンとして意見した。
「実際に卓球の大会に行けばわかりますが、学生でも社会人でも、多くの選手がさまざまな声をあげており、叫んでいるのは張本選手だけではありません。女子の選手で雄叫びのような声をあげる人もいますよ(笑)。
卓球に限らないと思いますが、スポーツにおいて自分を鼓舞するのは当たり前。これが挑発するように、相手選手に向かって叫ぶなら問題ですが、張本選手の場合は、相手選手に面と向かってではなく、背を向けて叫んでいますよね。これは意識的にやっているもので、彼なりの相手選手への敬意だと思いますよ」(前出・卓球雑誌ライター)
日本卓球協会が発行している『勝利をめざす前に大切なことがある。』という卓球におけるマナーをまとめた冊子には次のようにある。
《自分のモチベーションを高めようとする言葉であったり、ガッツポーズはバッドマナーとはなりません。しかし大声で相手をののしったり、汚い言葉を使ったり、観客に不快感を与えた場合、バッドマナーとなり、イエローカードがでる可能性があります》
対戦した水谷隼は、決勝戦前に報道陣に対して、
「うるさいから、聞こえないように耳栓でもしようかな」
と、冗談めかして話していた。
「水谷選手の話はあくまで冗談であり、笑いながら話していました。確かにうるさいと思っている選手もいるとは思いますが、現場で張本選手だけが特別に問題視されているようなことはまったくありませんね」(前出・スポーツ紙記者)
最年少で日本一に輝いた張本は、実力的にはどういったところがすごいのか? 張本や水谷を取材し、卓球に関する著書も多い、ノンフィクション作家の城島充さんは、
「とにかく“攻め続ける”という姿勢がすごいですね。普通はラリーをつなぐためのボールを相手に送らざるを得ないときなど、“守り”の場面がある。
しかし、彼の場合は、すべてが攻撃につながるボールを打つ。波状攻撃がすごくて、これまでなかった超攻撃的なスタイルで、“新しい卓球”という人も多いですね。大会を通して見て、対戦した水谷選手も図抜けた存在でしたし、これまで何年も1人で卓球界を支えてきた水谷選手と一緒に2人で切磋琢磨していってほしいですね」
日本一卓球が強い男も、まだまだ若すぎるほどに若い14歳の少年。未来につながる大きなかけ声を、大人なら静かに見守りたい。