「悪い役をするのは数年に1度ぐらいあるのですが、楽しいですね。もう王道の恋愛作品を演じるほど、キラキラした感じでもないのかなって(笑)」
『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』など、話題作が続くTBS火曜10時枠で放送中の『きみが心に棲みついた』。吉岡里帆演じる、挙動不審なヒロイン“キョドコ”を支配する冷酷な男・星名を演じているのが向井理(36)。
これまでの爽やかなイメージとのギャップが大きいこともあり、放送後はSNSで“怖すぎる!”といった意見も多いが、本人は楽しんでいる様子。
「台本は毎回楽しく読んでいますよ。“殺すよ”なんて言葉、普段は絶対に言えないですから。でもいくら演技とはいえ、女性に対して直接手をかけるアクションがつくと、やはり申し訳ない気持ちになってしまいます。言葉責めだけなら楽しんでいますが(笑)」
現場では、さりげなくフォローしたりするんですか?
「役柄の関係性的に、緊張感が崩れてしまってはいけないので、あえて言わないようにしています。でもどこかで罪悪感を感じているのか、帰りの車の中で毎回モヤモヤしていますね(笑)」
笑顔で冷酷な言葉を浴びせまくる星名はイメージとは正反対だが、意外にも役づくりはあまりしていないとか。
「星名のようにキャラクターが立っている役柄って、演じる側からすると実は王道で、そこまで難しくないんです。だから変にイジらず、真正面から演じていますね。でも普段、人に見せない顔をするときに、首元を触るという癖は原作にはない僕のアイデア。そういうわかりやすい仕草を取り入れることで、あざとくキャッチーに伝わればいいなと思っています」
吉岡里帆演じる“キョドコ”はねじねじ巻きのストールが手放せませんが、そんなアイテムはありますか?
「腕時計。この仕事って特殊な職業なので、きちんと社会とつながっていたいという気持ちがどこかにあるんです。撮影が続くと、曜日の感覚もわからなくなってきますから。亡くなった祖母から成人式のお祝いで腕時計をもらって以来、時間を感じて生活したいという理由で腕時計は欠かせません。コレクションなどは特にしていなくて普段、愛用しているのも国産のものです」
着信があると緊張する、漢字5文字
キョドコの星名のように、好きすぎて“会いたいけど、会いたくない人”は?
「尊敬しすぎていて緊張してしまうという意味では、北大路欣也さん。大河ドラマ『江』で親子役(徳川家康と秀忠)を演じさせてもらって以来、本当の息子のように可愛がってくださり、折々で連絡をくださるんです。今でも着信があると緊張しますね、あの漢字5文字は(笑)。僕が電話を取れないときは留守電を残してくださるのですが、その留守電は今でも全部保存しているほどです」
星名がキョドコに言う「人は一生変わらないんだよ」という台詞が印象的でしたが、自分自身、デビューしてから変わらない部分ってあります?
「いろんなお仕事をさせていただくと、よくも悪くも慣れてきてしまい、どうしても変わってしまいますよね。経験値が撮影で役立つことも多いですけど、芝居はリアクション。常に新鮮な気持ちで喜怒哀楽を表現しないといけないので、そこは初心を忘れてはいけないなと心がけています」
今回、連ドラ初主演に抜擢された吉岡里帆の印象は?
「若さもあるでしょうが、とてもパワフルな方ですね。僕も同じ年ぐらいのころは、ひとつでも上の番手の役者を食ってやろうという気持ちで演じていました。主役がいちばん偉いわけではないんですけど、当時は“いつか主役を”という目標に向かってガムシャラだったので。だから今振り返ると、ムチャなこともしていましたね(笑)。吉岡さんのエネルギッシュさを見ていると、僕もまだそんな姿勢でもいいのかな、と刺激を受けます」
回が進むごとに、星名が抱える闇が明らかに! 本人は「闇がない人間なんていないんじゃないですか」と笑う。
「僕もやっちゃダメだとわかっていても、やりたくなる衝動が起きるときはありますよ。例えば劇中でバーテンダーに水をかけるシーンがあったのですが、ここでグラスごと投げたらどうなるんだろうとか(笑)。もちろん行動には移さないですけど、想像の範囲ではそんなことは日々考えています」
星名の冷酷さに恐怖を感じつつもハマる女性が続出中!
「星名のシーンは、エンターテイメントとして笑って見てもらえばうれしいですね。この作品で描かれている“共依存”は、男女の関係性だけでなく、スマホだったり何かに依存して生きる現代社会を象徴したもの。ひとつひとつのシーンでは怖いところもありますが、俯瞰で見ると誰しもが当てはまる部分があると思いますよ」
<出演情報>
ドラマ『きみが心に棲みついた』
毎週火曜よる10時~。TBS系。出演/吉岡里帆、桐谷健太、向井理ほか